キログラム

読み:キログラム
外語:kg: kilogram 英語 , 千克 支那語(大陸・台湾) , 公斤 支那語(大陸・台湾) , kilogram/o エスペラント
品詞:名詞,単位助数詞

国際単位系、およびかつてのcgs単位系MKS単位系MKSA単位系における、質量および重量の単位。省略形および単位はkg。1kgは1000g(グラム)である。

目次

国際単位系では、質量の単位の基準はグラムではなく、その1000倍のキログラムである。

「キログラム」の定義は、元々は「1リットルの質量」だった。しかし水の質量は温度変化することが分かり、定義は国際キログラム原器の質量を経て、現在はプランク定数を正確に定義することによって定義されている。

また、日本では「瓩」とも書くが、これは国字である。

定義

プランク定数を正確に6.62607015×10−34J·sと定義することで定まる質量。

求め方

が持つエネルギーE、光の振動数をν、プランク定数をhとするとE=hνの式が成り立ち、特殊相対性理論と合わせると、エネルギーは次のように定義できる。

E=mc2=hν

ここから、質量mに等価なエネルギーをもった光子の周波数は、次のように導ける。

ν=mc2/h

ここで、各定数は次の通りである。

  • c(光速度)は定数で、299792458[m/s]
  • h(プランク定数)は定数で、6.62607015×10−34J·s

この定数を代入し、かつ質量mを1kgとすると、次の式が得られる。

ν=(299792458)2/(6.62607015×10−34)

ν={(299792458)2/6.62607015}×1034

こうして1kgの時の光の振動数νが得られたため、換言すると、「1kgは{(299792458)2/6.62607015}×1034Hzの光子のエネルギーと等価な質量である」のように定義することが可能となった。

かつての定義

①水

「キログラム」の定義は、元々は「1リットルの質量」だった。

しかし水の質量は温度変化することが分かり、後に最大密度となる4℃での質量となった。しかし、密度は気圧でも変化するため、定義が見直されることになった。

②国際キログラム原器

定義は原器

キログラムを定める「原器」が作られ、この質量が「キログラム」の定義となった。

キログラムは国際単位系においては質量の基本単位であるが、その量は国際キログラム原器の質量に委ねられることになった。

これは白金イリジウム合金製の分銅という人工物であり、この質量が基準となっている。1889(明治22)年に開催された第1回国際度量衡総会において、「キログラムは、質量の単位であって、それは国際キログラム原器の質量に等しい」と定義されたことにちなんでいる。国際キログラム原器は現在フランスの国際度量衡局(BIPM)に保管されており、複数のキログラム原器のレプリカが世界各国に配られている。

日本の原器

本邦が持つレプリカは1890(明治23)年に日本に配布された「日本国キログラム原器」である。これは国際キログラム原器と同時に作られた40個の複製の一つで、そのうち「No.6」が該当する。

また「No.30」「No.39」も副原器として日本に渡されたが、このうち「No.39」は南鮮に譲渡された。更に後、実験原器「No.E59」が新造され、結果、日本には「No.6」「No.30」「No.E59」の三つが現存する。現在、三つ全て、独立行政法人産業技術総合研究所 計量標準総合センター(NMIJ)にて厳重に保管・管理されている。

再定義の検討

従来の問題点

周波数、時間などといった様々なSI単位、物理量の単位は、恒久不変と考えられる自然現象や物理法則を用いて定義できるようになった。かつては原器だった「長さ」も光の波長に関連付けられたことで、質量だけが合金製の分銅という人工物に頼る唯一のSI基本単位となった。そして、この物理的なモデルによる定義には様々な問題があった。

物質である以上は空気中の不純物が堆積し、徐々に質量が増すと考えられる。原器の質量は徐々に増しており、その量は一説では年に1µgとされている。このため洗浄が行なわれることもあるが、この際、質量は十µg単位で軽くなる。また、2007(平成19)年には質量が突如50µgも軽くなったことも判明、しかも原因が不明とされた。

取り扱いにミスが無かったとしても、自然災害等で原器が破壊される可能性が存在するほか、変動してしまうものを基準とするために精度にも難が存在していた。

この解決のため何らかの普遍的な定義が必要だということはかなり以前から言われており、長く研究や議論が進められた。様々なアイディアが提案され、プランク定数やアボガドロ定数の測定精度向上に伴って、この基礎物理定数からキログラムを再定義することが期待できるようになった。

プランク定数

プランク定数に基づく定義では、ある周波数の一定数の光子が1kgである、と定義されることになる。

次に述べるアボガドロ定数と比して直感的でないため人気がなかったが、相対性理論が前提となっているため一部に熱烈な支持が存在し、最終的にこちらが正式に採用された。

アボガドロ定数

アボガドロ定数に基づく定義では、1kgは、ある元素の一定数の原子と定義されることになる。

有力候補の一つながら採用されなかったが、例えば「1kgは5.018…×1025個の炭素原子12Cの質量に等しい」のような定義となりうる。5.018…×1025は、アボガドロ定数を1000/12して求めることができる。

以前はアボガドロ定数自体の精度が悪く、小数点以下8桁の精度を持つキログラム原器には及ばなかった。これも、現在ではかなり精度が高まり、原器と交換可能な精度にはなっている。

国際度量衡総会において議論されているキログラム再定義では、シリコン結晶から得られたアボガドロ定数と、ジョセフソン効果や量子ホール効果に基づく電気標準から得れたプランク定数を介して導かれたアボガドロ定数とが比較されている。

2011(平成23)年10月の国際度量衡総会で出されたアボガドロ国際プロジェクトによる測定値は、英国物理研究所(NPL)およびスイス連邦計量研究所(METAS)が得たデータとは誤差の範囲で一致したが、ワットバランス法によって決定された最も精度の良いデータであるNISTのデータとは一致せず7桁目で異なっていた。このため、この時にはキログラム再定義が実施されなかった。今後、X線結晶密度法とワットバランス法の不一致の原因究明などで国際研究協力が実施される予定された。

プランク定数を採用

2018(平成30)年11月16日、フランスのベルサイユ国際会議場で開催された第26回国際度量衡総会において、キログラムを含む基本4単位の定義改定が審議され、新定義が採択された。

キログラムについては、プランク定数を正確に6.62607015×10−34J·sと定義することによって定められ、これによって全ての計量単位は原器という器物から解放された。新定義は、次の世界計量記念日である2019(令和元)年5月20日から適用されることも決議された。

定義変更の影響

新定義でも現在の1kgと同じ値になるよう定義は設定されるので、値そのものに大きな影響はなく、日常にも影響はないが、キログラムの定義が変更されると定義にキログラムを用いている様々なSI単位の定義に影響が及ぶ。

組立単位でキログラムを定義に用いているものは多く(ニュートンパスカルジュールワットボルトファラッド、オーム、ジーメンス、ウェーバーテスラ、ヘンリー)、これらは定義に直接の影響を受ける。

加えて、基本単位も、電流アンペアはニュートンを定義に使い、熱力学温度のケルビンは基準となる三重点の定義に圧力のパスカルが存在しており、そして物質量モルは、そのままグラムの定義変化に応じた影響を受けることになる。

この基本単位の定義変更に伴い、基本単位を定義に用いている組立単位(クーロン、カタール)も影響を受けるため、影響範囲は大きい。

用語の所属
KG
関連する用語
グラム
キロ

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