黒紫色の金属光沢を持った非金属元素の一つ。融点以下でも昇華し、紫色の蒸気を発する。
「沃」の字が常用漢字から漏れたため、現在は「ヨウ素」とも書く。化合物の日本語名は日本化学会の化合物命名法委員会によるものが正式だが、そこでは前述の理由により「ヨウ素」となっている。
一般情報
原子情報
- 原子量: 126.90447(3)
- 電子配置:
- 1s2、2s2、2p6、3s2、3p6、3d10、4s2、4p6、4d10、5s2、5p5
- [Kr]4d10、5s2、5p5
- 原子価: 1
- 酸化数: −1、0、+1、+5、+7
物理特性
- 相: 固体
- 融点: 114℃(ICSC)
- 沸点: 184℃(ICSC)
- 比重: 4.9(水=1)
- CAS番号: 7553-56-2
- ICSC番号: 0167
質量数は、107から145までが確認されており、その中に核異性体も存在する。安定同位体は一つのみ。
これ以外の同位体は、俗に放射性沃素と呼ばれる。
同位体核種 | 天然存在比 | 半減期 | 崩壊 | 崩壊後生成物 |
107I | ‐ | | | |
108I | ‐ | | α崩壊 | 104Sb |
β+崩壊 | 108Te |
109I | ‐ | | 中性子放射 | 108I |
α崩壊 | 105Sb |
110I | ‐ | | β+崩壊 | 110Te |
α崩壊 | 106Sb |
111I | ‐ | | β+崩壊 | 111Te |
α崩壊 | 107Sb |
112I | ‐ | | β+崩壊 | 112Te |
113I | ‐ | | β+崩壊 | 113Te |
114I | ‐ | | β+崩壊 | 114Te |
115I | ‐ | | β+崩壊 | 115Te |
116I | ‐ | | β+崩壊 | 116Te |
117I | ‐ | | β+崩壊 | 117Te |
118I | ‐ | | β+崩壊 | 118Te |
119I | ‐ | | β+崩壊 | 119Te |
120I | ‐ | | β+崩壊 | 120Te |
120mI | ‐ | | | |
121I | ‐ | | β+崩壊 | 121Te |
122I | ‐ | | β+崩壊 | 122Te |
123I | ‐ | | EC崩壊 | 123Te |
124I | ‐ | 4.1760日 | EC崩壊 | 124Te |
β+崩壊 | 124Te |
125I | ‐ | 59.408日 | EC崩壊 | 125Te |
126I | ‐ | 13.11日 | EC崩壊 | 126Te |
β+崩壊 | 126Te |
β−崩壊 | 126Xe |
127I | 100.00% | 安定核種(中性子数74) |
128I | ‐ | | β−崩壊 | 128Xe |
β+崩壊 | 128Te |
129I | ‐ | 1570万年 | β−崩壊 | 129Xe |
130I | ‐ | | β−崩壊 | 130Xe |
131I | ‐ | 8.0207日 | β−崩壊 | 131Xe |
132I | ‐ | | β−崩壊 | 132Xe |
132mI | ‐ | | | |
133I | ‐ | | β−崩壊 | 133Xe |
134I | ‐ | | β−崩壊 | 134Xe |
135I | ‐ | | β−崩壊 | 135Xe |
136I | ‐ | | β−崩壊 | 136Xe |
137I | ‐ | | β−崩壊 | 137Xe |
138I | ‐ | | β−崩壊 | 138Xe |
139I | ‐ | | β−崩壊 | 139Xe |
140I | ‐ | | β−崩壊 | 140Xe |
141I | ‐ | | β−崩壊 | 141Xe |
142I | ‐ | | β−崩壊 | 142Xe |
143I | ‐ | | β−崩壊 | 143Xe |
144I | ‐ | | β−崩壊 | 144Xe |
145I | ‐ | | β−崩壊 | 145Xe |
安定核種に対し、質量数が大きすぎるまたは小さすぎる場合は複雑な崩壊となり、質量数が小さいと陽子放射、大きいと中性子放射が同時に起こることがある。
日本の沃素産出量はチリに次いで世界第二位で、沃素全世界需要量の約40%を千葉県で生産している。
人体では甲状腺ホルモンの構成成分で、不足するとホルモンを作れなくなる。成人男女の栄養所要量は130μg程度、許容上限摂取量は3mgである。
海草や魚介類から容易に摂取可能で、日本のように海産物の豊富な島国で沃素が欠乏することはない。しかし内陸国では海産物が不足しがちで、慢性的な沃素不足が起こっている。
日本の場合、食品に多く沃素が含まれる(推定、一日摂取量は500〜3000μg)ので、不足する心配は不要である。昆布や若布、海苔など海草類に多いほか、魚など魚介類にも多く含まれ、国産の大豆や小豆などの豆類、米、などにも、多くは無いが100g中に30〜80μg程度含まれている。
逆に日本人の場合は過剰摂取が問題であり、これは甲状腺に良くない。沃素が過剰になると、甲状腺機能低下症、甲状腺腫、甲状腺中毒症などを起こす。
沃素にも豊富な種類の同位体があるが、安定核種は127I(沃素127)のみで、他は放射性同位体である。
この放射性同位体である沃素を「放射性沃素」という。
原子力の事故などでは、このうち131I(沃素131)が漏出することが多い。
- 引火点: (該当資料なし)
- 発火点: (該当資料なし)
- 爆発限界: (該当資料なし)
- 刺激
- 腐食性: (該当資料なし)
- 刺激性: 催涙性。眼、気道、皮膚を重度に刺激する。
- 感作性: (該当資料なし)
- 毒性
- 急性毒性: (該当資料なし)
- 慢性毒性: (該当資料なし)
- がん原性: (該当資料なし)
- 変異原性: (該当資料なし)
- 生殖毒性: (該当資料なし)
- 催畸形性: (該当資料なし)
- 神経毒性: (該当資料なし)
- 分解性: (該当資料なし)
- 蓄積性: (該当資料なし)
- 魚毒性: (該当資料なし)
1811(文化8)年、フランスの科学者ベルナール・クールトア(Bernard Courtois)によって発見された。
化学名Iodiumは、ギリシャ語で「すみれ色」を意味するιω'δησ(io^'de^s)から付けられた。
- 沃化アセチルコリン (2260-50-6)
- 沃化アルミニウム (AlI3)
- 沃化銀 (AgI) (7783-96-2)
- 沃化水素 (HI) (10034-85-2)
- 沃化プルトニウム (PuI3) (13813-46-2)
- 沃化プラリドキシム
- 次亜沃素酸 (HIO)
- 沃素酸 (HIO3)
- ポビドンヨード ((C6H9NO)n・xI) (25655-41-8)
52 テルル ‐ 53 沃素 ‐ 54 キセノン
関連するリンク
ICSC 国際化学物質安全性カード「健康食品」の安全性・有効性情報〔独立行政法人 国立健康・栄養研究所〕用語の所属
元素
ハロゲン
典型非金属元素
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放射性沃素