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それぞれ独立したSNS、マイクロブログ、ブログなどの各種ネットサービスを、独立性を保ったままインターネットで繋いで連合させたサーバー群。及びそれによりサーバーを超えて交流する機能を実現したもの。
語源は、連合を意味するfederationと、宇宙を意味するuniverseの混成語(俗称かばん語)である。
この語は、かつて使われていたPump.ioというStatusNetの後継的な実装でサービスを提供していたIdenti.caというサーバーが、自身の持つ連合機能を呼ぶために造語した用語であるとされている。
サーバーは世界中にいくつあっても良いが、そのサーバー同士は互いに共通の通信プロトコルで結ぶ必要がある。これによって、各サーバー間での交信が可能となる。
これが特定企業の開発した非公開のプロトコルであることもあるが、その場合は明らかに不自由であるので公開の場で取り決められた仕様である方が望ましい。結果、古くはOStatusプロトコル、現在はpump.ioのプロトコルを基に作られたActivityPubプロトコルによって接続されている。
OStatusは古い仕様であるため既に多くのFediverseの実装では対応されなくなっており、GNU socialなどごく一部の古い実装が利用しているに過ぎない。
OStatusしかサポートしていないサーバーはOStatusを使用しているサーバーとしか接続できず、それ以外のプロトコルのみを使用したサーバーとは通信ができない。多くのプロトコルに対応したサーバーであればより多くのFediverseと接続できることになるが、現在はFediverseを実現する各実装はW3C勧告であるActivityPubプロトコルに対応するのが主流となっている。
Fediverse(フェディバース)は概念的な用語であり、Fediverseとひとくくりで言っても明確な定義があるわけではない。ゆえに何かしら統一的なルールがあるわけでもないが、必要なものは決まっている。
サーバー(とその上で動作するSNSを実現するためのプログラム)は、機能すれば何でも良い。Mastodonが人気だが、日本では国産であるMisskeyも勢力を伸ばしつつある(対応するサーバーについて詳細はActivityPubを参照)。
各サーバー・各サービスが、ユーザーの囲い込みをするのではなくむしろ他のサービスと積極的に繋がっていこうとするものがFediverseである。
このためFediverseは単に爆発的にユーザー数が増えるだけでは受け皿が足りない。受け皿となる新たなサーバーも一緒に増えて、その中にユーザーが分散し成長がバランスしていく必要があり、そうならないと上手く機能しない。
その過程ではある程度の巨大なサーバーが増えることにはなるが、徐々に中規模で独自性のあるサーバー、小規模で無理なく維持できるサーバーが多数作られる状況となるのが理想的である。
既にあるサーバーが良ければそれを使うこともでき、それらが気に入らないなら自分でサーバーを立てて運用することもできる。自分でサーバーを立てれば、法律に抵触しない範囲内で自分が王様である。
現状では、殆どは趣味や有志によるボランティア運営ベースのサーバーである。いずれは税金で運営される公共サーバー、企業アカウントなどビジネス利用のための受け皿となる商用サーバーなど、サーバーの運営形態も多種多様に開拓される必要がある。
SNSのシステムとしても、現在は使いやすいMastodonが人気ではあるが、今後の展望としては必ずしもMastodonだけで実現される必要はなく、それらに適した新しいSNSが産み出されてもよい。新たなSNSも、標準プロトコルであるActivityPubプロトコルに対応すればFediverseに参加できる。
例えばMastodonを使うと決めたとしても、そのサーバーは既に無数にある。それら既にあるサーバーを使わせてもらってもよいし、自分でサーバーを用意して運用することもできる。
ユーザーは何ヶ所のサーバーに登録しても良く、用途に応じて分けることができる。専用クライアントソフトでは複数のアカウントを管理できるものが一般的なため、必要なだけアカウントを作って適当に使って安住のサーバーを選ぶのが現実的である。ただあまりアカウントを増やさずやりたいという場合は、どこか一つないし少数に絞る必要が出てくる。
日本での主流サーバーは数ヶ所で、それ以外は過疎である。ただ考える必要があるのは、人が多く賑やだからといって自分の趣味趣向に合う人が多いとも限らないこと。人は少ないが他の小規模な専門サーバーの方が趣味に合う人が多く話が弾む可能性もある。どのサーバーを使うか決めるためにサーバーを渡り歩くのも、一種の旅行感覚で楽しみとなるかもしれない(し、ならないかもしれない)。そしてサーバーによって住人は違うので、最終的には自分の肌にあったところを使うことになるのだろう。
Mastodonの誕生で火が付いたFediverseの世界には、これまで幾度もブームが訪れるが、そのブームはすぐに引いてアカウントを作った人の多くはすぐに来なくなっている。しかし全員がいなくなったわけではない。
実際、Twitterで騒動が起こるたびに人口の移住が発生している。日本国内ではあまり大きな動きがないため日本では実感が湧かないかもしれないが、2022(令和4)年5月〜12月頃に発生したイーロン・マスク騒動の前で概ね2万人程度で推移していた公式mastodon.social(使用言語は主に英語)の週間アクティブユーザー数(MAU)は、比較的落ち着いた12月中旬頃でも3万6000人程度で推移している。なおピーク時で6万人に達していた。公式mastodon.socialは利用者が増えすぎたのでもう一つ作られた新公式mastodon.onlineも5000人ほど増えて維持されている。今後暫くすれば減っていく可能性はあるが、それでもかなりの数が残るだろうと思われる。またここから減ったからとっいて、必ずしもMastodonをやめたわけではなく、実際は他のより自分向きのサーバーを見つけて移住している可能性もある。
企業が他人(それも個人運営)のサーバーを借りて使うことは珍しくはないが、自社で専用のサーバーを開設することも可能である。メンテナンスするスキルがないならMastodonサーバーのレンタルなどもある。
政治家なども同様だが、政治関係は反発を受けるとサーバーの管理人に迷惑が及ぶため、政治に関する人はやはり自前(政党ごと又は政党の支部ごと等)でサーバーを用意するのが望ましいだろう。
大勢が利用する情報配信用アカウントを運用するのであれば、専用サーバーを用意することが望ましい。例えば「特務機関NERV」のように専用サーバーを用意し、目的に応じアカウントを細かく分け、必要な情報を得られる用意するような事例がある。
政府機関なども、他人(それも民間)のサーバーを借りるより、自主的に専用のサーバーを用意するのが理想的であり、そういうことができる仕組みなのがMastodonである。実際、EUはEUのMastodonサーバー EU Voice やPeerTubeサーバー EU Video が開設されるなどしている。これを著している時点で政府機関のMastodonサーバーは珍しいが、それ自体は驚くことではない。EUはこれまでもプライバシー問題、コンテンツモデレーション問題などでたびたびアメリカのビッグテックと対立してきたこともあり、それら問題でEUが納得するプラットフォームが実験されてゆくのだと思われる。
分散SNSには賛否両論があり、万人を満足させるものではない。
大前提として「分散型SNS」という仕組み上、Fediverseは絶対に一極集中であるTwitterにはなれない。TwitterでないものにTwitterを求めても得られるわけがないことは明確な事実である。また分散型であるので、それぞれのサーバーにそれぞれ個別の管理者がいることを理解しておく必要もある。さもないとTwitterのように通報しつづけた末に鯖缶(サーバー管理人をこういう)から「ここはTwitterじゃねぇ」と怒られることになる。
Twitter独占を嫌う層は一定数あるが、「人のいないSNS」ほど無価値なものもない。分散化は一社が独占しようとする力に対して非常に強いが、しかし分散化によって一箇所ごとの人は必然的に少なくなる。そういったSNSを作るメリットを疑問視する声がある。
それは開発者も、開拓移民となった初期からの利用者(イノベーターやアーリーアダプター)は一番よく分かっていたことで、しかし彼らは開拓移民としてFediverseという世界を構築し始めた。特に日本では新しい物好きとエンジニアを中心としてMastodonは使われ始め、魅力あるユーザー(アルファ)も増えてきている。こうして、mstdn.jpなど幾つかの利用者の多いサーバーでは日常会話も活発化、他の零細サーバーも安住の地として機能しだし、Fediverseは「住みか」として充分な機能を有するに至っている。
従来ユーザーは、最も有名で、人気があり、人の多いサービスを選択することが良い選択であると考えてきた。
その結果が、かつてのmixiでありTwitterであったわけだが、そのTwitterは大赤字の末、イーロン・マスクによってTwitterが買収されて以降は選択肢の中でも特に悪い決断の連続によって更に赤字を増やし続け、滅びへの道を邁進することになった。
なぜならサーバーというものは、ユーザーが多ければ多いほど維持に多くの努力と費用がかかるからである。Twitterの場合はその費用を広告費によって賄うビジネスモデルの構築を試みたのだが、結果としてそれは失敗した。一極集中はいずれ限界が来るのである。
一極集中は便利ではあるが、Twitter程にまでサービスが大きくなりすぎる様々な弊害を生み、そしてかかる費用がペイできないことも証明されてしまった。このような大規模サービスの問題を解決するため、機能は小さく分割し、小さく管理することが、MastodonなどFediverseが出した回答である。
MastodonなどFediverseにも人気サーバーというものはあり、膨大なユーザー数を抱えるため大規模サーバーと呼ばれている。Fediverseでもサーバー負荷と費用は同様だが、しかしオープンソースのフリーソフトで構築されるFediverseの場合、費用が掛かるにもかかわらずお金が儲かる仕組みにはなっていない。大規模になるとAWSとCDNのコストだけで月額数万ドルもの費用がかかるが、Fediverseの各サーバーはサーバー管理者の努力と私財、および利用者などからの寄付金によって賄われている。
こういった理由により、Fediverseでは必ずしもその人気サーバーを利用する選択が正しいとは限らない。むしろ大規模サーバーは避けて、中規模サーバー、またはより小規模なサーバー、場合によっては自分だけのサーバー(お一人様サーバー)を選択する方が良いケースも多々ある。
Fediverseが今後一定の勢力を有するのか、あるいは静かに消えていくのかは今はまだ分からないが、一極集中が破綻すれば他を選択するしかなく、その有力選択肢がFediverseしかないのであれば人々はFediverseを使うことになるだろうと思われる。
かくして、開拓民によって猛烈な速度で開拓が進められていること、そしてWebブラウザー開発のVivaldi Technologies社によるVivaldi Socialを開始、またFirefox開発のMozillaも「2023(令和5)年初頭に健全なSNSのテストを始める」としてMastodonをテストを開始するなどしており、順調にアーリーアダプターが増え続ければいずれキャズム越えを達成することも期待できる。
対するTwitterの場合、多機能ではあるが規模が大きすぎ、互いの顔が見えないため共同体としても機能しないにも関わらず相容れない同士の口論が絶えないなど混沌とした空間になっている。Fediverseのように機能とサービスが目的ごとに分散され、必要に応じて交流できても普段は相容れない同士が近づかずに済む仕組みがあれば、「棲み分け」によって相容れない同士の口論は総量として減らせることが期待できる。
Fediverseは本来のインターネットの目的である分散とゆるい結合を今あらためて実現する仕組みであるとも言え、ネット初期のような良い意味での共同性を実現しうる仕組みである。
Fediverseの反義語は、定義はないがその考えに照らせば中央集権・一極集中の大手ネットサービスであることは自明である。マイクロブログであればTwitter、動画共有であればYouTubeといったものが該当する。
Twitterの場合は、Twitter社のサーバーで全てをやりとりする。言い換えれば、Twitter社のサーバーにアクセスしなければ、そのユーザーと話すことすらできない。外部からTwitterユーザーにメッセージを送ることも、Twitter内から外部サービスにメッセージを送ることもできない。つまりTwitterのユーザーはTwitter内に閉じ込められている。
YouTubeなども同様だが、こういったサービスは自社のサービスにできるだけ多くの人を集めて、どれだけ人気のある場所を作るかということが勝負どころとなっている。そしてそこに広告を載せ、どれだけたくさんの人に広告を見せられるかが収益に直結している。人がたくさんいれば更に人が集まる。他のサービスより自社のサービスが選ばせるために、様々な方法で利用者の囲い込みをする。
しかしながら、このことによって巨大で、その場所以外に選択肢がなくなることで回避できない問題が多数発生するようになった。こういった問題をベンダーロックインという。
ベンダーロックイン問題を解決するため、サービスはたくさんの小さなサーバーに分割し各々が充分に管理しやすい状態とした上で、それぞれを互いに繋げて巨大なサービスと同等の機能性を実現する。そういった仕組みがFediverseというアプローチである。こういったアプローチをエコシステムという。
Fediverseの考えに照らせば、企業なら各社ごと、省庁なら各省庁ごと、政治家なら各人または各政党ごと、優れた技術者やサーバー運用できる人ならその個人ごとにそれぞれサーバーを用意し、そのサーバーはサーバー管理者の考えに基づいて自治・運用し、そこにユーザー登録されたアカウントから情報を発信しつつ、それぞれのサーバーをインターネットで繋いで(電子メールがそうであるように)異なるサービス間でも相互に交信できればよい。
しかもFediverseは分散システムなのでサーバーは一極集中のTwitterのような大規模なものは必要なく、その利用者の数に応じた小規模なもので充分であり、このため運用費用もそれほど高額になることはない。趣味人の中には、自宅にRaspberry Piなどの超小型コンピューターを置いてお一人様Mastodonサーバーを運用する人もいる。この場合、最大の敵は電気代の値上がりである。
また情報は、分散されることによって一極集中の弊害をなくすことができ、なおかつ検閲にも強くなる。
こうした場合、サーバーの運用はそのサーバーを管理する人の意向とその国の法律に従う。TwitterやYouTubeその他大手サイトのように、得体の知れない運用会社の方針や他国のルールに合わせる必要はなくなる。
結果として、自由に、そして情報発信したい人の考えが検閲されることなく、全世界にそれを発信したり全世界から受信したりできる。
Fediverseの本質は、「サーバー毎の自治」と「通信プロトコルの共有」である。
(その国の法律の範囲内で)ルールを決定して自治するのはサーバー管理者の権利であり、それ以外の(時に意見を異にする)サーバーと共通のプロトコルで連合することで、各々は孤立することなく互いの交信を可能とする、まさにインターネットとしてあるべき姿である。
つまり「分散」であり、「中央集権」や「一極集中」と全く逆の考え方である。どこか一箇所に「Fediverse」と呼ばれる場所があり、そこにサーバーが集っているような脳内イメージがもしあるのであれば、それは今すぐ捨て去るべき勘違いである。
もともとインターネットとは、世界中に散らばっているコンピューターを線で結び互いに交信可能としたものである。同様のコンセプトをSNSなどのサービスに導入することはインターネットとして自然なことで、むしろ中央集権な一極集中サービスはインターネットの世界ではいびつな存在であるとも言える。
Fediverseが優れている点は、「SNS向きではない人」にも選択肢があることである。
人との付き合いが苦手・嫌いな人でも「お一人様」ないし「零細規模サーバー」から発信するという選択肢を選ぶことができ、古くはブログや匿名掲示板、あるいは「チラシの裏」に書き捨てていたような話を緩く世界に発信することを可能とするのである。
サーバーが分散されており、互いに積極的な繋がりを持たない。異なるサーバー間でフォロイー・フォロワーの関係が結ばれた場合にのみ、そのホームタイムライン情報が別サーバーに送信され、投稿(トゥート)が複数のサーバーへと広まっていく。これが基本的な仕組みである。
このため、Fediverse全体のトゥートが一箇所に集まるわけではなく、またそのようなことを実現することも不可能である。
「分散型」であるがゆえに、そういったことを実現することは難しい。従ってFediverse全体の投稿を検索することも不可能である。
各サーバーごとにそれぞれのルールで運営されたものが緩く繋がるのがFediverseであるので、Twitterなどビッグテックによる「中央集権」や「一極集中」でできることはできない。
これは全く無縁の人に過去の投稿を探られてある日突然炎上する、というような事件は原理的に起こりにくいことを意味しており、互いに相容れないであろう住民層の間で衝突が起こる可能性が低い=住み分けが実現される、ことを意味する。これを欠点や弱点と見るか、むしろ利点と見るかは考え方次第ではある。
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