核融合

読み:かくゆうごう
外語:nuclear fusion 英語 , fuzi/o エスペラント
品詞:さ変名詞

原子核と別の原子核がくっついて、より重い別の原子核になること。この際大きなエネルギーが放出される。

目次

宇宙の核融合

宇宙が誕生し、ビッグバンが起こった直後には、宇宙には最も軽い水素ヘリウムリチウムの3種類の元素しかなく、元素の大半は後に恒星の核融合反応によって作られたものである。

しかし原子番号が大きくなるにつれ原子核同士のクーロン斥力(同じ電荷を持つ粒子同士の反発力)が大きくなるため、核融合で生成できる元素は原子番号26のが限界である。

実際に、太陽質量程度の質量恒星では、核融合で作られる原子までである。それ以上原子番号が大きな原子は、太陽の数十倍以上の質量を持った恒星が超新星爆発を起こす際、その爆縮時の超高圧状態で生成されると考えられている。地球にも存在する、さらに重いウランなどなどは、太陽系誕生以前の、第一世代の巨大な恒星の超新星爆発の時に作られた残骸である。

以前は、超新星爆発で生じるエネルギーでは力が弱いのではないかとする説もあったが、日本の独立行政法人理化学研究所が2011(平成23)年2月1日、「超新星爆発の元素合成は想像以上に速い」証拠をつかみ、これを発表した。

恒星の核融合

現象

太陽などの恒星で行なわれている現象である。

通常は水素が融合しヘリウムが作られている。

やがて、水素がなくなる(星が老いてくる)と、ヘリウムの融合で炭素ができ、炭素の融合で酸素ができ、CNOサイクルと呼ばれる反応を経て、酸素の融合、ネオンの融合などと続き、途中α崩壊したりγ線による分解などを経て、56Niとなる。

56Niはその後β崩壊し、陽子2個が中性子に変わって鉄56(56Fe)となる。はエネルギーが低いので、これ以上の核融合は起きない。こうして進化した恒星の中心には鉄の核ができることになる。

過程

  1. 陽子‐陽子連鎖反応 (水素1からヘリウム4を作る反応)
  2. CNOサイクル (炭素、窒素、酸素を順番に作り回る反応)
  3. ヘリウム燃焼過程 (※このあたりで赤色巨星になる)
  4. 炭素燃焼過程 (C→Ne) 一説では1000年程度とされる
  5. ネオン燃焼過程 (Ne→O)
  6. 酸素燃焼過程 (O→Si) 一説ではNe→O→Siで長くても数年とされる
  7. 珪素燃焼過程 (Si→Fe)

これら以外にも、次のような反応も存在する。

研究と利用

核融合は、現在使われている核分裂に代わる核エネルギーの利用方法として研究されている。

太陽内と同様の反応を実現させるため「人工太陽」とも呼ばれている。

手法

D-T核融合
D-T核融合

核融合実験で実現の目標とされているのは、

重水素+三重水素→ヘリウム+中性子

というD-T核融合反応である。

これは衝突時に核融合反応がおこる確率が高く、また放出されるエネルギーが17.6MeVと大きい。

この重水素+三重水素1gで、石油8トン(タンクローリー1台分)のエネルギーを生む。しかし地上で核融合を行なうのは大変なことで、1億℃以上のプラズマが必要になる。それだけの温度・高速な粒子を容器に閉じ込め、膨大なエネルギーを与えて燃料を加熱し、かつ一定以上の密度を保たねば核融合は継続しない。

安全性

しかしこの困難さは、核融合が核分裂と違い、安全であることの裏返しでもある。

核融合でも結果中性子が作られるが、この中性子はウラン核分裂とは違い核融合の連鎖反応を起こさない。

また核融合炉では炉中にある燃料は僅かで、継続的に燃料を中に補給する。そのため燃料の補給を止めれば反応もすぐに停止する。

常に温度、密度、放熱の阻止の三条件の全てを満たさねばならず、何れか一つでも欠ければやはり反応は停止してしまう。核分裂反応のような暴走は、原理的に起こり得ないわけである。

つまり現在の核分裂反応は必死に反応を抑えようとしているのに対し、核融合反応は必死に反応を継続させようとする点が大きく異なる。

技術開発

実用化はまだ問題も多く困難だが、この分野では日本が世界をリードしている。

例えば大阪大学などの研究グループは「レーザー核融合」を研究しており、2019(令和元)年現在、世界一の効率で超高温・超高圧を実現させることに成功している。

ハイテクの中のローテク

核融合による発電は人類の夢であるが、ここから電気を作る方法は単純である。

基本的には、火力発電から続く汽力発電であり、原子力発電と同様、核融合で発生させた熱でお湯を湧かして水蒸気を作り、蒸気でタービンを動かし、タービンが発電機を回す。

発熱させる箇所以外は、案外とローテクなのである。

関連する用語
原子核
エネルギー
核分裂

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