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地球の衛星である月が、どのようにして誕生したかを説明する説のなかで、最も有力視されているもの。
約45億年前、誕生したばかりの地球(原始地球)に大型の天体テイアが衝突し、テイアは原始地球ともども大破した。
この時に飛び散った原始地球の破片から月が作られたとするが、この作られたかたで、幾説か存在する。
テイアは原始地球に対して斜めに衝突した。このため、それによって地球を回る軌道に天体の破片が飛び散り、原始地球を取り巻いた。
後にこの破片同士がお互いの重力で引き合って合体、そして地球には不釣り合いなほどの大きな衛星が生まれた、とする。
テイア自体は地球の核と融合し、テイアに含まれていた鉄が地球の核の一部となったことから、これが現在の地球に存在する鉄の核の由来とされている。
テイアが地球をかすめるが、この時に両方の破片が結合して月になった、とする説である。
古い仮説では月のうち7〜9割程度がテイア、残りが原始地球、とするものがあった。2014(平成26)年に発表された研究結果では月はテイアと原始地球が半々程度で混ざっている可能性を示唆した。
しかし、月の組成は地球の組成とほぼ一致していることから、現実には月にはテイアの成分は殆ど含まれていないと考えられている。
2016(平成28)年頃の仮説ではこの巨大衝突によって原始地球の核とテイアは融合したとされ、2018(平成30)年には巨大衝突により構成していた物質の一部が高速に回転するドーナツ状天体「synestia」(シネスティア)を形成、この中から月が誕生した、とする仮説が発表された。2019(令和元)年9月4日にはカリフォルニア工科大学のSimon Lock氏らにより、シネスティア説を支持する研究結果が発表されている。
シネスティアは、現在の地球のマントルおよび月を生み出した。月の組成が地球のマントルと酷似するのは、このためとする。
また地球のマントルの化学組成から地球形成当時の内部圧力が予測されているが、現在のマントルの中間付近における圧力と同程度と見込まれている。古いジャイアント・インパクト説ではより高い圧力になったとしていたが、シネスティアが形成されたと仮定することで、圧力に関する矛盾も解消されるとされている。
地球内部に、地震波のS波が遅くなる領域、大規模S波速度低速度領域(LLSVP: large low-shear-velocity provinces)の存在が確認されている。二つがあり、一つは太平洋の下、もう一つはアフリカの下にあり、その大きさは厚さが1000km程度、幅はその数倍とされる、大陸サイズの地層である。
これはマントルの最下部にあり、核を包み込むようにして存在するが、これはテイアが衝突した際にテイアの一部がマントルの奥深くに沈んで保存されたものではないか、とする説がある。
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