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非常の際に行なわれる通信の一つ。
電波法 第五十二条で、次のように定義がある。
第五十二条 無線局は、免許状に記載された目的又は通信の相手方若しくは通信事項(特定地上基幹放送局については放送事項)の範囲を超えて運用してはならない。ただし、次に掲げる通信については、この限りでない。
四 非常通信(地震、台風、洪水、津波、雪害、火災、暴動その他非常の事態が発生し、又は発生するおそれがある場合において、有線通信を利用することができないか又はこれを利用することが著しく困難であるときに人命の救助、災害の救援、交通通信の確保又は秩序の維持のために行われる無線通信をいう。以下同じ。)
つまり、次の条件を全て満たした場合が「非常通信」である。
状況が想定しにくいが、例えば「家が火事だが電話線が燃えてしまった」といった場合が、この非常通信に合致する。
非常通信はどのような無線局でも行なわれうるが、通信機器等を考えると、最も日常に近いといえるのはアマチュア無線による非常通信である。
以下は、アマチュア無線による非常通信を前提に説明する。
非常通信といえども、アマチュア局の運用は資格と免許が必要である。
根拠は、電波法第39条の13と、施行規則第34条の8、9、10である。
電波法
(アマチュア無線局の無線設備の操作)
第三十九条の十三 アマチュア無線局の無線設備の操作は、次条の定めるところにより、無線従事者でなければ行つてはならない。ただし、外国において同条第一項第五号に掲げる資格に相当する資格として総務省令で定めるものを有する者が総務省令で定めるところによりアマチュア無線局の無線設備の操作を行うとき、その他総務省令で定める場合は、この限りでない。
電波法施行規則
(アマチュア局の無線設備の操作の特例)
第三十四条の八 法第三十九条の十三ただし書の総務省令で定める資格は、外国政府(その国内において法第四十条第一項に規定する資格を有する者に対しアマチュア局に相当する無線局の無線設備の操作を認めるものに限る。)が付与する資格であつて総務大臣が別に告示する資格とする。
第三十四条の九 前条に定める資格を有する者がアマチュア局の無線設備の操作を行うときは、総務大臣が別に告示するところにより行わなければならない。
第三十四条の十 法第三十九条の十三ただし書の総務省令で定める場合は、臨時に開設するアマチュア局の無線設備の操作をその操作ができる資格を有する無線従事者の指揮の下に行う場合であつて、総務大臣が別に告示する条件に適合するときとする。
非常通信であれば無資格でも可能といった解釈をした運用がなされることもあるが、それは誤りである。
善意の違反者であると言えるが、違法行為であることに違いなはい。注意が必要である。
万一、非常通信周波数で呼んでも応答が無い場合、他の周波数を使用しても良い。
他の周波数で呼び出しても応答が無い場合、周波数帯をワッチし、交信中の局を見つけたら送信と受信が移る間に割り込んで「ブレーク」と宣言する方法もある。ブレークとは送信の中断を要請する命令であり、これが相手に届いていれば、「ブレーク局どうぞ」などと応答するので、この時に非常事態が発生したことを説明すればよい。
アマチュア無線家は親切な人が多いので、非常通信に協力してくれる人は多いと思われる。
非常通信をするかどうか、それに応答した無線局がどう対応するかは、法に定めは無い。自主的な判断に委ねられている。
電波法 第七十四条では、総務大臣の命令で非常通信をした場合はその実費が弁償されるが、これまで、そのようなことは一度としてない。今後も、総務大臣がアマチュアに頼って要請をするようなことは起きえないと思われる。アマチュア無線家としてのボランティア精神が求められている。
なお、虚偽の非常通信は違法行為であり、重く罰せられる。
また非常通信をしたあとは、後に総務大臣に報告する義務があり(電波法 第八十条)、実際には管轄区域の総合通信局に対して報告することになる。
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