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現代宇宙論において、水素1(軽水素)以外の元素の原子核がビッグバン後の宇宙膨張(インフレーション)開始後の短期間で形成されたとする説。
宇宙誕生直後の高密度状態で発生した核融合反応である。この核融合が成立する条件はかなり厳しく、以下のような特徴がある。
これが事実であるとするならビッグバン宇宙論の強力な証拠となる。
これがどの程度信憑性をもった説であるかは、現実に観測される元素の量との比較をして確認することになる。
ビッグバン元素合成において重要になるのはバリオン/光子数の比である。この値は非常に小さく、6×10−10とされている。このパラメーターは宇宙初期のバリオン密度に対応しており、核子と衝突して核融合が起こる速度を決定する。ここから、核融合終了後の元素の存在量を推定することも可能である。
結果として、質量比で水素1が約75%、ヘリウム4が約25%である。また、核融合の時間は非常に短かったために、ヘリウム4を作る途中だった重水素とヘリウム3が約0.01%程度残存した。原子番号3以上の元素、リチウムとベリリウムが痕跡程度の量で、それ以上の重い元素は存在が無視できる。
現在宇宙で観測される元素の存在量と、この理論上の値は概ね一致しているため、ビッグバン宇宙論の強力な証拠となっている。
中性子と陽子の比率は、ビッグバン後1秒以内に標準模型(標準モデル)で決定された。その後、核融合が開始されるまでの(諸説あるが)約3分間に、クォークが集まり陽子や中性子が作られた。
宇宙誕生時点の宇宙は非常に高温であり、陽子(p)と中性子(n)は容易に変換可能だった。
宇宙誕生直後はn/pは1∶1が維持されていたと考えられているが、やがて宇宙の膨張に伴い温度と密度が低下すると質量が僅かに小さい陽子が増え始め、n/pは1/6程度になった。
次に来る核融合反応が終了する頃にはn/pは1/7となっているが、これは一部の中性子が核融合するより前に崩壊してしまったためとされている。
崩壊せず融合できた殆どの中性子は最終的にヘリウム4に結合した。これが原子数で約8%、質量比で約25%となるゆえんであり、観測結果とも一致している。
バリオンと光子の比 η は、ビッグバン元素合成が終了した段階での元素の存在量を決定する重要なパラメーターである。バリオンと元素は、次のような反応で核融合しうる(陽子‐陽子連鎖反応)。
この核融合過程では一時的に7Li(リチウム7)や7Be(ベリリウム7)を生成するが、ビッグバン元素合成での殆どの反応は4He(ヘリウム4)で終了している。
ビッグバン元素合成終了後、4He(ヘリウム4)生成過程で生じた僅かな2H(重水素)や3H(三重水素)、3He(ヘリウム3)などが残存した。
一説では宇宙誕生から約3分後、他説では約10秒後とも20秒後ともされており、かなり幅があるが宇宙が膨張を続け温度と密度が下がり核融合に適した条件となると、核融合が開始された。
自由中性子と自由陽子は不安定なため、安定したヘリウム4を生成するように進む。ただヘリウム4を作るためには途中で重水素またはヘリウム3を経由する必要があるが、誕生直後は宇宙が高温すぎて重水素が崩壊してしまう。これが崩壊しない温度(およそ T=0.1MeV)にまで下がる必要があった。この時間が、説により3分であったり10秒であったりするわけである。
その後爆発的に元素が形成されるが時間は短く、ビッグバンから約20分後には宇宙膨張の進捗に伴い温度と密度が低下、もって核融合は終了した。この時点で、宇宙における元素の存在量がほぼ固定されたことになる。
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