臓器の移植に関する法律

読み:ぞうきのいしょくにかんするほうりつ
品詞:名詞

臓器移植に関する基準を定めた法律。

目次

  • 通称: 臓器移植法
  • 番号: 平成九年七月十六日法律第百四号
  • 効力: 現行法
  • 種類: 私法 (医事法)
  • 関連する法律:
    • 医師法 (昭和二十三年七月三十日法律第二百一号)
    • 刑法 (明治四十年四月二十四日法律第四十五号)
    • 日本国憲法 (昭和二十一年十一月三日憲法)
    • 民法 (明治二十九年四月二十七日法律第八十九号)

沿革

趣旨

臓器の移植に関する基準を定めた法律で、それまで認められていなかった脳死移植を認めるための法律である。従来の「角膜及び腎臓の移植に関する法律」を廃止し、置き換える形で成立した。

「死体」は「脳死した者の身体を含む」と規定されており、脳死の定義は以下のように規定された。

(臓器の摘出)

第六条

2 前項に規定する「脳死した者の身体」とは、その身体から移植術に使用されるための臓器が摘出されることとなる者であって脳幹を含む全脳の機能が不可逆的に停止するに至ったと判定されたものの身体をいう。

かくして、これによって脳死移植が可能となった。

またこれは、後述の改正により、次のようになっている。

(臓器の摘出)

第六条

2 前項に規定する「脳死した者の身体」とは、脳幹を含む全脳の機能が不可逆的に停止するに至ったと判定された者の身体をいう。

移植を目的とする旨が削除された。

改正まで

諸外国の同趣旨の法律と比べて極めて制限の厳しい法律で、施行以来、充分な脳死移植は実現されなかった。

このため外国(主にアメリカ合衆国)に行って移植手術を受ける例が多数発生し、諸外国から顰蹙を買うのみならず、「死ぬ死ぬ詐欺」とも呼ばれる募金詐欺紛いも横行した。

そのような状況でも法律の内容の審議は殆ど行なわれていない状況であったが、2009(平成21)年に世界保健機関(WHO)が「臓器売買を目的とした海外渡航の原則禁止」および「移植用臓器の自国内提供」のガイドラインを定めるに至ったことから(いわゆる外圧)、この法は抜本的な改正をなすべく国会で審議が開始された。

改正

幾つかの案が国会に提出され、審議された。

  • A案: 「脳死」と位置付け、本人意思が不明の場合でも家族の承諾で臓器移植を可能にする
  • B案: 臓器提供が可能な年齢を現行の「15歳以上」から「12歳以上」に引き下げる
  • C案: 脳死判定の定義を現行より厳格化し、子供の臓器移植を認めない
  • D案: 15歳以上は現行法を維持し、15歳未満は家族の同意などの条件で提供できる

実質的にA案以外は無意味だった。この他、E案があったが、A案が可決したため採決されず廃案となっている。

このため、2009(平成21)年6月18日にA案が衆議院で可決され、2009(平成21)年7月13日にA案が参議院でも可決され、もってA案が可決、成立した。

なお、採決は押しボタン方式であり、共産党以外の政党は議員個人の死生観に関わるとして党議拘束を外して採決に臨んでいる。共産党は、意思表示せず全員が棄権した。

脳死判定基準

厚生労働省(法律制定時点は厚生省)が定めている脳死判定基準の五つの条件は、次の通りである。

  1. 深い昏睡である
  2. 自発呼吸がない
  3. 瞳孔が散大している
  4. 脳幹反応がない
  5. 脳波が平坦である

この条件が6時間後に再確認された場合(つまり計2回確認)、脳死と判定される。

しかし、この条件については脳死移植の賛成派・反対派問わずに疑問を投げかける向きも多く、議論の対象である。少なくとも、条件5の平坦脳波については、条件としていない国もある(例:イギリス)。

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