トリウム

読み:トリウム
外語:Th: Thorium 学名 , Thorium 英語 , Thorium ドイツ語 , Thorium フランス語 , Torio スペイン語 , Торий ロシア語 , ثوريوم アラビア語 , 大陸簡体 , 台灣正體 , Tori/o エスペラント
品詞:名詞

銀白色の金属元素の一つ。

目次

基本情報

一般情報

原子情報

  • 原子量: 232.03806(2)
  • 電子配置:
    • 1s2、2s2、2p6、3s2、3p6、3d10、4s2、4p6、4d10、4f14、5s2、5p6、5d10、6s2、6p6、6d2、7s2
    • [Rn]6d2、7s2
  • 電子殻: 2、8、18、32、18、10、2
  • 原子価: 2、3、4
  • 酸化数: 0、+2、+3、+4

物理特性

同位体

質量数は、209から238までが確認されており、その中に核異性体も存在する。

安定同位体は存在しない。全ての同位体が放射性同位体である。

崩壊の種類については一例。これとは異なる崩壊をすることもある。率は低いが、特殊な崩壊をすることがあるのが特徴である。

同位体核種天然存在比半減期崩壊崩壊後生成物
209Th   
210Th α崩壊206Ra
211Th α崩壊207Ra
212Th α崩壊208Ra
213Th α崩壊209Ra
214Th α崩壊210Ra
215Th α崩壊211Ra
216Th α崩壊212Ra
217Th α崩壊213Ra
218Th α崩壊214Ra
219Th α崩壊215Ra
220Th α崩壊216Ra
221Th α崩壊217Ra
222Th α崩壊218Ra
223Th α崩壊219Ra
224Th α崩壊220Ra
225Th α崩壊221Ra
226Th α崩壊222Ra
227Th微量18.718日α崩壊223Ra
228Th微量1.9131年α崩壊224Ra
20O核放射208Pb
229Th7340年α崩壊225Ra
230Th微量75380年α崩壊226Ra
24Ne核放射206Hg
自発核分裂(SF) 
231Th微量1.063日β崩壊231Pa
232Th100%140.5億年α崩壊228Ra
自発核分裂(SF) 
24Ne+26Ne核放射 
(2β崩壊)232U
233Th21.83分β崩壊233Pa
234Th微量24.10日β崩壊234Pa
235Th β崩壊235Pa
236Th β崩壊236Pa
237Th β崩壊237Pa
238Th β崩壊238Pa

崩壊と転換

230Thと234Thはウラン・ラジウム系列227Thと231Thはアクチニウム系列228Thはトリウム系列229Thはネプツニウム系列の崩壊生成核種であり、232Thはトリウム系列の最初の核種である。

天然の同位体は232Th(100%)で、半減期は140億年。

中性子を吸収してβ崩壊(β崩壊)すると、核燃料であるウラン238(233U)に転換する特徴がある。

産出

トリウムは主にトーライト(トール石)、トリアナイト、モナザイト(モナズ石)などの鉱物として産出する。

トリウムは地殻中に0.0007%含有する。

これらの鉱物の主成分は、トール石はThSiO4、トリアナイトはThO2、モナザイトは(Ce、La、Th、Nd、Y)PO4、である。

トリウム熔融塩炉

トリウムは、ウランプルトニウムとは違い資源量が豊富で、かつ地理的に偏っておらず全世界で満遍なく採取される。そこで、これを原子力発電に使うことが研究されている。

原子力発電であれば温暖化ガスである二酸化炭素の排出量がゼロと非常に「エコ」である(廃熱を温排水として棄てるため海水温を上げるという問題はあるが)として、特にトリウムが多く産出するインドで研究が進められている。日本では、軽水炉高速増殖炉という流れが出来ており、あまり重視されていない。

研究されている「トリウム熔融塩炉」は、溶融塩、特に弗化物溶融塩にトリウムの弗化物を溶解させたものを用いる核分裂炉である。次のような長所がある。

  • トリウムは資源量が豊富で、採掘可能場所に地理的偏りがない
  • 経済性を損なうことなく炉の小型化が可能で、熱効率が良く、廃熱は軽水炉の半分程度とエコ
  • 燃料が液体であるため成形加工が不要。燃料補給や核分裂生成物の除去も連続的に、かつ容易に可能で、炉内の放射能残量が容易に減らせる。つまり、万一の事故時の放射能流出量を減らせる
  • 燃料塩は黒鉛適量存在下でのみ臨界になる。黒鉛は炉心にあり、万一燃料塩が漏れても臨界事故などの可能性がない。また、燃料塩の沸点は、通常運転温度よりも高い
  • トリウムはウランよりも原子量が6も小さく、プルトニウムなどの超ウラン元素の生成が困難で核兵器転用ができないため、核不拡散上も優れている

しかし、課題や難点もある。

  • 弗化物溶融塩の融点はかなり高い(400℃以上)ため、耐熱容器が高額
  • 炉心黒鉛を比較的短期(数年おき)に交換せねばならない

安全性

適用法令

  • 原子力基本法
    • 核燃料物質 (トリウム)
    • 核原料物質 (トリウム鉱)
  • 原子力基本法…核燃料物質、核原料物質、原子炉及び放射線の定義に関する政令
    • 核燃料物質
      • 三 トリウム及びその化合物
      • 四 前三号の物質の一又は二以上を含む物質で原子炉において燃料として使用できるもの
  • 放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律
    • 放射性同位元素
  • 試験研究の用に供する原子炉等の設置、運転等に関する規則等の規定に基づき、線量限度等を定める告示

危険性

  • 引火点: (該当資料なし)
  • 発火点: 130℃ (ICSC)
  • 爆発限界: (該当資料なし)

有害性

  • 刺激
    • 腐食性: (該当資料なし)
    • 刺激性: 眼、皮膚、気道を刺激する
    • 感作性: (該当資料なし)
  • 毒性
    • 急性毒性: (該当資料なし)
    • 慢性毒性: (該当資料なし)
    • がん原性: (該当資料なし)
    • 変異原性: (該当資料なし)
    • 生殖毒性: (該当資料なし)
    • 催畸形性: (該当資料なし)
    • 神経毒性: (該当資料なし)

環境影響

  • 分解性: (該当資料なし)
  • 蓄積性: (該当資料なし)
  • 魚毒性: (該当資料なし)

1829(文政12)年にスウェーデンの科学者ベルセーリウス(Jöns Jakob Berzelius)が鉱石トーライト(トール石)中から見いだした。

化学名Thoriumは、北欧神話の雷神トール(Thor)にちなんで名付けられた。

  • トリウム(Ⅳ) (ThO2)
  • 硝酸トリウム(Ⅳ)四水和物 (Th(NO3)4·4H2O)

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