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米国、日本、台湾などの地上アナログテレビジョン放送などで使用されていた、カラーテレビ放送方式。
NTSC自体はカラー信号の規定であり、走査線数やフレーム数はテレビシステムと呼ばれる別の概念である。
とはいえ、実際のテレビシステムとしては、走査線本数が525本、秒間30フレームのインタレース以外で使われることは極めてまれである。
より厳密には、有効垂直解像度はこのうち486本であり、パソコンなどの動画キャプチャーでは、このうち480本を取得するものが多い。
フレーム数も、NTSC白黒では30フレーム/秒(60フィールド/秒)だったが、NTSCカラーでは仕様変更があり、正確には秒間29.97フレーム/秒(59.94フィールド/秒)と中途半端な値となっている(詳細後述)。
以降は、この標準的なテレビシステムを前提として説明する。
NTSCは、色度信号I,Qの二つを直角位相変調している。
人間の目がオレンジ系とその補色に感度が高いのに対してグリーン系とその補色にはそうでも無いことから、前者をI軸と呼んで広い帯域を与え、後者をQ軸と呼び狭い帯域を与えている。
NTSCカラーは29.97フレーム/秒という中途半端なフレームレートが使われている。しかし、もともとのNTSC白黒は30フレーム/秒ときりが良かった。
後述するような理由によりやむを得ず、このような半端な値を採用せざるを得なくなったが、この中途半端な値は長きに渡り技術者などを苦しめ、それはディジタルの時代に至っても続くこととなった。
既に行なわれている白黒放送からカラー放送に変えるにあたり、従来の白黒テレビとの互換性維持は欠かせなかった。
白黒テレビは、輝度信号と同期信号から成り立っているが、カラー化するためには、ここにさらに色の情報である色度信号を追加しなければならない。しかし、NTSCは後から色度信号を追加することを想定していなかったため、苦戦を強いられた。
NTSCの輝度信号は、搬送波を基準に、水平同期周波数の等間隔で頂点ができるような、櫛のような状態となっている。NTSCの信号中で空いている場所はその輝度信号間の隙間しかないため、この隙間のうち、最後の周波数の高いところに重畳することとした。
このような経緯により、NTSCは輝度信号(Y)と色度信号(C)が交互に配置されており、この分離(Y/C分離)が非常に難しいという問題も抱えることとなったほか、色度信号が輝度信号に混入して境目に細かい点が発生する「ドット妨害」や、輝度信号が色度信号に混入して「クロスカラー」が生じるなどもした。
色副搬送波(カラーサブキャリア)は、水平同期周波数の谷間に入る。したがって、水平同期周波数の整数倍とする。こうすると、周波数差が0となり、ビート周波数も0Hzとなるためクロストークが発生しない。
ただ正確には、色副搬送波は水平同期周波数の整数倍にはなっていない。単に整数倍にすると、上下のラインのカラー信号が同相となり映像を乱してしまうためで、この解決方法として色副搬送波は水平同期周波数の奇数/2倍となっている。この奇数は455が使われ、もって色副搬送波は水平同期周波数の227.5倍となっている。
こうすると、色副搬送波の信号は半分で次の水平ラインへと繋がることになり上下のラインのカラー信号が逆相となるため、映像の乱れが低減される。
NTSC白黒の頃はクロストークまで考える必要がなかったため、水平同期周波数と音声搬送波の周波数は整数倍関係になっていない。そこでNTSCカラー化にあたり、どちらかの変更を余儀なくされるが、NTSCではこのうち、水平同期周波数の方を変更した。
音声を変えることもできたが、テレビ側の調整が必要なことと、すべての放送局がすぐにカラー放送に移行できるわけではなかったため、水平同期周波数側を変えざるをえなかった。カラーテレビの製品化を急いだためと思われるが、この妥協が後々まで禍根を残すことになったのである。
さて、NTSC白黒における、音声搬送波周波数は4.5MHz、水平同期周波数は15.75KHz(走査線数525×フレーム数30)である。4.5MHzを整数で割って15.75KHzに近い値を求めると、286で割った値(4.5MHz÷286=15.734265734265…kHz)が最も近いことが分かる。ところがこれは循環小数であり、つまり割り切れない値で、とても扱いにくいものだった。
上記のような経緯により、NTSCでは、色副搬送波(カラーサブキャリア)は3.579545MHz±10Hz、水平同期周波数はその227.5分の1の15.734265734kHzが採用された。
結果、NTSCカラーのフレームレートは、水平同期周波数を走査線数525で割った値、つまり約29.97002996フレーム/秒となる。ただ、ここまで中途半端では時間管理が難しいので、これを便宜的に29.97フレーム/秒として扱うことにした。
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