亜鉛 |
辞書:科学用語の基礎知識 原子元素・名称編上 (NELEMN1) |
読み:あえん |
外語:Zn: Zincum |
品詞:名詞 |
青白色をした金属元素。ヒトの必須元素(必須微量元素)の一つ。
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情報 |
基本情報 |
同位体 |
質量数は、54から85までが確認されており、その中に核異性体も存在する。安定同位体は五つある。
なお、このうち亜鉛64(64Zn)と亜鉛70(70Zn)とは、長寿命放射性同位体であるらしい。一説では、亜鉛64の半減期230京年以上とも言われる。
同位体核種 | 天然存在比 | 半減期 | 崩壊 | 崩壊後生成物 |
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54Zn | ‐ | 2陽子放出 | 52Ni | |
55Zn | ‐ | β+崩壊 | 55Cu | |
56Zn | ‐ | β+崩壊 | 56Cu | |
57Zn | ‐ | β+崩壊 | 57Cu | |
58Zn | ‐ | β+崩壊 | 58Cu | |
59Zn | ‐ | β+崩壊 | 59Cu | |
60Zn | ‐ | β+崩壊 | 60Cu | |
61Zn | ‐ | β+崩壊 | 61Cu | |
62Zn | ‐ | 9.186時 | EC崩壊 | 62Cu |
β+崩壊 | 62Cu | |||
63Zn | ‐ | β+崩壊 | 63Cu | |
64Zn | 48.63% | >2.3×1018年 | (2β+崩壊) | 64Ni |
65Zn | ‐ | 244.26時 | EC崩壊 | 65Cu |
β+崩壊 | 65Cu | |||
66Zn | 27.90% | 安定核種(中性子数36) | ||
67Zn | 4.10% | 安定核種(中性子数37) | ||
68Zn | 18.75% | 安定核種(中性子数38) | ||
69Zn | ‐ | 56.4分 | β−崩壊 | 69Ga |
69mZn | ‐ | 13.8時 | IT崩壊 | 69Zn |
β−崩壊 | 69Ga | |||
70Zn | 0.62% | 安定核種(中性子数40) | ||
71Zn | ‐ | 2.4分 | β−崩壊 | 71Ga |
71mZn | ‐ | β−崩壊 | 71Ga | |
IT崩壊 | 71Zn | |||
72Zn | ‐ | 1.94日 | β−崩壊 | 72Ga |
73Zn | ‐ | β−崩壊 | 73Ga | |
74Zn | ‐ | β−崩壊 | 74Ga | |
75Zn | ‐ | β−崩壊 | 75Ga | |
76Zn | ‐ | β−崩壊 | 76Ga | |
77Zn | ‐ | β−崩壊 | 77Ga | |
78Zn | ‐ | β−崩壊 | 78Ga | |
79Zn | ‐ | β−崩壊 | 79Ga | |
80Zn | ‐ | β−崩壊 | 80Ga | |
81Zn | ‐ | β−崩壊 | 81Ga | |
82Zn | ‐ | β−崩壊 | 82Ga | |
83Zn | ‐ | β−崩壊 | 83Ga | |
84Zn | ‐ | β−崩壊 | 84Ga | |
85Zn | ‐ | β−崩壊 | 85Ga |
安定核種に対し、質量数が大きすぎるまたは小さすぎる場合は複雑な崩壊となり、質量数が小さいと陽子放射、大きいと中性子放射が同時に起こることがある。
特徴 |
性質 |
空気中で灰白色の皮膜を作る。金属としては沸点が低く、加熱すると揮発しやすい。
トタンメッキ、電極などの用途の他、銅との合金である黄銅(真鍮)は耐性が強い。
黄銅は機械部品として使われるほか、五円玉、金管楽器、また金に似た色なので装飾などでも良く使われている。
メッキ |
亜鉛はイオン化傾向が大きいが、酸化物は酸に溶けない。よって表面を酸化皮膜が覆っている間は酸化されない。
また、酸化皮膜が破れても、内部にある鉄よりもイオン化傾向が大きいので亜鉛が先に酸化され、結果として鉄を保護することになる。
そのためトタンは酸化に強く、しばしば屋外で使われる。
栄養 |
必須元素 |
亜鉛は、ヒト体内の総量が約2gと微量であるが、人間の必須微量元素でもあり、酵素の構成成分、核酸代謝、細胞分裂に関与する。但し、過剰摂取は有毒である。
男性では前立腺で性ホルモン合成に関与し、精子作りを促進する。つまり生殖能力を高めるのに欠かせないため、セックス・ミネラルの異名もある。
薬理量は一日100mg〜300mgとされ、概ね成人で200mg以内とされている。
「第5次改定日本人の栄養所要量」では、摂取推奨量は1日15mgと記載されている。アメリカでは、成人男性は15mg、成人女性は12mgを1日に摂るべき、とされている。
欠乏症 |
欠乏すると脱毛、味覚嗅覚障害、免疫力低下、発育障害、生殖力減退(男性)などが起こることが知られている。
亜鉛は各種酵素の成分であるため、亜鉛が欠乏すると酵素活性が低下する。また、インシュリン、脳下垂体ホルモン等、ホルモンの合成、分泌等にも影響を与える。
酵素活性が低下するとDHT(ジヒドロテストステロン)が発生し、これが若禿げや薄毛を引き起こす原因であると言われている。
亜鉛の吸収性はその状況によって異なる。玄米のように、フィチン酸を含む食品と摂ると、亜鉛や鉄などミネラルの吸収が阻害され排泄されてしまうため、欠乏症を生じることになる。
中毒症 |
過剰になると銅欠乏(貧血、好中球減少)やLDH/HDL比増加が起こる。
暴露による急性中毒には、メッキ工場等に従事する人が罹患する「金属ヒューム熱」がある。亜鉛ヒュームの吸引により、数時間内に風邪に似た症状を示す。
慢性中毒では、過剰な亜鉛により腸管からの銅吸収阻害で銅欠乏を生じる。銅欠乏に伴う鉄芽球性貧血が生じることが知られる。
代謝 |
ヒト生体内の全亜鉛量約2gのうち、50〜60%は骨格筋、約30%が骨にあり、それ以外では肝臓等に多い。
ヒトでは、吸収は亜鉛は主に十二指腸から小腸に掛けてで行なわれる。排泄は主として膵臓で、膵液として十二指腸へと分泌される。そのほか、尿、汗へ排泄される他、腸上皮細胞や皮膚、爪、毛髪等への移行による排泄経路が知られている。
多く含まれる食品 |
食品では、牡蛎に非常に多く含有(1個あたり約15mg)し、他に抹茶、煎茶、番茶、小麦やパン、大豆、隠元豆、牛肉、豚肉、鶏肉、魚肉などに含有する。
植物性食品には一般に含有量が少ない。また果実よりは根菜類の方が多く、主に緑色部に含まれる。
不足しがちのミネラルということでサプリメントも多く市販されているが、空腹時に服用すると胃部不快感が起こることがよく知られている。
安全性 |
危険性 |
有害性 |
環境影響 |
発見 |
昔から黄銅(真鍮)などとして存在が知られており、発見者は明らかでない。
名称の由来は、亜鉛鉱石を意味する英語「zinc」から。
主な化合物 |
主な合金 |
前後の元素 |
リンク |
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