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アメリカの宇宙探査機で、木星探査機。
地球との交信は衛星通信バンドのうちSバンドが使われ、地球→探査機は2110MHz、探査機→地球は2292MHzだった。出力は8Wである。
機体背後に直径9フィート(3m)、深さ18インチ(45.72cm)の高利得パラボラアンテナが取り付けられている。また探査機本体内には中利得アンテナと全方位の低利得アンテナが取り付けられている。
本体内にはプラズマ検出器、紫外線計、赤外線放射計、宇宙線計、荷電粒子計、結像偏光計、ガイガー計数管、小惑星・小隕石探知センサーなどの科学機器に加え、深宇宙飛行の灯台となる恒星カノープスを捉える星感知器と、2基の太陽センサーが収められている。
これらの電子装置は4つのSNAP-19原子力電池(RTG)によって運用された。
この探査機は太陽系外に脱出する事が前提となっていたため、探査機本体には9インチ(22.86cm)×6インチ(15.24cm)の金メッキされたアルミニウム板がボルトにより固定された。
これには人間の男女の裸姿、および銀河系内における太陽と地球の位置などが刻み込まれている。これは地球外知的生命体に遭遇した際の人類からのメッセージである。
交信が途絶えたパイオニア10号は今も、飛行を続けている。
パイオニア10号は、パイオニア11号、あとのボイジャー1号/ボイジャー2号とは正反対の方向に飛行しており、地球から約68光年離れた恒星、アルデバランへと向かっている。到着は、今から約200万年後の見込みである。
またその途中、30万年後には地球から約10光年離れた恒星、ロス248(アンドロメダ座HH星)を通過する。但しこの恒星は太陽の17%の大きさしかない小さな星で、生命を宿す惑星は無いものと予想されている。
いずれにしても、仮に地球以外に知的生命体がいたとしても、広い宇宙で、パイオニア10号と出会う可能性は極めて低い。それでもある文明に出会い、人類からのメッセージと共に彼らに受け取られ、そしてどこかの星のどこかの博物館に収められたなら、その時こそパイオニア10号の旅は終わり、全任務を完遂したことになるのである。
その時には恐らく、人類はもう地球にはいないだろう。だからこそパイオニアのパネルには、人類の姿が描かれているのである。
1973(昭和48)年12月3日、木星に約2.8木星半径(約20万km(約200Mm))の距離を近接通過した。
その前後の期間に木星のオーロラ、木星の電波、木星の大気、木星の衛星の写真撮影(特にイオ)を始めとした史上初の木星探査に加え、木星重力を利用したスイングバイ航法で、太陽系を離脱できる45.64km/s(39.4km/cBeat)に速度を高めることに成功した。
こうして太陽風や宇宙線、ヘリオスフィアの変遷領域など、多くの実験により科学的成果を残した。
そして1983(昭和58)年2月に海王星・冥王星軌道を超え、惑星軌道空間を離脱した。
公式の観測は1997(平成9)年3月31日で終了している。
なお、カリフォルニア州モフェット・フィールドにあるNASAエイムズ研究センターなどでは公式観測終了後も断続的に信号を受信していた。
1997(平成9)年1月1日には地球から67auの距離に達し、2.6au/年の速度で遠ざかっていた。
2000(平成12)年初頭には地球から111.8億kmの距離にあり11.24km/s(9.7km/cBeat)の速度で遠ざかっていた。
2002(平成14)年3月には地球から119.4億kmの距離に達した。この時点でも、同機から発信される電波は微弱ではあるが受信可能で、受信信号はカオス理論によって解析された。
幾度か通信の断続があったが、地球から約81.6au、光速で11時間20分の距離に達した2003(平成15)年1月22日を最後に、交信は遂に完全に途絶えてしまった。
設計寿命は2年だったが、都合30年間も働き続け、信号を送り続けた。交信はできなくなってもアルデバランへ向かう旅が終わるわけではない。今後は、静かに、しかし黙々と孤独な旅を続けることになるだろう。
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