地球シミュレータ (第2世代)

読み:ちきゅうシミュレータ
外語:the earth simulator 英語
品詞:商品名

二代目の地球シミュレータで、並列ベクトル演算機(スーパーコンピューター)。2002(平成14)年3月11日に運用が開始された。

目次

気象変化のシミュレートなどを目的に、海洋科学技術センター(JAMSTEC)と日本電気(NEC)が神奈川県横浜市金沢区の海洋科学技術センター横浜研究所内のシミュレータ棟に建設したスーパーコンピューターである。

初代の後継機として2009(平成21)年2月に完成し、2009(平成21)年2月26日に公開、3月1日より運用を開始した。工費と6年間のリース料は合わせて約189億円とされる。

基本情報

  • 開発年: 2009(平成21)年
  • メーカー: NEC
  • プロセッサー数: 1,280
  • 性能(公称)
    • 計算プロセッサーのピーク性能: 102.4GFLOPS (8プロセッサー/ノード)
    • 計算ノードのピーク性能: 819.2GFLOPS (×160ノード/システム)
    • ピーク性能: 131TFLOPS

ハードウェア

倍率は、ES(1)比。

  • CPU
    • クロック: 3.2GHz (×3.2)
    • ベクトル性能: 102.4GFLOPS (×12.8)
  • ノード
    • CPU数: 8 (×1)
    • ベクトル性能: 819.2GFLOPS (×12.8)
    • 共有メモリー容量: 128Giバイト (×8)
    • ノード間転送性能: 8GB/s×8×2 (×5.2)
  • システム
    • ノード数: 160 (×1/4)
    • 演算性能: 131,072GFLOPS (×3.2)
    • メモリー容量: 20Tiバイト (×2)

各ノードは2段Fat-treeパケット交換方式のネットワークで結合され、分散メモリー型並列計算機となる。

性能

ES2は、NECのSX-9をベースとして開発された。

実測LINPACKベンチマーク性能はRmaxが122.40、Rpeakが131.07であるが、登場から1年半経っていることもあり、単純な計算力を競う2010(平成22)年11月発表の第36回TOP500では世界54位の性能にしかならなかった。

TOP500では分からない、複雑な計算の計算速度、要するに実運用時の速度を競う国際ランキング「HPCチャレンジアワード」で、2010(平成22)年11月、Global FFT(高速フーリエ変換)指標において11.876TFLOPSを達成し、世界第1位となった。

前年度は、全4部門のうち、EP STREAM(Triad) per system(多重負荷時のメモリアクセス速度)とGlobal FFTにおいて世界3位に入賞していた。

LINPACKのピーク性能と比較すれば効率10%程度ということになる。FFT計算はメモリーとネットワークに高負荷をかけ様々なボトルネックの影響を受けるので当然の結果ではあるが、それでも効率1%程度であることがざらにある中で効率10%もあるES2は、恐ろしく高い性能を持ったコンピューターだということができる。

CPU

採用されたSX-9のCPUは、先代ESで用いられたスカラープロセッサーやベクトルプロセッサーを1チップに統合したものとされている。

次の部分から構成され、一つのLSI上に実装されている。

  • ベクトル処理部(VU: Vector Unit)
  • スカラー処理部(SU: Scalar Unit)
  • I/Oコントロールユニット(I/O control Unit)
  • ノード間制御ユニット(Inter-node control unit)
  • アドレス制御部(ACU: Address Control Unit)

VUは、6種類(加算×2、乗算×2、除算、論理、ビット列論理、ロード/ストア)のベクトル演算器と72個のベクトルレジスターからなるベクトル演算器セット8個で構成されており、最大102.4GFLOPSの性能を有する。

CPU LSIの仕様は、次の通りである。

  • 65nm CMOS テクノロジ
  • 11層 銅配線
  • 350Mトランジスタ
  • 21.04mm×19.84mm
  • 1791信号(8960ピン)
  • 消費電力240W(最大)
  • クロック周波数3.2GHz

OS環境

OSには、ESと同様にNEC製のベクトルスパコンSXシリーズ用に開発されたUNIXベースのOS「SUPER-UX」を、超大規模システム向けに強化・拡張したものを使用。

プログラム開発環境とし、自動ベクトル化・自動並列化を行なうFortran 90、C/C++コンパイラーなどが利用できる。

ファイルシステムには、分散コンピューティング環境でも高速なI/Oを行なうGFS(Global File System)が採用された。

地球シミュレータ2専用の建物は、フロア面積がテニスコート4面分とされている。免震構造で地震に強く作られており、また外部からのノイズを避けるため、の影響を防ぐ機構や樹脂製の壁の使用、蛍光灯ではノイズが発生するので特殊な照明を用いたり等をしているとされる。携帯電話機はじめ、電波を発する機器は持ち込み禁止となっている。

建物は3階構造で、1階は地球シミュレータを冷やす空調装置、2階は地球シミュレータをつなぐケーブル、3階に本体である地球シミュレータが置かれている。空調は、14万m3/h×24台(うち2台予備機)で、このために非常に大きな騒音があり、室内での会話は不可能となっている。

水冷等ではなく空冷にしたのは、信頼性などのためと見られる。

前と比較して、ノードあたりの性能が増えたこともあり、1/3の設置面積でスピードが3倍になった。

光ファイバーの配線も、長さが前の2400kmから220kmに短縮された。

一般でも有償で利用できる。費用はノード数と利用時間の積で決まり、1ノード1時間あたり3947円とされる。

事前評価(Trial Use)制度もあり、機構と共同実施という条件で、予定ノード数・時間の10%が限度ながら無料で利用できる。

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