ベテルギウス

読み:ベテルギウス
外語:Betelgeuse 英語 , Betelgeuze 英語 , Betelĝuz/o エスペラント
品詞:固有名詞

オリオン座に見られる恒星の一つ。オリオン座α星(αOri)。58番星。

目次

ベテルギウスは、アラビア語で「脇の下」の意。

オリオン座の2‐3‐2の左上の赤い星で、オリオンの右肩。和名は「平家星」(へいけぼし)。これは源氏は白、平家は赤の旗印をなびかせていたところに由来する。

基本情報

物理的情報

  • 伴星: (該当資料なし)
  • 規模
  • 年齢: 約850万歳

観測情報

  • 絶対等級(MV): −5.20等
  • 等級
  • スペクトル分類: M1-2Ⅰa-Ⅰab (明るい赤色超巨星)
  • 色指数
    • B-V: +1.85
    • U-B: +2.06
    • V-Rc: (該当資料なし)
    • R-Ic: (該当資料なし)
  • 視線速度(RV)=後退速度
    • 21.0km/s(18.1km/cBeat)(連星系平均視線速度)
    • 21.91km/s(18.9km/cBeat)±0.51km/s(0.4km/cBeat) (SIMBAD)
    • みかけの後退速度: 21.88km/s(18.9km/cBeat) (z=0.000073から計算)
    • 実際の後退速度: 21.89km/s(18.9km/cBeat) (z=0.000073から計算)
  • 固有運動(µ)
    • 赤経(1000µα): +28
    • 赤緯(1000µγ): +11

主なカタログ番号

  • HIP 27989
  • HD 39801
  • HR 2061

彩層

ハッブル宇宙望遠鏡の撮像分光計STISによる観測で、彩層の存在が明らかになった。

その大きさは星の半径の50倍にも広がっており、ここから大気圏直径は海王星軌道の5倍(およそ200億km)にもなる巨大なものである。

また観測から、超音速の嵐が吹き荒れていると考えられている。

超巨星

老齢の赤色超巨星である。

約850万歳は、太陽の46億歳と比較するとそれほど老齢では無さそうだが、しかしベテルギウスは大質量星であるため既に寿命が近く、遠からず超新星爆発を起こすと見られる兆候が観測されている。

現在は収縮を繰り返しており、0.0等〜1.3等まで不規則に明るさが変化する、不規則型変光星と呼ばれる変光星である。

超新星爆発後は、ブラックホールではなく中性子星になると見込まれている。現在支持されている恒星ブラックホールのモデルは太陽の30〜40倍程度の質量を持った恒星であるが、ベテルギウスの質量は最大でも20 Mしかなく、ブラックホールになるには質量が足りないと見込まれるためである。

爆発寸前

老齢で死期が迫っており、超新星爆発寸前である。縮小や変形など、遠からず超新星爆発を起こすと見られる兆候が観測されている。

遅くとも100万年以内には爆発するとされており、(時間をどう考えるかは難しい問題であるが)既に爆発しているという説もある。距離は約500光年なので、もし本当に既に爆発しているなら、遅くとも500年以内に超新星爆発が観測できることになる。

2009(平成21)年に米欧の研究者が発表した幾つかの論文によれば、ベテルギウスは大量のガスを放出し収縮、その結果天体表面はまるで梅干しのように、でこぼこに膨らんでいる、としている。

超巨星爆発

地球への影響

約500光年というのは距離が比較的近いので、地球に何らかの悪影響が出る恐れがある(γ線など)。

日本の古典にも記録が残る、現在のかに星雲(M1)を誕生させた超新星SN 1054は約7,200光年であるため、500光年という距離での超新星爆発は人類史上未曾有の事態であると言える。ある説では、マンモスを絶滅させたのは4万1千年前に250光年の距離で発生した超新星爆発、などとしている。

ただ、1250年頃に観測された超新星で、現在RX J0852.0−4622として観測される超新星残骸は650〜700光年で、現時点で地球から最も近い超新星残骸となっている。この超新星爆発で地球に何か大きな問題が生じたかというと、特にこれといったものはなさそうである。

爆発時の研究

人類が科学技術を得てから、至近距離での超新星爆発はベテルギウスが初めてとなる見込みである。

東京工業大の河合誠之教授(宇宙物理学)によれば、「現状では重力崩壊から爆発の過程を理論で説明できていない。衝撃波は全方向に一律なのか、特定の方向に強く伝わるのかなどが分かれば、高温・高密度での物理の理解が進む」としている。

またベテルギウスの爆発で検出されるニュートリノは推定約2,500万個とされており、1987(昭和62)年にカミオカンデで検出し小柴昌俊がノーベル賞を受賞したSN 1987Aのニュートリノは11個だったことと比較するとケタ違いの量が観測される見込みである。

爆発時の観測

爆発時の推定光度は−10〜−11等程度と推定されている。明るいことから、昼間でも観測が可能になると考えられている。

東京大数物連携宇宙研究機構の野本憲一特任教授(星の進化論)らの解析と説明によれば、爆発後の経過は、次のようになる。

  1. まず表面が100万度の高温となりX線が放たれる
  2. 肉眼で見られる可視光線が出てくるのは1時間後で、1万度で青色に輝く
  3. 星は膨張を続け、2時間後に太陽の次に明るく見える星「シリウス」と並ぶ明るさとなる
  4. 3時間後には半月並の明るさになり、これが3ヶ月程度続く

    オリオン座は冬の星座であり、夏は日中に空に上るため通常の星を見ることはできない。しかしもし夏に爆発した場合、超新星爆発したベテルギウスは非常に明るいため、昼間でも十分に見られる。

  5. 色は徐々に暖色系へと変化し、3ヶ月後はオレンジ色から黄色になる
  6. 温度の低下と共に徐々に暗くなり、450日後には金星と同等の−4等星になる
  7. 4年後には、肉眼で見える限界の6等星になるが、この頃には都会では既に見ることができなくなっている(空が明るいため)

なお、超新星爆発の約33時間前には大量のニュートリノが放出されると見込まれており、日本でもスーパーカミオカンデの後継機などで観測されると期待される。従って、爆発前に爆発を察知することが理論上は可能である。

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