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日本で開発されていた国産次世代ロケット。開発に失敗し、開発中止となった。推進系にケロシン(灯油)やLNG(液化天然ガス)を使用する予定だった。
主に中小型衛星の商業打ち上げを目的とした小型ロケットである。
種子島からの打ち上げで、高度800kmの太陽同期軌道に約2トン、高度200kmの低高度軌道に約4.4トンの衛星打ち上げ能力を持たせることを目標とした。
かつて、宇宙開発事業団(NASDA、現JAXA)により開発されたJ-Ⅰロケットの後継であり、太陽同期軌道に約1トンの衛星打ち上げ能力を持つ二段式液体燃料ロケット「J-Ⅰ改良型ロケット」として開発されていたロケットである。
2001(平成13)年3月、IHI(旧・石川島播磨重工業)や三菱商事、川崎重工業などが出資し「株式会社ギャラクシーエクスプレス」が設立され、官民共同開発の「GXロケット」となった。
GXロケットの開発自体は2003(平成15)年から始まっている。GXは日本からは打ち上げず米ユナイテッド・ローンチ・アライアンス(ULA)社が打ち上げる計画であった。大型であるH-ⅡAロケットの代替として、中小型衛星の打ち上げに使われる計画もあったほか、情報収集衛星打ち上げ用としても運用が想定されていたらしい。
2006(平成18)年2月をめどに種子島宇宙センターから打ち上げ予定であったが、開発は大幅に遅延した。実用化に成功した国はこれまでに無かったが、LNG推進系は各国で開発が続けられており、中でも日本の開発品が世界で最も進んではいた。
GXロケットと平行開発されていた二段目、LE-8は、ブーストポンプ・アブレーター冷却式として完成された。
通常、比推力を上げるためにはターボポンプを使用するが、LE-8設計の基本方針は「簡素なエンジン」だった。ターボポンプは設計が複雑になるため、簡素な設計にすることを目指したLE-8は当初、高圧ヘリウムのガス圧で燃料を押し出すガス圧方式、いわゆる圧送式サイクルを採用していた。
LE-7シリーズやLE-5シリーズのターボポンプの開発はIHIであるが、IHIとしては、小型LNGエンジンで燃焼器やノズルの経験を得て、いずれ大型LNGエンジンの開発を目指していたようである。
さて、ロケットエンジンの性能は「比推力」で決まる。比推力の単位は「秒」であり、この時間が長い方が高性能である。同じ燃料で、比推力を上げるためには、燃焼室圧力を上げる必要がある。
ターボポンプがないLE-8の燃焼室圧力は1.2MPa(12気圧)程度と低く、この条件で比推力を上げるためには燃焼室を大型化させざるをえなくなった。これも重量増となるが、ターボポンプの省略分で賄えるはずだった。
しかしタンクの重量オーバーという予期せぬ理由で難航、強度を維持しながら極限までタンクを軽量化する技術の開発まで余儀なくされた。重量増は、タンクの小型軽量化、より具体的には軽量で高強度の炭素繊維複合材で作るなどで解決させた。
最終的には、LE-5Bのターボポンプを一部改修する形で採用するに至っている。ここまでの段階で、幾度の仕様変更があったか定かではない。
LE-8のコンセプトは「簡素なエンジン」で、このため小型軽量が何よりも優先されたエンジンである。
これを二段目とするにあたり苦戦、600億円で完成する予定が1000億円をかけてもなお完成せず、更に1000億円の予算が必要と判断された。これでは、完成してもH-ⅡAロケットと同額で、H-ⅡAの半分しか積めず、挙げ句の果てには日本国内からは発射不可能という、本来目指したものと全く違う代物にしかならなかったのである。
結果としてこれは失敗作になってしまった。完成させても当初の価格で提供できないことが確実となったGXロケットは存在価値がなく、「ビジネスとして成立しない」という結論で、2010(平成22)年に民主党がした「事業仕分け」で遂に開発中止が決定することとなった。
IHI(旧・石川島播磨重工業)は2010(平成22)年1月16日、株式会社ギャラクシーエクスプレスを精算する方針を固め発表した。IHIは、関連資産100億円程度を特別損失として計上する公算とされた。
IHIはGXロケット開発で手痛い損失を出した。しかしそれは液化天然ガス(LNG)を燃料に使用するロケットエンジンが技術的に困難だったためではない。LE-8の目指した方向性が、GXロケットの二段目に向いていなかったのである。
IHIは、LE-8の目標を継承しながら、より現実的な機構つまりターボポンプを用い、更に高性能な10トン重(tf)級エンジンとして完成を目指している。
これはH-ⅡAロケットの二段目に使われているLE-5Bの対抗となるもので、LE-5Bの推力137kN=約14tfと同程度になる。
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