ベクレル

読み:ベクレル
外語:Bq: becquerel 英語
品詞:単位助数詞

国際単位系における、放射能の単位。

目次

一秒間に1回の崩壊をすると、1ベクレルとなる。

つまり、1Bq=1回崩壊/秒、である。Bq=s−1

定義

ベクレルは逆数である。ベクレルは、放射性物質の「量」を表わす単位であり、放射線の強さ(エネルギー)とは異なる。

従って、吸収線量のグレイや線量当量のシーベルト(共に、定義はm2∙s−2)とは次元の異なるものである。ベクレルをシーベルトに変えるためには、実効線量係数などの係数を掛ける必要がある(詳細後述)。

この関係をボクシングで喩えると、ある時間に繰り出したパンチの数がベクレルである。力の大小や、相手に当たったかどうかは関係ない。一方、シーベルトは相手に与えたダメージの度合いである。

古くはキュリー(Ci)が使われていた。1Ci=3.7×1010Bq、である。

規模

↑強い

  • 1012ベクレル (TBq、1兆Bq) 大型原子力施設

    ↑1000倍 1/1000倍↓

  • 109ベクレル (GBq、10億Bq) 遮蔽が必要

    ↑1000倍 1/1000倍↓

  • 106ベクレル (MBq、100万Bq) 学生実験で使う線源

    ↑1000倍 1/1000倍↓

  • 103ベクレル (kBq、1000Bq) 人体中の放射能

    ↑1000倍 1/1000倍↓

  • 100ベクレル (Bq) ごく微量の放射能

↓弱い

自然放射線

大宇宙は放射線に溢れている。

宇宙の一部として作られた地球も、放射性物質を含んでおり、動植物はその放射線を被曝したり、またそういった放射性物質を体内に取り込んでいる。

野菜なども、養分として大地から様々な元素を吸収するが、その中には必ず放射性物質が含まれる。

放射線に溢れる宇宙に誕生した地球の生物は、これら放射線に対する能力を持っている。

ミネラル

生物は生命を維持するためにミネラルを必要とするが、それらは放射性物質を含む。

人体内の代表的な放射性物質は、40K(カリウム40)である。カリウムは人の必須元素の一つであるが、人に限らず、生物には欠くことの出来ない元素である。

野菜などは地中からカリウムを取り込み、その中に天然の放射性カリウムが含まれる。それを人が取り込む。人の体内には体重の0.2%のカリウムが含まれているが、このうち0.0117%がカリウム40である。同様に、人の体内には放射性の炭素14C(炭素14)などが含まれている。

生物は、天然の放射性物質を含んだ食物を毎日食べ続けているが、摂取された放射性物質の一部は体外に排出され、摂取量と排出量はバランスが保たれている。生物は生命維持のために過剰に放射能レベルが上がらないよう作られており、体内の放射能レベルは生涯を通してほぼ一定に保たれている。

カリウム40

人間の場合、一日の食事に含まれるカリウム40の放射能は、約75ベクレルとされる。一説では、体内にある全カリウム40由来の放射能は約4000Bqあるとされる。

例えば、減塩用の塩として、味の素の「やさしお」で考える。栄養成分を見ると、製品100gあたりカリウムは27.6gとされる。

さて、カリウム1gあたりのカリウム40は30.4Bqである。ここから計算すると、製品100gあたりの放射能は約839.04Bqと求まる。製品1kgあたりだと約8390.4Bq/kgということになる。

日常は様々な放射能の影響があり、日々そういった放射性物質を当然のように体内に取り込んでいる。また、1万Bq/kg近い放射能があったとしても、一日に数g程度を摂取するだけなら、放射能の影響はないに等しい。

各放射性同位体ごとに、質量、含まれる原子の数、放射能の強さは全て比例関係にある。

このとき、放射性物質の質量あたりの放射能の強さを比放射能といい、これを係数として用いると、グラム→ベクレル、ベクレル→グラムの換算などが可能となる。比放射能は、放射性同位体の半減期と原子の質量数から求められる。

例えば放射性セシウムの代表であるセシウム137の場合、3.20×1012Bq/gつまり3兆2000億Bq/gであり、逆数にすると3.12×10−13g/Bqである。

セシウム137が200ベクレルあったとすると、その質量は 0.000000062mg ということになる。

シーベルト

ベクレル(Bq)は放射性物質質量と相関関係があるが、それ自体は生体への影響を表わす量ではないので、影響を考えるためにはシーベルト(Sv)に換算する必要がある。

Webサイトで、ベクレルとシーベルトの変換を簡単に行なえるサイトがある。

実効線量との換算

組織や臓器が受ける線量を測るためとはいえ、放射性物質が一度体内に摂取された後にその量を測定することは、困難(実質的に不可能)である。

そこで、放射性物質の量と実際の被曝量との関係をあらかじめ求めておくことで、放射性物質の量(ベクレル)から被曝線量(シーベルト)を算出することが可能になる。この時使われる、摂取した放射性物質の量と被曝線量の関係を表わす係数を、実効線量係数という。

係数は、「吸引」と「経口」で分けられており、さらに、その化学形(酸化物、水酸化物、硝酸塩、等など)ごとにも分けられている。

換算基準は複数ある(有名どころでは、「ICRP Publication 72」「原子力安全委員会」「ECRR 2010 Recommendations」など)で、年齢によって係数は異なることもある(3ヶ月児は、1歳以上の倍程度で換算)。

以下は主な放射性物質の実効線量係数の例である。

核種化学形吸引(mSv/Bq)経口(mSv/Bq)
3H1.8×10−81.8×10−8
60Co酸化物、水酸化物及び無機化合物以外の化合物 3.4×10−6
酸化物、水酸化物及び無機化合物 2.5×10−6
酸化物、水酸化物、ハロゲン化物及び硝酸塩以外の化合物7.1×10−6 
酸化物、水酸化物、ハロゲン化物及び硝酸塩1.7×10−5 
90Srチタン酸ストロンチウム以外の化合物3.0×10−52.8×10−5
チタン酸ストロンチウム7.7×10−52.7×10−6
131I蒸気2.0×10−5 
沃化メチル1.5×10−5 
沃化メチル以外の化合物1.1×10−52.2×10−5
134Csすべての化合物9.6×10−61.9×10−5
137Csすべての化合物6.7×10−61.3×10−5
239Pu硝酸塩及び不溶性の酸化物以外の化合物 2.5×10−4
硝酸塩 5.3×10−5
不溶性の酸化物 9.0×10−6
不溶性の酸化物以外の化合物3.2×10−2 
不溶性の酸化物8.3×10−3 
用語の所属
BQ
関連する用語
放射能
放射線
マッヘ

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