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宇宙開発事業団(NASDA)(現在のJAXA)により開発された、衛星打ち上げ用のロケット。
直径4m、全長53m、重量285トン。
二段式液体燃料ロケットで、1990年代末まで使われたH-Ⅱロケットの改良ロケットである。
設計上は次の構成がある/あった。
第一段ロケット | LE-7A |
---|---|
固体補助ロケット | SSB (※22号機まで対応、23機以降では廃止、後述) |
液体ロケットブースター | LRB (※実在しない、後述) |
固体ロケットブースター | SRB-A/SRB-A改良型/SRB-A3 |
第二段ロケット | LE-5B/LE-5B-2 |
補助ロケットと液体/固体ロケットブースターは、標準型/増強型などのタイプにより組み合わせが異なる。
なお、固体補助ロケット(SSB)は打ち上げ業務が三菱重工に移管されて以降廃止されており、H-ⅡAロケット23号機以降では第一段ロケットにSSB取付部が存在しない。
LRBは開発が中止されたため、実在しない。
名前の「H」は、液体燃料の水素(H)から取られている。
H-ⅡAは公式には「エイチ・ツー・エイ」と読むが、NHK等では何故か「エイチ・に・エイ」と読まれている。
概ね、次の手順で進む。
LE-5Aは「再着火」可能な高性能エンジンなので、第二段燃焼は一回目と二回目があり、その間は慣性飛行をして目的の軌道近くまで移動することになる。
第一段にはメインエンジン(LE-7A)の他に固体ロケットブースターSRB-Aが付く。かつては固体補助ロケット(SSB)も追加で使われていた。
第一段のメインエンジン(LE-7A)だけでは推力が自重以下なので、SRB-Aに点火しないと発射台から浮上しない。よってSRB-Aは地上で点火される。LE-7A着火後、約5秒後にSRB-Aに点火され、ロケットはリフトオフ(発射)となる。
対して、かつて使われていた固体補助ロケット(SSB)は空中で点火される。ゆえにSSBのみではロケット自体が発射できないため、SRB-Aが2本必要である。SSBはH-ⅡAロケット試験機2号機とH-ⅡAロケット7号機で使用されたのみで、その後廃止された。
H-ⅡAは、H-Ⅱから大きな仕様変更がなされている。
ロケットエンジンLE-7Aを搭載するのが第一段ロケットである。
H-Ⅱでは国産品で、LE-7Aと溶接されて組み立てられていたが、H-ⅡAではボーイング社製の成型品を採用した。
第一段と第二段の間は、段間部と呼ばれる。通常は、ここにミッションマークなどが描かれるが、情報収集衛星(IGS)の場合は何も描かれないらしい。
通常は黒だが、H-ⅡAロケット7号機やH-ⅡAロケット21号機、H-ⅡBロケット試験機では段間部は白く塗装されていた。
ロケットは飛行中、大気との摩擦で温度が上昇する。何色にしても温度上昇は変わらないが、地上で余計な加熱をしないよう、温度が上がりにくくするために白に塗装されることがあるという。白は、温度上昇の開始点を低くすることが目的となる。
その他にも、様々な仕様変更がある。金属から繊維素材への変更による軽量化、価格の削減の努力などが行なわれている。
また、全体的な構造の簡素化や、組み立て、衛星搭載などの作業方法も効率的に改められた。
H-ⅡAロケットは、様々なシーンに対応できるよう、打ち上げ能力が何段階か用意されている。これにはそれぞれ名前が付けられており、「ファミリー仕様(機体識別名称)」と呼ばれ、そのロケットの仕様を表わす。
例えば、H-ⅡA2024の場合、2=本体は二段式、0=LRB(液体ロケットブースター)0本、2=SRB-A(固体ロケットブースター)2本、4=SSB(固体補助ロケット)4本、という意味になる。
そして、SSBが無いときには該当する末尾の数字1桁は省略する。
H-ⅡAロケットに設定されているファミリー仕様(機体識別名称)は次のとおり。
名称 | 搭載ブースター | 性能(単位:トン) | ||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
LRB | SRB-A | SSB | SRB-A初期型 | SRB-A改良型 | SRB-A3 | |||||||||
GSO | GTO | LEO | GSO | GTO | LEO | SSO | 2cv | GSO | GTO | LEO | ||||
H-ⅡA202 | 0 | 2 | 0 | ‐ | 4.1 | ‐ | 2.5 | 3.8 | 10 | 4 | 2.5 | ‐ | ‐ | ‐ |
H-ⅡA2022 | 0 | 2 | 2 | ‐ | 4.5 | ‐ | ‐ | ‐ | ‐ | ‐ | ‐ | ‐ | ‐ | ‐ |
H-ⅡA2024 | 0 | 2 | 4 | ‐ | ‐ | ‐ | ‐ | 4.6 | ‐ | ‐ | ‐ | ‐ | ‐ | ‐ |
H-ⅡA204 | 0 | 4 | 0 | ‐ | ‐ | ‐ | ‐ | 5.8 | ‐ | ‐ | ‐ | ‐ | ‐ | ‐ |
H-ⅡA212 | 1 | 2 | 0 | ‐ | 7.5 | 17 | ‐ | ‐ | ‐ | ‐ | ‐ | ‐ | ‐ | ‐ |
H-ⅡA222 | 2 | 2 | 0 | ‐ | 9.5 | 23 | ‐ | ‐ | ‐ | ‐ | ‐ | ‐ | ‐ | ‐ |
なお現在、SSBを使用するH-ⅡA2022とH-ⅡA2024は廃止されており、ファミリー仕様から削除されている。
H-ⅡAロケット6号機の失敗以降採用されたSRB-A改良型は安全優先のためやや性能が落ちている。性能は、更なる改良型SRB-A3でほぼ回復したとされる。
212と222は構想はされたが、実現されなかった。212相当の性能を実現するものとしてH-ⅡBロケットが開発されている。
1993(平成5)年に検討が始まり、1996(平成8)年開発開始。当初は2000(平成12)年打ち上げを目標としたが、この年にH-Ⅱロケット打ち上げに失敗したため、対策を講じるために1年延期、その後試験中に第一段エンジンを壊してしまい更に半年延期された。
H-Ⅱは純国産であったが、H-ⅡAではコスト削減のために部品点数も減らし、かつ一部にアメリカ部品やドイツ部品が使われている。
完成した試験機1号機(H-ⅡA・F1)は2001(平成13)年8月29日に種子島宇宙センター大型ロケット発射場より発射され無事に成功した。
試験機2号機(H-ⅡA・F2)は2002(平成14)年2月3日の打ち上げで、試験機2号機と1号機の違いは固体補助ロケット(SSB)が4本搭載されることである。
3号機からが遂に本番である。
H-ⅡAロケットは、現時点では号機番号と打ち上げの順番が一致している。
2001(平成13)年に初めて打ち上げられた。2002(平成14)年は3回打ち上げられた。
2003(平成15)年は試練の年だった。情報収集衛星(IGS)を2セット打ち上げることになるが、H-ⅡAロケット5号機では成功したがH-ⅡAロケット6号機は失敗した。
2005(平成17)年にはH-ⅡAロケット7号機で、待望のMTSAT-1R(運輸多目的衛星新1号機)ことひまわり6号の打ち上に成功した。
2006(平成18)年には1月に陸域観測技術衛星だいちを、翌2月にはひまわり7号(運輸多目的衛星2号機)の打ち上げに続々と成功している。
H-ⅡAロケットは、2023(令和5)年1月までに、計46回打ち上げられている。派生ロケットであるH-ⅡBロケットを含めれば計55回打ち上げられている。H-ⅡAロケットは初号機から連続5回の成功を記録し、6号機は失敗したものの、その後は40回連続の成功で記録更新中である。信頼性に関しては世界でも屈指の完成度に達したと考えられる。
まず、大型液体燃料ロケットに関して言えば、NASDA発足以来、まず連続29機成功を記録した。
初めて失敗したのは、30機目である。
合計86機中、83機成功、3機失敗、「成功率96.51%」。H-ⅡAロケットだけでも46機中45機成功で「成功率は97.83%」である。
その上、打ち上げに伴う死傷者も0名(但しH-ⅡのメインエンジンLE-7開発中の事故で1名殉職)。
これは、知られる限りでは、世界最高の記録である。
公表されている範囲では次のとおりで、おおむね110億円程度である。全てロケット側コストのみであり、それ以外の費用は含んでいない。なお、近年では打ち上げ費用は非公開となっている。
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