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生命があり、成長し、そして繁殖するもの。
現在、生物は地球にしか確認できていないが、これに限れば、次のような重要な特徴を持つ。
このような明確な生物とそうでないものとの境界には「リケッチア」や「ウイルス」がある。
リケッチアは細胞構造を持つため微生物とされることが多いが、それ単体では自己増殖能力を持たない。ウイルスは遺伝子しか持たず、単体では何もできないため生物ではないとされている。
いずれもそれ単体では何もできないので、他の生物の細胞に寄生することになる。他の細胞の中にあっては、その細胞の力を借りて自己複製など生物らしい挙動を示すことができる。
モノと生物の境界は研究者によって異なるが、概ね、次のようになる。
生物の歴史は諸説あるので、そのうちの一説。
生物をどのように分類するかは、研究によって大きく変化を遂げた。
その後は五界説が一般的となったが、やがてDNA研究が進むと五界説など界で分類する方法は陳腐化し、三ドメイン以下で細分類するような研究が進んだ。このため、動物と菌は同じグループ下に収まる、といった研究成果が出ている。
やがて古細菌(原核生物)と真核生物で同等のゲノムのコードが見つかり、真核生物は古細菌から進化した可能性が高まった。これにより、古細菌と真核生物を別ドメインとして分離する三ドメイン説すらも誤りであることが判明した。
当初、古細菌の中でもクレン古細菌(エオサイト)から真核生物が進化したと考えられたためエオサイト説と呼ばれたが、更に研究が進むと、TACK説、ロキ古細菌を経て、アスガルド古細菌とされるグループより進化したとする説が有力になっている。このため、エオサイト説の派生としての新たな名が模索されている。
生物が、いつ、どのように誕生したのか。これについては、まだ分かっていない。
しかし幾つかの有力な理論は存在する。
その昔、地球の海中で自己複製する高分子が誕生した。
この高分子は、蛋白質だとする説(蛋白質ワールド仮説)、RNAだとする説(RNAワールド仮説)の大きく二つがある。
いずれにせよ、これはまだ生物とは言えない状態だが、後に高分子を包み込む細胞構造が生まれ、中に高分子が囲い込まれた。この細胞膜も、現在の細胞のように燐脂質とする説や、蛋白質だとする説がある。
もって外界と隔離された世界が作られ、この中でRNAや蛋白質などの物質の濃度が高まると、DNAが作り出された。こうしてRNAは、蛋白質に化学反応を促進する機能を譲り、後に誕生したDNAに遺伝子としての機能を譲り、やがて現在の生物に繋がるよう進化した、と考えられている(RNAワールド仮説)。
ここに原核生物である単細胞生物が誕生する。
単細胞生物は増殖を繰り返し、やがて複数の細胞からなる多細胞生物が誕生した。原核生物が多細胞化した同じ頃、真核生物も誕生したと考えられており、これが進化を繰り返して現在に至っていると考えられている。
メタンやアンモニアなどから有機物が作られることを実験的に証明されたのは、1953(昭和28)年のことだった。
この年、当時シカゴ大学の大学院生だったスタンリー・ロイド・ミラー(Stanley Lloyd Miller)が、ハロルド・クレイトン・ユーリー(Harold Clayton Urey)の下で博士論文に取り組む際、ある実験をした。
これは、アンモニアやメタン、水蒸気など、当時の想定に基づく地球の原始大気に似せた組成をフラスコ中で循環するようにし、ここに放電を繰り返すという実験である。
実験開始より一週間もすると、アミノ酸や塩基、ヌクレオチドが作られていることが見いだされた。
これにより、オパーリンの言う、単純な物質から複雑な化合物へ進化するという理論が事実であることが証明されたのである。
また、現在では宇宙でも同様の原理でアミノ酸などの有機物が作られることが知られており、これが隕石や彗星などに付着して地球上に降り注いだことも知られる。現在では、隕石や彗星などによって大量に有機物が供給され、海中に徐々に有機物が蓄積された、という説も有力である。
こうして海中には様々な物質が溶かし込まれた。海水は、それ自体が生物に必要不可欠な水でもあり、この海水は化学反応に適した状態だったと考えられている。
海が生物の母であることは、細胞の中の成分と原始地球の海水の成分とがよく似ていることからも証明できる。
しかし、アミノ酸を繋いでポリペプチド、そして蛋白質を作る反応とは、アミノ酸から水を奪う反応(脱水反応)である。水中で水着を乾かすことが可能かどうかを考えれば分かるが、通常の水中ではまず起こり得ない反応である。このため多くの科学者を悩ませた。
但し一つだけ例外条件があり、それは深海中の熱水噴出孔である。深海は高圧になっており、水の沸点も高まる。こうして、熱水噴出孔からは高温高圧の超臨界水が噴出しており、もって海水中のアミノ酸は重合し、蛋白質が作り出された、と考えられている。
生命活動を行なうためには、活発な化学反応がなければならない。しかし単に海水中では、これら物質は拡散してしまい、反応が乏しくなってしまう。従って、生物となるためには必要な物質を一ヶ所に濃縮する必要があった。
オパーリンの化学進化では、外界との境界となる膜のカプセルが必要だとした。これがあれば、物質は拡散することなく、高濃度を保つことが可能となる。
現在の生物細胞の細胞膜は、燐脂質という物質の二重膜である。ここで、幾つかの問題が出て来る。
燐脂質は、触媒がなければ容易には作られない。これが自然に作られたとは考えにくいのである。従って、他の物質が膜となったと考えられており、様々な論がある。
やはり燐脂質が最初だ、とする論もあれば、蛋白質ではないか、とする論もある。中には、実は膜ではなく黄鉄鉱の表面に物質が吸着され化学反応が促進された、という説まである。
生命誕生の重要な鍵となる外界との境界の誕生は、現在も研究中の課題である。
現在の生物は、遺伝情報をDNAに記録する。しかし、DNAは複雑な分子であり、これが自然に誕生したとは考えにくい。
また、現在の生物が使う複雑な蛋白質は設計図となるDNAが必要である。
どちらが先に誕生したのかは「卵が先か鶏が先か」の関係にある。
現在は、DNAではなくRNAから始まったとする「RNAワールド仮説」と、蛋白質から始まったとする「蛋白質ワールド仮説」(またはプロテインワールド仮説)の大きく二つがある。
どちらの説も、始まりは異なるが、流れとしては遺伝情報はRNAから始まり、やがてその機能をDNAへ明け渡す点は同じである。
RNAは複雑な分子である。これが自然に作られるとは考えにくい。実際に、実験室レベルでも、RNAが自然合成された例は無い。また隕石や彗星からも、リボヌクレオチドが発見された例はない。
RNAワールド仮説は多くの科学者から支持されてはいるが、疑問を持つ科学者も少なからずいる。こういった科学者が考えるのは、最初は蛋白質だった、とする蛋白質ワールド仮説である。
蛋白質はアミノ酸から作られる。初期には、構造が単純な4種類のアミノ酸、グリシン(G)、アラニン(A)、アスパラギン酸(D)、バリン(V)が作られたと考えられており、これらがランダムに繋がって適当な蛋白質が作られた、と考えられている。
実際に、実験室レベルでも、これらアミノ酸を含む海水が蒸発と乾固を繰り返すと蛋白質が合成されることが見いだされている。波打ち際などで合成された可能性があるとされる。
こうして適当に合成された蛋白質は、僅かだが触媒としての機能を有した。そしてやがて、アミノ酸をランダムに結合させる機能を持った蛋白質が現われ、もって、正確な複製ではないが自分によく似た分子を作る機能「疑似複製」が始まった、と考えられている。
この4種類のアミノ酸のうち、アスパラギン酸は親水性が高く、バリンは疎水性が高い。ここから、燐脂質と同様のロジックで細胞膜を作った、と考えられた。
やがて膜に包まれた細胞は、多様な蛋白質を作り、やがてRNAなどを合成する蛋白質を獲得し、更にRNAを遺伝情報として蛋白質を合成するシステムを獲得した、とする。
最初がRNAにしろ蛋白質にしろ、どちらの論でも次にはRNAと蛋白質を持つ原始生命の誕生が想定されている。
そして、この原始生命はDNAを獲得した。これが現在の全ての生物の共通祖先になった、とする説がある。
現在の全ての生物は例外なくDNAを持っており、このDNAの遺伝情報をRNAへ複写し、RNAを設計図として蛋白質を作る。従って、歴史上のどこかで、DNA・RNA・蛋白質を利用する共通の祖先があったのではないか、と想定される。
こうして想定された、生物の共通祖先は「コモノート」や「LUCA」(Last Universal Common Ancestor)などと呼ばれている。
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