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血管中から滲み出した水が腹中に溜まること。および、その溜った水のこと。肝硬変やがんなどによって生じる。
その発生には幾つかの原因が考えられている。
一つは肝細胞が破壊され減少することで肝臓の蛋白合成の機能が低下し、血中アルブミン濃度が減少する低アルブミン血症となることである。血中アルブミン濃度が低下すると、水分を血液中に保たせる膠質浸透圧が低下し、血管内の水分が漏出してしまう。漏出液が貯留する非炎症性腹水の主な原因は次の通り。
もう一つは肝硬変により肝静脈枝や門脈枝が圧迫され、肝臓内の静脈圧や門脈圧、類洞内静水圧が上昇することで、水分を血管外に絞り出してしまうことが原因となる。滲出液が貯留する炎症性腹水の主な原因は次の通り。
がんでは、転移したがん細胞が体内の至る所で炎症を起こし、その影響で血管より水分が漏出する。これを「がん性腹水」という。
このような腹水がたまると、いずれは胃腸を圧迫して食欲不振、腎臓を圧迫して腎機能の低下などを招く。また胸と腹を隔てる横隔膜を腹水が押し上げることで肺や心臓を圧迫するため、横になることができなくなることもある。
少量であれば特に自覚症状はない。
大量になると、腹が異常に膨れ、蛙腹と呼ばれる症状になる。しばしば臍の突出(臍ヘルニア)が生じる。この状態になると、胃が圧迫され食事が取れなくなったり、肺との境界となる横隔膜を押し上げて肺が膨らみにくくなり息切れを起こすことがある。
腹水は蛋白質の量で二種類に分類する。
主に炎症によるもので、細菌性腹膜炎、がん性腹膜、炎急性膵炎などで生じることが多い。
血管内圧の上昇やアルブミン不足などが原因で、肝硬変、門脈圧亢進、うっ血性心不全、ネフローゼなどで生じることが多い。
大量であり蛙腹状態であれば腹部診察だけで判断が付くが、画像検査では超音波やCTを使用して診断する。
必要に応じ、腹水の原因を診断するために穿刺により腹水を抜いて検査をする。腹水が滲出液か漏出液かの判断と、色、血液・細菌・がん細胞の有無などを調べる。
腹水患者は合併症として特発性細菌性腹膜炎が危惧されるので注意が必要である。
これは経過が急速で死亡率が高いため、状況に応じて抗生物質の投与も必要となる。
軽度の場合は安静と塩分制限などの食事療法で対応するが、重篤な場合は利尿薬により血中水分の排泄(排出)を促したり、アルブミンの補給をして腹水の増加を食い止める。
それでも効果が薄い場合は穿刺により腹水を抜くことも必要となる。ただし腹水は単なる水ではなく身体に必要な成分(栄養素、アルブミン、γグロブリン(抗体)など)を含んでいる。このため以前はがん性腹水であっても「抜くと弱る」が定説となっていて、あまり積極的に抜くことはなかった。実際、単に抜くだけでは正常時にもある腹腔内の必要な成分まで一緒に抜き取ってしまうことになり、結果症状はかえって悪化し寿命を縮めてしまう可能性があった。
そこで開発されたのが、腹水を抜き取るが、それを濾過し、必要成分は再び静脈から体内に戻す「腹水ろ過濃縮再生静注法(CART)」や、その改良型「KM-CART」である。具体的には、がん細胞、白血球、フィブリンなどは戻す必要がないので濾過で除き、次に過剰な水分や電解質を除いて、必要な成分を適当な濃度として回収、これを点滴静注として再び体内に戻すことになる。これによってがん性腹水であっても「抜くと元気になる」が新しい常識になり、患者のQOL向上のみならず延命効果まで期待できるようになった。
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