インド料理

読み:インドりょうり
外語:Indian cuisine 英語 , 印度菜 支那語(大陸・台湾)
品詞:名詞

インドの伝統的な食文化。印度料理。

目次

日本でも愛されるインド料理は、香辛料(スパイス)などを多用することが特徴である。インド料理とはスパイス料理であり、インドの食はスパイス抜きには語ることができない。

食材については、インドの宗教の影響が大きく反映されている。インド人の大半はヒンドゥー教の信者で、他にイスラム教の信者が1割少々いる。

良く知られるが、ヒンドゥー教では牛を聖獣として敬うため牛肉を食べず、イスラム教では豚を不浄として豚肉などを食べない。

このためインドの一般的な食材は牛肉や豚肉は殆どなく、インド料理の肉と言えば、鶏肉、羊肉、山羊肉などが多く見られる。

ちなみに、インド料理に「カレー」という食品は存在しない。これはイギリスの植民地時代に、イギリスを経て日本に入ってきた料理である。

大前提

日本で提供されているインド料理と、本場のインド料理は、恐らく異なる。

日本の家庭用カレーは小麦粉の入ったカレールーであり、本格的なインド料理店でも小麦粉入りを使うことがあるが、本場インドではカレーに小麦粉は使わない。もちろん小麦粉が入っていても美味しいカレーはあるが、本場の味ではない。

日本のインド料理店で、客としてインド風の人が多いところは、味が本格的である可能性が高い。

ヒンドゥは牛を食べない。イスラムは豚を食べないが牛を食べる。日本のインド料理店の中には、牛肉や豚肉を使う店があるが、そのような店は、宗教上の理由から本物が近寄らないことが多い。

インド料理は必ずしも辛くない。辛さは作る人の好みで決まるが、インド料理は朝鮮料理とは違って辛いだけではなく様々な味わいがあり、それを引き立てるために香辛料を用いている。つまり、「激辛」のインド料理は「インド人もびっくり」なのである。

「辛さを追求する」ことは、本格的なインド料理ではないと言える。辛さが選べる店と、無条件で甘い店、無条件で辛い店が存在する。

地域差

主なもの

インドは広いため、地域ごとに特徴がある。

  • 北インド料理
  • 南インド料理
  • ベンガル料理 (東インド料理)
  • ゴア料理 (西海岸インド料理)

北インド料理

日本では、タンドール料理やナンが北インド料理の代表である。

北インドやネパールでは「チャパティー」や「ナーン」やなどのパンを主食とする。米も食べるが、インディカ米(日本ではタイ米として知られる)が食べられている。

独特のオーブンである「タンドール」を使った料理(例えばタンドリーチキンなど)は、特徴的な北インド料理である。「ナーン」もタンドールで作る。

ただし、一般家庭にタンドールはないので、インドでも、ナーン含めてタンドール料理は買ってきて食べるか、レストランで食べるものである。一般家庭ではライスか、または鉄板で焼いて作るパンの「チャパティー」が主食である。

インドではベジタリアンが多いが、南と比べて北では肉類も食べられている。また乳製品なども多く使われている。

香辛料は、鬱金(ターメリック)、胡椒、クローブ、シナモン、クミン、カルダモン、ナツメグコリアンダー(パクチー)などを配合して作る「ガラムマサーラー」が使われる。

使う油は、北インドではギーと呼ばれる動物性脂肪のほか、辛子油(マスタードオイル)、胡麻油落花生油(ピーナッツオイル)、綿実油(コットンシードオイル)などが好まれる。

南インド料理

南インドではが主食である。日本と同様のジャポニカ米や、独特の南インド米が食べられている。南インド米は、インディカ米のように粘り気が少ないが、日本の米のように短粒種である。

南インドでは、北インド料理であるナーンは食べられていない。南インドのパンとしては、タワパロタなどが食べられている。

また南は北よりもベジタリアンが多いことから、豆料理も多い。チャナ(ひよこ豆)、ウラド(黒マッペ豆)、ムング(緑豆)、マスル(レンズ豆)、トゥール(キマメ)などが良く使われる。

南インドでは、北とは少し異なる香辛料を用いており、カラシナ(芥子菜)の種子(マスタードシード)や大葉月橘の葉(いわゆるカレーリーフ)などが使われる。また、唐辛子は北よりも多く使う傾向にある。

南インド料理は「ミールス」と呼ばれる、バナナの葉の上に乗せて料理が提供されるのが特徴的である。

ベンガル料理

東インドのベンガル地方および隣国バングラデシュで食べられている料理である。

主食は米であり、香り米バスモティなどが使われる。この辺りになるとナーンは食べない。日本でもベンガル料理店は存在するが、オーナーが本気だと、メニューにナーンを置かないところもある。なぜならそれはベンガル料理ではないからである。

ここでも香辛料に差があり、ウイキョウ(茴香)の種子(フェンネルシード)やクミンの種子(クミンシード)などを多く用いる。

ゴア料理

インド西海岸の小さな州、ゴア州で食べられている料理である。

ここはかつてポルトガルの植民地で、ポルトガルの料理の影響を強く受けている。今もここにはインドには珍しいカトリックが多く住み、インドでは珍しい豚肉を用いた料理なども作られている。

カレー

インドには、「カレー」という料理はない。カレー(curry=カリー)は英語であり、つまりインドにとって外来語である。

インド人が海外でインド料理を提供するときは、カレーという語を使って説明することが多いので、カレーという語そのものを否定しているわけではない。ただ、インドの日常では使われていない言葉である。

カレー(北インド系カレー)は大きく分けて4種類ある。

  • マサーラー/मसाला/masālā ‐ タマネギをベースとした定番
  • パーラク/पालक/pālak ‐ ほうれん草をベースとしたもの。緑色のカレー (日本ではサーグ、サグ、サグワラとも呼ばれる)
  • マッカニー/मक्खनी/makkhanī ‐ トマトをベースにした、別名バターチキン
  • コルマー/कोरमा/kormā ‐ 生クリームやカシューナッツをベースとしたクリーミーなもの。唐辛子を使わないため辛くない。白いカレー

コルマーは、南インドではクルマと呼ばれている。

北インドではヒンディー語、南インドではタミル語が主に使われているが、以降は、ヒンディー語を併記することとする。なお、ヒンディー語とタミル語は単語レベルでの共通性は殆どなく、相互の意思疎通は困難である。

食材

基本的な食材は、インドで古くから得られるものである(順不同、順次翻訳中)。

  • などの穀物
  • 野菜
    • タマネギ
    • トマト
    • パーラク/पालक/pālak ‐ ほうれん草
    • 茄子
    • ジャガイモ
    • 冬瓜
    • ニガウリ
    • ハヤトウリ
    • カリフラワー
    • カボチャ
    • ビンディー/भिण्डी/bhinnddī ‐ オクラ
    • 大根
    • 人参
    • キャベツ
    • キュウリ
    • 生姜
    • にんにく
  • 果物
  • 魚介類
    • マチャリー/मछली/machalī ‐
    • 海老
  • 獣肉
    • ムルギー/मुर्गी/murgī ‐ 鶏肉(チキン)
    • 羊肉(マトン/ラム)
    • バカリー/बकरी/bakarī ‐ 山羊肉
    • スアラ/सुअर/suara ‐ 豚肉
    • ガーヤ/गाय/gāya ‐ 牛肉
  • アンダー/अंडा/anddā ‐ 卵
  • 香草
    • ダニヤーパッター/धनिया पत्ता/dhaniyā pattā ‐ パクチー、コリアンダーの葉
  • チーズ
    • パニール ‐ インド風カッテージチーズ

獣肉は主として鶏肉である。なお、ヒンドゥーは牛肉を食べないが豚肉を食べ、ムスリムは豚肉を食べない代わりに牛肉を食べている。

魚料理はあるが、海藻などはあまり食べられていない。

スパイス+αで作られるものがインドの調味料であるが、香辛料以外にも様々なものがある。

インドは北の氷河から南の熱帯雨林まで幅広いが、特に南は南国らしい食材が多く使われる。

  • マサーラー/मसाला/masālā ‐ 香辛料を混合した調味料
    • ガラムマサーラー/गरम मसाला/garam masālā ‐ 乾煎りした香辛料を粉にして混ぜて作る、一般的なマサーラー
  • チャツネ(チャトゥニー)/चटनी/caṭnī
  • ココナッツパウダー/नारियल पाउडर/nāriyal pāuḍar ‐ ココヤシの果実(椰子の実)の果肉を干して粉末にしたもの
  • ココナッツ油 ‐ ココヤシの種子を圧搾して得る油
  • ココナッツシュガー(パームシュガー) ‐ サトウヤシの樹液を煮詰めて作る砂糖
  • 辛子油(マスタードオイル) ‐ カラシナ(芥子菜)の種子を圧搾して得る油
  • ギーオイル ‐ インドのバター

インド料理は様々なものがあり、ここではごく一部を紹介する。日本のインド料理店で提供されているチベット料理なども一部紹介する。表記は必ずしも現発音に即していない。

パン

  • ロティー/रोटी/roṭī ‐ 無醗酵の薄焼きパン
    • チャパティー/चपाती/capātī ‐ 全粒粉を使う
    • プルカ ‐ 小さなチャパティー
    • アタ ‐ チャパティーに雑穀を入れたもの
  • ナーン/नान/nān ‐ 醗酵させた薄焼きパン
  • バトゥーラー ‐ 精白した小麦粉で作られた薄焼きパンを揚げたもの
  • パラーター ‐ 油を塗りながらチャパティーを折り畳み、薄くのばして焼いたパン
  • プーリー ‐ 揚げたチャパティー
  • クルチャー/कुल्चा/kulcā ‐ トウモロコシ粉などで作られたパン

ご飯/米料理

  • チャーワル(ブラウンライス) ‐ ご飯。塩と油を入れて炊くのが特徴
    • マター・チャーワル ‐ グリーンピースご飯
    • チャナ・チャーワル ‐ ひよこ豆の炊き込みご飯
  • ビリヤニ ‐ 香辛料を混ぜて炒めたご飯料理
  • プラオ/ピラウ ‐ インド風のピラフ
  • キール ‐ 乳粥。インディカ米をレーズンなどと共にミルクで炊いたもの。スジャーターが釈迦に差し出したものとして有名
  • キチュリ ‐ インドのお粥。米と豆を使う料理で、リゾットに近い

野菜料理

  • サンバール ‐ 野菜と香辛料の煮物。主として南インドで食べられる
  • ダール ‐ 挽き割り豆の煮込み料理
    • ムング・ダール ‐ 緑豆の挽き割り
    • マスル・ダール ‐ レンズ豆
    • チャナ・ダール ‐ ひよこ豆
    • ウラド・ダール ‐ 黒マッペ豆
    • トゥール・ダール ‐ キマメ
  • ラッサム ‐ 酸味と辛味を特徴とするスープ。主として南インドで食べられる
  • サブジ ‐ 野菜の炒め煮料理
  • アチャール ‐ 野菜の漬け物

肉料理

  • タンドゥーリー・チクン/तंदूरी चिकन/tandūrī cikn ‐ いわゆるタンドリーチキン。骨付き鶏肉に味付けしてタンドールで焼いた料理
  • チクン・ティッカー/चिकन टिक्का/cikn ṭikkā ‐ チキンティッカ。骨なし鶏肉に味付けしてタンドールで焼いた料理
  • シークカバーブ/सीख कबाब/sīkh kabāb ‐ シシカバブ。鶏、羊、山羊などの挽肉に野菜を混ぜて味付けをして串焼きにした、インド風つくね
  • キーマー/क़ीमा/qīmā ‐ 挽肉を炒めて煮込んだ料理
    • キーマ・マタール ‐ グリーンピースの入ったキーマー
  • コルマー ‐ 肉のクリーム煮
  • モモ ‐ 小籠包、蒸し餃子、肉まんに類する料理。実際はチベット料理で、ネパールでも食べられている
  • ポークチリ ‐ 豚肉のチリソース炒めで、中華風インド料理

菓子

  • アーッパ ‐ 米粉をココナッツミルクで解き、薄焼きにした料理。南インドやスリランカ
  • サモーサ(サモサ)/समोसा/samosā ‐ キーマまたはジャガイモに具材と香辛料を加え、小麦粉の皮で三角形に包んで揚げた料理
  • ダヒー ‐ ヨーグルト
  • パーパド/パパド ‐ 豆や米粉で作られた薄焼きクラッカー。インド風せんべい

飲料

  • チャイ/चाय/cāy ‐ 紅茶。一般にはミルクティーである
  • ラッシー/लस्सी/lassī ‐ ダヒー(ヨーグルト)から作る飲料。乳酸菌飲料
用語の所属
食文化
関連する用語
カレー

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