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Ⅰ型超新星のうち、珪素(Si=シリコン)の吸収線が特徴的なもの。
数ある超新星の中でも、Ⅰa型超新星は特異な性質を持っているため注目を集めている。
他の型の超新星は、「星が活発に生まれる場所」つまり渦巻銀河や棒渦巻銀河の円盤部分(腕部分)にしか出現しない。ところが、Ⅰa型超新星は星が生まれていないはずの古い銀河である楕円銀河にも出現する。
加えて、Ⅰa型超新星は他の型の超新星よりも明るく、そして光度変化が早く、そして最も重要な点として「最も明るいときの光度(絶対等級)がほぼ均一」、といった特徴がある。
Ⅰa型超新星の絶対等級はほぼ−19.3等(太陽光度の約50億倍)で、殆ど誤差がない。
ここから、Ⅰa型超新星が暗く見えれば遠く、明るく見えれば近いということになり、その明るさから超新星の距離、延いては所属する銀河の距離がかなり正確に求められることになる。
Ⅰa型超新星は膨大な量が発見されているが、その中でも特に論文の中に見られるなど注目されることがあるものに、次のようなものがある。()で併記するのは所属する銀河等の名称。
Ⅰa型超新星も、更に細かく分類があり、例えば次のように分けられる。
星のデータベースSIMBADではⅠa-91tやⅠa-91bgといった分類は使わず、Ⅰa-pec(表記上は SNIapec または SNIap)としているようである。またⅠa-normは単に SNIa と表記している。
降着説では、徐々に質量が降着し、やがてチャンドラセカール限界に到達することになる。しかし実際には、対流などによってチャンドラセカール限界寸前で踏みとどまり、降着では限界を超えることはないとする説がある。
しかし爆発寸前の状態でやがて核融合が始まり、すなわち白色矮星は恒星に変化する。ただし、核融合の燃焼過程を制御する能力を持たないため、核融合は暴走しやすいとされている。
その中で太陽質量の数倍はないと生じないとされる核融合反応炭素燃焼過程が生じるとされ、やがて大質量星でしか起こりえない酸素燃焼過程までが生じるとされる。核融合で白色矮星の主成分である炭素と酸素が消費され、酸素燃焼過程では珪素までが元素合成される。
この珪素の存在が、Ⅰa型超新星のスペクトル線の特徴である珪素の吸収線の由来になると見込まれている。
超新星爆発時に起こる核融合反応で重元素が合成されるが、元となる中性子星が主に炭素12と酸素16で構成されているため、爆発時に合成される重元素も陽子と中性子が同数になりやすい。
中でも多く作られるのがニッケル56(56Ni)である(陽子数=中性子数=28)。この同位体は不安定なのでβ+崩壊で56Ni→56Co→56Feという崩壊経路を経て、半減期約3ヶ月で鉄56に変わる。この反応により、Ⅰa型超新星からは大量の鉄が供給される。
ただし、親星の質量がチャンドラセカール限界に近い場合などでは中性子捕獲の反応が生じ、ニッケル56からニッケル57を経てニッケル58(58Ni)が作られる。ニッケル58は安定核種であるため、これは爆発後にもそのまま残る。同様の理由により、核融合反応で生じるものは不安定な核種ながら中性子捕獲で安定核種となったマンガン(Mn)やクロム(Cr)といった物質もみられる。従って、これらの元素を多く含むⅠa型超新星は、親星がチャンドラセカール限界に達したことの証明となる。
2014(平成26)年におおぐま座の銀河M82に出現したⅠa型超新星(核暴走型)のSN 2014Jのγ線観測により、爆発の仕組みが明らかになってきた。
Ia型超新星爆発の際には、おそらく珪素燃焼過程においてニッケル56が作られるが、従来理論では白色矮星の中心より核反応が始まるため、このニッケル56由来のγ線は数ヶ月間は周囲の物質に隠されて見えないとされてきた。
しかしSN 2014Jの場合、爆発から約18日の段階でニッケル56の崩壊にともなうγ線が検出され、従来説が誤りであることが判明した。
まだSN 2014Jでしか観測できていないため他のⅠa型超新星がどうかは不明な状態だが、他も同様であるなら、核反応は白色矮星の表面付近で生じ、このときにニッケル56が作られる。さらに表面の核反応は白色矮星の中心部にまで伝わり、結果として星全体が吹き飛ぶ超新星爆発に至るという新理論が導かれる。ニッケル56は表面にあるため、これが比較的早期に観測されたということになる。
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