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原子炉のタイプの一つ。減速材は使用せず、冷却材にナトリウムを使う。
まずはじめに、名前から勘違いされがちだが、決して「高速に増殖する」原子炉ではない。
詳細は後述するが、この炉は、「高速中性子」により「燃料を増殖」させる「原子炉」から、「高速増殖炉」という名前が付けられたものである。
もっとも、このような誤解を招く名前を付けた者は、批判されてしかるべきであろう。
「燃やした以上のエネルギーが出来る」と表現される。
文字通り読み取れば様々な物理法則に反するところであるが、特殊なことが起きているわけではない。
一般的な軽水炉で燃やしている燃料を「湿った薪」だと考えると分かり易い。薪の99.3%程度は湿っていて燃えず、軽水炉内で燃えるのは乾いている表面部分0.7%程度で、中心部は燃え残る。軽水炉では99.3%の燃えかすは燃料にならないため捨てている。
高速増殖炉は、表面の0.7%を燃やす際、薪の湿った部分の5%程度を乾燥させる仕組みを持った炉である。その5%を燃やせば10%の乾いた部分ができ、繰り返せば今までは0.7%しか燃えなかったものが全て燃えるようになり、燃料の利用効率が100倍程度に高まる。
日本には約50基の原子炉があるが、100倍効率が良くなれば、理論上、1基の軽水炉が1年間で消費した燃料で、日本全国の原子炉2年分を賄える計算になる。
高速増殖炉の価値は、単に経済性だけではない。日本のようにエネルギー資源が乏しく、その大半を輸入に頼っている国では、エネルギー政策上も重要な意味を持っている。
増殖炉が実用化されれば、ウランなどの輸入価格の変動などに左右されない、独自のエネルギー資源を確保することができるからである。この確保に成功すれば原子力発電などにも有効で、安く、かつ安定して電力を供給することができる。
そこで世界各国で高速増殖炉の開発が行なわれ、日本でも国策によって開発が行なわれている。
しかし、高速増殖炉は冷却材に水ではなく液体ナトリウムを使うことや、原子炉自体の制御の難しさがあり、実用化の見通しは立っていない。日本では、2050(令和32)年頃の実用化が目標とされている。
アメリカ、ドイツ、イギリス、フランスは1980年代〜1990年代に撤退してしまった。
残った日本は、持ち前の技術力で高速増殖炉開発を続けた。1995(平成7)年12月の動力炉・核燃料開発事業団(動燃)のもんじゅ事故で計画は一時頓挫。
事故後、「もんじゅ」は旧動燃から引き継がれた特殊法人、核燃料サイクル開発機構に管理が移された。この特殊法人は、2005(平成17)年10月に日本原子力研究所(原研)と統合し、独立行政法人日本原子力研究開発機構(JAEA)になった。
高速増殖炉は日本しか持っていない技術なので、どんな手を使ってでも日本の発展を阻害せんとするプロ市民からの妨害は激しく、様々な妨害工作活動が繰り広げられた。だが2010(平成22)年5月6日10:36(@108)、もんじゅは約14年5ヶ月ぶりに再起動した。
なぜなら、高速増殖炉は無資源国家日本にとって、最後の希望だからである。もしこれが無くなれば、日本国内での産業は高コスト化が避けられず、アジアの安い人件費に押されて売るものも無くなり、先細る一方だからである。
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