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生きている健康な人の肝臓の一部を摘出し、重篤な肝臓病の人に移植する臓器移植。
提供者(ドナー)の条件としては、血液型と肝臓の大きさが受給者(レシピエント)と合致する家族がいることが最低限必要である。
概ね、次のような条件を満たせば、提供者(ドナー)となることができる。
臓器を切り取って提供することになるので、当然だがその身体へのダメージは甚大であり、提供者(ドナー)の安全の100%は保証されない。最悪死ぬこともある。これを著している時点で、日本で7000例以上の移植手術が行なわれているが、うち1例でドナーの死亡が報告されているという(0.014%)。それでも本人が提供を強く希望する場合は、人生で一回だけ、提供者(ドナー)となることができる。
まず外来での問診および血液検査、そしてCTなどにより肝臓の画像検査を実施する。
画像検査によって肝臓の大きさを測定し、どの部位を切り取り提供するかを検討することになる。
ドナーの入院期間は、手術の数日前から、術後は、合併症がなければ手術後2週間程度である。
小児への移植の場合は、肝臓のうち小さい側である左葉(肝臓全体の30〜40%程度)を提供する。
成人への移植の場合、左葉(全体の30〜40%程度)あるいは右葉(全体の60〜70%)を提供することになるが、通常は全体の2/3程度を提供することになり、ドナーの体内には1/3が残る。
また、多くの場合、肝臓だけでなく胆嚢も摘出する。
肝臓は再生能力が非常に強い臓器である。
大きさだけで言えば、残った肝臓は1ヶ月でほぼ倍になり、ほぼ半年で元の90%程度まで再生される。ただし100%の再生はなく、また元の形に戻るわけではなく残った形のまま大きくなる。
肝臓は元々余力(予備能)の大きい臓器であり、日常は最大能力の30%〜40%程度しか使っていないことから、元の90%でも機能的には十分な再生であると考えられる。
手術室には、ドナーもレシピエントも同じ頃に入る。全身麻酔には1時間程度掛かり、肝臓を切り出す手術時間は約5〜8時間である。
健康である身体に本来なら不要なはずのメスを入れることになること、率は少ないとはいえ命に関わる合併症が起こりうることから、ドナー側はより熟練した肝臓外科医によって執刀されることが多いらしい(病院による)。
出血量は概ね200〜500ml程度であるため輸血は原則として不要である。病院次第だが、万一の出血時に備えて術前に2回程度に分けて自分の血液を計400ml程度貯めておく(自己血貯血)ことがある。
麻酔は全身麻酔となる。また痛みを軽減するためあらかじめ背中から硬膜外麻酔のチューブを留置しておき、術後の鎮痛に用いる。このチューブは術後、2〜3日後に抜去する。
術後は麻酔から半分目覚めた状態で一旦集中治療室(ICU)に戻り、その後病棟へと戻る。その後の一般的な術後経過は次のようになる。
術後3ヶ月は創部の治癒が完全ではないことや、腹の筋肉を縫っているということから、重いものを持ったり、激しい運動をしたりするのは避ける。創部が充分治癒した後は、手術前と同じ生活や運動が可能になる。また飲食についても、この間は残存する肝臓の能力がギリギリであることから、飲酒を控えるなどの節制が必要である。
患者の状態にもよるが、一般的には手術の2週間前に入院し、検査と、移植に備えての治療と準備が行なわれる。
手術室には、ドナーもレシピエントも同じ頃に入る。全身麻酔についてはドナーより時間がかかり、1時間半から2時間程度を要する。移植に要する時間は8時間から24時間程度である。
ドナーから肝臓を切除している間にレシピエントの痛んだ肝臓を全て取り出し、その後ドナーから切除された肝臓を移植する。この肝臓に血管が縫合され血流を再開すると肝臓は機能を開始する。
次に肝臓の胆管とレシピエントの腸管または胆管を縫合し、完了次第、腹の創を閉じ、移植は完了する。
術後は麻酔がかかった状態で、集中治療室(ICU)に帰る。従って、手術当日は全く意識はない。
半日から1日程度で麻酔から覚め、病状が安定してから(概ね5〜7日後)、ICUを出て一般病棟の観察室へと戻る。以降はレシピエントの回復に応じて、移植後2〜3週間で個室に移り、問題がなければ移植後約3ヶ月で退院となる。
もし合併症が起きたり、肝臓の機能が悪くなったりした場合は、入院期間が長くなる。
退院後も、毎週、手術した病院かまたは近くの病院に通院し、血液検査などで経過観察が必要である。安定後は検査の間隔を延ばし、最終的には月1回程度の通院となる。
臓器移植は根治療法ではないため、手術終了と成功が治療の終わりなわけではない。
移植された肝臓は本人の肝臓ではなく、免疫にとっては異物でしかないため、拒絶反応が必ず発生する。そのため拒絶反応を軽くするために移植後すぐに数種類の免疫抑制剤の投与が開始される。
免疫反応は3週間前後までがピークで要注意期間となり、この間はICUや観察室などウイルスや細菌を避けた環境で充分な量の免疫抑制剤を用いて拒絶反応を抑える。このピーク期間を過ぎると、免疫反応は徐々に落ち着くため免疫抑制剤の種類や量は徐々に減らすことが可能で、最終的には副作用も問題にならない程度にまで減量することができるようになるが、それでも原則として一生服用し続ける必要がある。
従って、移植とは新たな治療の始まりであるとも言える。
生体肝移植の5年生存率(=成功率)は、成人の場合で約70〜80%、小児の場合で約80〜85%とされている。
この成績は、脳死移植での全肝移植と比べても遜色はない。
10年生存率も成人の場合で約60〜70%程度、20年生存率でも50%超とされており、感染症などの合併症に注意すれば、寿命を全うすることも可能である。
臓器移植の最大の問題となるのは、感染症と拒絶反応である。
肝移植後の1年生存率は全国平均で8割、つまり死亡率は2割であるが、その死因の6割以上は敗血症や肺炎などの感染症とされる。
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