階級

読み:かいきゅう
品詞:名詞

軍隊における位。士官下士官に大別される。

目次

欧米諸国では、同一国の陸海軍であっても個別に発達したため、それぞれで呼称が異なる。

対して旧日本軍では、陸軍はフランス/ドイツ、海軍はイギリスと、それぞれ異なる国に範を取ったことから全般的な制度はかなりの差異が見られるものの、士官における階級呼称は律令制の官職に準じさせたため、陸海軍ともほぼ同一になっている。

自衛隊では、大中少が一二三に変化したものの基本的に旧軍の呼称を継承したため、陸上・海上・航空の三自衛隊ともやはり呼称の基本形は同じである。

大中少

陸軍で、階級制度が一般化しだした16世紀、17世紀では中隊連隊が重要な編制単位であった(現在では同程度に師団が重要であるが、師団制度は18世紀にナポレオンによって導入された)。

中隊は傭兵の募集単位であり、連隊はそれを束ねる組織だった。そして、各々の指揮官を "captain"、"colonel" と言い、君主は全軍を統率する "general" となった。

そしてその下に各々指揮官が負傷した際に代わりに指揮をとる副長(lieutenant)と下部組織(連隊ならば中隊)のリーダー的存在の人間(major)を配した。つまり、大きなくくりが3つあり、そのくくりの中に3つの階級が存在したわけである。

日本の律令制の官職ではその大きなくくりに相当する、「将」「佐」「尉」があり、小さいくくりに相当する「大」「中」「少」が存在したので、各々にあてた。

将佐尉

将官は士官の階級を三つ(将官佐官尉官)に大別した場合に最上位に位置するが、単に最上位というだけではなく、特別な階級である。

元来、恒久的な部隊の最大組織が連隊(艦)で、最高の階級も大佐であり、将官は戦時に特に任命される地位であった。将官が陸空軍では「将軍」、海軍では「提督」、さらには「閣下」と尊称で呼ばれ、日本軍においては、位階も尉官・佐官の奏任官に対し、勅任官親任官となるのもこのためである。

空軍は、多くの国においては陸軍航空隊から発展したため、陸軍と似た階級呼称をとることが多い。また、海兵隊は多くの国において海軍に所属しているが、海兵隊とは基本的に海軍における陸上兵力であるため、陸軍と似た階級呼称をとることが多い。

基本的な階級

基本的な階級は次の通り。日本での実例と比較表は後述する。

  • 士官(幹部)
  • 准士官
    • 准尉 (日本陸軍及び自衛隊)
    • 兵曹長 (日本海軍)
  • 下士官(曹)
    • 曹長(日本陸軍)、上等兵曹(日本海軍)
    • 軍曹(日本陸軍)、一等兵曹(日本海軍)
    • 伍長(日本陸軍)、二等兵曹(日本海軍)
    • 三等兵曹(日本海軍、1942(昭和17)年まで)
    • 兵長
    • 上等兵
    • 一等兵
    • 二等兵

日本の組織

旧軍から自衛隊に至るまでの歴史的な階級は後述する。警察組織・消防組織等の対応も後述する。

自衛隊と、日常よく目にする海保/警察の相当する階級を併記するが、軍と海保/警察は機能が異なるので、あくまで参考とする。

 自衛官海上保安官警察官
  陸上自衛官航空自衛官海上自衛官
士官将官中将陸将空将海将一等海上保安監・甲警視監
少将将補陸将補空将補海将補一等海上保安監・乙警視長
佐官大佐一佐一等陸佐一等空佐一等海佐二等海上保安監警視正
中佐二佐二等陸佐二等空佐二等海佐三等海上保安監警視
少佐三佐三等陸佐三等空佐三等海佐一等海上保安正
尉官大尉一尉一等陸尉一等空尉一等海尉二等海上保安正警部
中尉二尉二等陸尉二等空尉二等海尉三等海上保安正警部補
少尉三尉三等陸尉三等空尉三等海尉
准士官准尉准陸尉准空尉准海尉
下士官曹長陸曹長空曹長海曹長一等海上保安士巡査部長
一曹一等陸曹一等空曹一等海曹二等海上保安士
二曹二等陸曹二等空曹二等海曹三等海上保安士
三曹三等陸曹三等空曹三等海曹
士長陸士長空士長海士長一等海上保安士補巡査長
一士一等陸士一等空士一等海士二等海上保安士補巡査
二士二等陸士二等空士二等海士三等海上保安士補

日本の軍組織

旧軍から自衛隊に至るまでの各組織での階級と、海上保安庁の各比較表。

なお参考までに、旧軍から自衛隊に至るまでの日本の国防組織は、次の変遷を遂げている。

  • 日本陸軍
    1. 日本陸軍
    2. 総理府・警察予備隊
    3. 保安庁・保安隊
    4. 防衛庁・陸上自衛隊
  • 日本海軍
    1. 日本海軍
    2. 海上保安庁・海上警備隊
    3. 保安庁・警備隊
    4. 防衛庁・海上自衛隊

その後、防衛庁は防衛省に改組された。海上保安庁は参考。

 旧日本軍 保安庁自衛隊海上保安庁
陸軍海軍警察予備隊海上警備隊保安隊警備隊
士官
幹部
陸軍大将海軍大将    幕僚長長官
陸軍中将海軍中将警察監海上警備監保安監警備監次長・警備救難監
一等海上保安監・甲
陸軍少将海軍少将警察監補海上警備監補保安監補警備監補将補一等海上保安監・乙
陸軍大佐海軍大佐一等警察正一等海上警備正一等保安正一等警備正一佐二等海上保安監
陸軍中佐海軍中佐二等警察正二等海上警備正二等保安正二等警備正二佐三等海上保安監
陸軍少佐海軍少佐三等警察正三等海上警備正三等保安正三等警備正三佐一等海上保安正
陸軍大尉海軍大尉一等警察士一等海上警備士一等保安士一等警備士一尉二等海上保安正
陸軍中尉海軍中尉二等警察士二等海上警備士二等保安士二等警備士二尉 
陸軍少尉海軍少尉三等警察士三等海上警備士三等保安士三等警備士三尉三等海上保安正
准士官陸軍准尉兵曹長    准尉 
下士官
曹長上等兵曹一等警察士補一等海上警備士補一等保安士補一等警備士補曹長一等海上保安士
軍曹一等兵曹二等警察士補二等海上警備士補二等保安士補二等警備士補一曹二等海上保安士
伍長一等兵曹二等警察士補二等海上警備士補二等保安士補二等警備士補二曹三等海上保安士
 三等兵曹    三曹 
兵長水兵長警査長海上警備員長保査長警査長士長一等海上保安士補
上等兵上等水兵一等警査一等海上警備員一等保査一等警査一士二等海上保安士補
一等兵一等水兵二等警査二等海上警備員二等保査二等警査二士三等海上保安士補
二等兵二等水兵 三等海上警備員 三等警査三士 

日本の警察組織等

警察階級

日本の警察は「警察庁」「警視庁」「道府県警察本部」とに別れており、それぞれで役職階級の割当が異なるが、一般司法警察職員である警察官は、その階級により司法警察員と司法巡査とに分類される。

原則としては、巡査は司法巡査、巡査部長以上の階級は司法警察員となるが、捜査上必要な場合は巡査や巡査長を司法警察員に指定可能である(刑事訴訟法189条1項)。

  • 司法警察員
    • 警察庁長官 (警察庁)
    • 警視総監 (警視庁)
    • 警視監
    • 警視長
    • 警視正
    • 警視
    • 警部
    • 警部補
    • 巡査部長
  • 司法巡査
    • 巡査長
    • 巡査

皇宮護衛官の階級

天皇陛下およびご皇族の護衛をする近衛兵が皇宮護衛官である。

皇宮護衛官の階級は警察法第69条で定められている。

  1. 皇宮警視監
  2. 皇宮警視長
  3. 皇宮警視正
  4. 皇宮警視
  5. 皇宮警部
  6. 皇宮警部補
  7. 皇宮巡査部長
  8. 皇宮巡査

警察法には定めはないが、皇宮巡査の中から職位として巡査長が選出される。

消防官の階級

日本の消防事務は消防組織法により市町村が責任を追うことになっており、従って階級もそれぞれの組織ごとに定められることになるが、総務省消防庁により「消防吏員の階級の基準(昭和37年消防庁告示6)」が告示されているため各市町村はこれに従って規則で定めている。

  1. 消防総監
  2. 消防司監
  3. 消防正監
  4. 消防監
  5. 消防司令長
  6. 消防司令
  7. 消防司令補
  8. 消防士長
  9. 消防副士長
  10. 消防士

刑務官の階級

刑務官とは、刑事施設(刑務所、少年刑務所又は拘置所)で働く国家公務員である。

  1. 矯正監
  2. 矯正長
  3. 矯正副長
  4. 看守長
  5. 副看守長
  6. 看守部長
  7. 看守

入国警備官の階級

入国警備官とは、出入国在留管理庁(かつては入国管理庁)に所属する公安職の国家公務員で、不法入国者・不法滞在者の捜査や摘発などを職務とする。

階級は、出入国管理及び難民認定法施行令 第7条に定められえており、次の7階級がある。

  1. 警備監
  2. 警備長
  3. 警備士長
  4. 警備士
  5. 警備士補
  6. 警守長
  7. 警守

但し内規により、警守長と警守からそれぞれ主任警守長および主任警守が職位として選出される。

用語の所属
軍隊
関連する用語
陸軍
海軍
空軍
奏任官
勅任官
親任官

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