PowerPC

読み:パワーピースィー
外語:PowerPC 英語
品詞:商品名

IBMPOWERアーキテクチャーをベースに、IBM、MotorolaApple Computer(現Apple、以下同)の3社が合同で開発した、パーソナルコンピューター向けRISCマイクロプロセッサー。

目次

当時、速い680×0を作ることができず困っていたMotorolaおよびAppleと、大型コンピューター以外の分野にも切り込んで行きたかったIBMの思惑が一致し、まさかの三社連合が実現した。

良い組み合わせではあったが、PowerPCも604を過ぎたあたりで性能が伸び悩んだり開発の遅延が発生し、またMac OSも迷走を続けてMacintosh自体あまり売れず、組み込み用途やゲーム専用機用途以外では成功したとは言い難い製品となった。

のちにMotorolaは、半導体部門をFreescale Semiconductor, Inc.に分社、PowerPC事業はこの会社とIBMに引き継がれた。また、PowerPCの派生品のうち、CELLはIBMと東芝セミコンダクターが設計と製造をしており、組み込み用の4xxシリーズはAMCCに売却されている。

由来

1991(平成3)年に発表され、翌1992(平成4)年に最初の製品「PowerPC 601」がリリースされた。

登場当初は、PowerPCを搭載し、Mac OSMicrosoft Windows NTAIX(IBM UNIX)など複数のOSが動作するPReP(PowerPC Reference Platform)アーキテクチャーマシンのリリースが計画されていた。しかしApple Computerの互換機に対する圧力強化による計画の破綻、Windows NT 4.0からのPowerPCサポートの中止などの追い打ちの影響により、事実上Macintosh専用となった。

主な仕様

PowerPCはスーパースケーラー構造のRISCである。

POWERの特徴を生かしながら新機能の追加がなされた。PowerPCで導入された新機能はPOWER3以降、POWERに逆輸入されてもいる。

  • POWER命令セットの下位互換 (複雑不要な命令が省かれている)
  • 命令は32ビット固定長
  • 遅延スロットはない
  • 32本のGPR(汎用レジスター)と、32本のFPR(浮動小数点レジスター)
  • レジスターをスタック退避する利便の良い命令がない
  • アドレスバスは32ビットまたは64ビット
  • アドレスバスは32ビットだが、64ビット化も想定されている
  • 64ビット命令の採用
  • バイエンディアン(ビッグエンディアンリトルエンディアンの両方に対応、但しG5(PowerPC 970)を除く)
  • 多くの命令はワイヤードロジックで実行される
  • 倍精度浮動小数点演算機能を搭載
  • 128ビットのベクトル演算器AltiVecを搭載

他のCPUと大きく異なる点は、ステータスレジスター(フラグレジスター)にある。

  • 条件比較命令で変化するステータスレジスターが8セット存在(4ビットのフラグ8組)
  • 比較命令で、フラグを設定するステータスレジスターを指定可能
  • 分岐命令の分岐条件に、参照するステータスレジスターを指定可能
  • 各ステータスレジスター間で論理演算が可能

製品

初期のもの

600シリーズ
400シリーズ

組込用のシリーズの一つで、IPなど関連資産は全てAMCCに継承されている。

  • PowerPC 401
  • PowerPC 403
  • PowerPC 405
  • PowerPC 440
  • PowerPC 450
  • PowerPC 460
  • PowerPC 470
  • PowerPC 476

G3(第三世代)

この世代から世代(ジェネレーション)で表現されるようになった。

603eをベースに改良されたもので、PowerPCの基本とも言えるシリーズ。消費電力と性能のバランスが良く、組み込み用途での採用が多かった。74xシリーズは廉価版である。

  • PowerPC 740/750
    • PowerPC 740
    • PowerPC 750
  • PowerPC 745/755
    • PowerPC 745
    • PowerPC 755
  • PowerPC 750CX
  • PowerPC 750CXe
    • Gekko ‐ ニンテンドーゲームキューブ用
  • PowerPC 750FX/FL
  • PowerPC 750GX
  • PowerPC 750VX
  • PowerPC 750CL
    • BROADWAY ‐ Gekko互換のWii用
    • Espresso ‐ BROADWAY互換のWii U用

G4(第四世代)

SIMD命令セットAltiVecの搭載とSMPへの対応を最大の特徴とするシリーズである。

最初の7400シリーズと7450シリーズ以降ではマイクロアーキテクチャーが変更されており、後者を俗にG4eまたはG4+と呼ぶこともあった。

  • PowerPC 7400シリーズ
    • PowerPC 7400 ‐ 200nm
    • PowerPC 7410 ‐ 180nmにシュリンク
  • PowerPC 7450/7440シリーズ
    • PowerPC 7450
    • PowerPC 7451
    • PowerPC 7455 ‐ 180nm
      • PowerPC 7445 ‐ 7455の廉価版
    • PowerPC 7457 ‐ 130nm
      • PowerPC 7447 ‐ 7457の廉価版
    • PowerPC 7448 ‐ 90nm、e600コア

G5(第五世代)

POWER4ベースのPowerPCである。64ビット化への対応と、ビッグエンディアンへの特化などが特徴である。PWRficientによる互換プロセッサーは従来どおりバイエンディアンに対応している。

  • PowerPC 970
  • PowerPC 970FX
  • PowerPC 970MP
  • PowerPC 970GX

A2

マルチコアとマルチスレッドを重視した特殊仕様。

  • PowerPC A2

PowerPC e シリーズ

Freescale SemiconductorによるSoC製品。

  • PowerPC 1.10
    • PowerPC e300
    • PowerPC e600 ‐ SoC製品 (G4世代)
      • MPC8610
      • MPC8641 ‐ e600コア
      • MPC8641D ‐ デュアルコア版8641
      • MPC8640 ‐ e600コア、8641の廉価版
      • MPC8640D ‐ デュアルコア版8640
  • Power ISA 2.03
    • PowerPC e200 (MPC 56xx)
    • PowerPC e500
      • e500v1
      • e500v2
      • e500mc
    • PowerPC e700
  • Power ISA 2.06
    • PowerPC e5500
  • Power ISA 2.07
    • PowerPC e6500

Qor (コア) シリーズ

Freescale Semiconductorによる特殊仕様のSoC製品。同ブランド名でARMコアの製品もある。

  • QorIQ
  • Qorivva (車載用MCU)

関連プロセッサー

  • Titan (Power ISA 2.04準拠) ‐ AMCC社、製品化は実現せず
  • PWRficient (Power ISA 2.04準拠) ‐ P.A. Semi社
  • Cell Broadband Engine (PowerPC G5(PowerPC 970)相当) ‐ PLAYSTATION 3用CPU内のエレメント、PPEとして
  • Xenon ‐ Microsoft Xbox 360用CPU
用語の所属
RISC
関連する用語
スーパースケーラー

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