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放射線の被曝量と影響の間には、閾値が無く直線的な関係が成り立つという仮説。閾値なし直線仮説。
現在の放射線防護の考え方の基本となっている仮説で、例えば発がん率を考えた時、被曝線量と発がん率は直線的な関係があるとし、測定しづらい低線量域も、直線的な関係から導き出せるとする、単純化された考えである。
しかし、数多くの調査研究による疫学的な研究成果では、放射線障害は広く喧伝されているよりも遥かに起こりにくく、結果として、低線量放射線の危険性が過大評価されていることが分かっている。
疫学に基づく結論は「LNT仮説は誤り」となる。
放射線の人体への影響は、1977(昭和52)年と1990(平成2)年の国際放射線防護委員会(ICRP)勧告により、「確定的影響」と「確率的影響」とに分けられている。
前者「確定的影響」とは、短時間に被曝線量が一定値(閾値)を超えた時、細胞の死滅も一定量を超え、もって症状が現われることをいう。脱毛などの皮膚障害、骨髄障害や白血病、白内障など様々あり、線量が増えるほど率と障害は酷くなる。
後者「確率的影響」とは、一定未満の被曝線量の場合であり、個々の細胞(のDNA)が損傷することで影響が生じることをいう。細胞の障害は確率的なため、この名がある。細胞には自己治癒能力があるため、DNAが少々損傷したところですぐに修復されるが、線量が増えてくるとその治癒速度を超えて破壊されることになり、こうなると発がん等の悪影響の発生率が高まることになる。
LNTの考え方は非常に単純化されており、一つの細胞のDNAに傷が生じたら、それが原因となってがんが発生する、という考えに基づいていて、このため被曝線量と影響の発生確率は完全な比例関係としている。
しかしこれは現実と乖離しており、日本国内に限っても、広島・長崎の原爆被爆者を対象とした膨大な疫学的データを用いても、100ミリシーベルト程度よりも低線量であれば、発がんリスクに有意な上昇が認められていない。これは、身体のDNA修復能力の方が上回っているためと見込まれる。
結論として、このような低線量域では、発がんリスクを疫学的に示すことができない。
低線量での放射線の影響は、現時点では確たる情報に乏しい。放射線防護のため、これは危険とみなすという安全側に振った方針によりリスクが推定され、導入されたのがLNT仮説ということになる。
様々な勧告を出している国際放射線防護委員会(ICRP)も、LNT仮説は放射線防護のためのみに使用するべきで、僅かな線量の被曝のリスクを評価するために使用することは適切でないことを認めている。
現実には、LNT仮説を用いてリスク評価する事例が後を絶たず、これを用いて現実よりも大きな悪影響を示し、一般人に過剰な恐怖感、不安感などの誤解を与える者がいる。
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