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かつて西ドイツのグリュネンタール(Grünenthal)社が開発した催眠鎮静剤。
サリドマイドはグルタミン酸から合成されたが、妊婦が服用すると胎児に影響を及ぼすと言うことで、評価の難しい薬剤でもある。
サリドマイドの構造には不斉炭素(キラル炭素)が一つあるため、S体とR体という、立体構造の違いからくる二種類が存在する。分かり易くいうと、サリドマイドには右手型と左手型が存在することになる。
サリドマイドの睡眠・鎮静作用があるのは右手型(R体)であり、催畸形性による四肢の矮小化などの作用があるのは左手型(S体)であると言われていた。当時はこの事実に気づかず、両者の混合物が市販された。
しかし、後の研究によりサリドマイドは体内でR体とS体が常に入れ替わることが明らかとなり、R体を服用しても体内でS体に変化することが確認されたため、問題はいずれにせよ避けられなかったと考えられる。
サリドマイドの仕組みの解明の難しさは、サリドマイドそのもの自体が働くのではなく、体内で分解された数多の成分の何れかが複雑に絡み合い、作用していると見込まれることによる。
サリドマイドから生成される物質には、免疫の活性化や抑制、あるいは血管新生の阻害など、様々な機能が発見されているが、具体的にどの成分がどのように機能しているかまでは明らかになっていない。
日本では海外での回収後も大日本製薬と(当時の)厚生省が販売を続けたため被害者が続出した。
1962(昭和37)年5月17日に大日本製薬がイソミンとプロバンMの出荷停止を、24日にサリドマイド剤メーカーも各製品の出荷停止を、それぞれ厚生省に申し入れた。実際に販売停止と回収が行なわれたのは翌月の9月13日だが、回収が徹底していなかったため、その後も被害者が続出した。
ちなみに米国では米国食品医薬品局(FDA)が薬自体を認可しなかったため、殆ど被害は出ていない。
一躍悪魔の薬となったサリドマイドは一旦、世界的に販売が中止された。
但し薬効などに関する研究はその後も続き、1964(昭和39)年、エルサレム・ハンセン病病院にて、サリドマイドがハンセン病患者に多発する難治性の皮膚炎(結節性紅斑)に劇的な効果があることが確認された。これを機に、サリドマイドは粘膜皮膚疾患の特効薬としての地位を獲得したのである。
現在サリドマイドの適応症は、ハンセン病、ベーチェット病、全身性エリテマトーデス(SLE)、エイズのカボジ肉腫、皮膚がん、腎臓がん、難治性骨髄腫、多発性骨髄腫など幅広い。
アメリカでもハンセン病特効薬として闇で出回る問題があり、1998(平成10)年にハンセン病治療薬としての販売が承認された。但し、畸形児が生じるなどリスクが極めて大きい薬であるので、使用に際しては厳しい条件が付けられている。
実際の効果だが、サリドマイドはがん細胞と戦うというよりは、がん細胞に栄養を補給する血管の成長(血管新生)を阻害し、兵糧責めにする働きがある。つまり、抗癌剤と言うよりは飢癌剤という表現ができる。
不明。
不眠にあっては、200mg/日、最高1000mg/日。
抗がんにあっては100mg/1回、一日2回程度から。
胎児奇形が知られている。妊婦の使用は禁忌。
また、使用中の性交などは慎むべきである。
以下は、数々の情報に基づく推定である。
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