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ワクチンのうち、ウイルスベクターを用いてウイルスの抗原をコードする遺伝物質を被接種者の体内に送り、これで免疫反応を起こさせるもの。
何らかのウイルスを改変したものをベクター(運び屋)とするものがウイルスベクターであり、これを用いて、目的とする他の病原体の抗原をコードするための核酸を被接種者の体内に送ることを可能にしたものがウイルスベクターワクチンである。
ベクターには安全なものを用いるため、ベクターとして使用されるウイルスに感染し発病することはない。
例えば、武漢肺炎ウイルス感染症のワクチンを例とする。
このウイルス用ワクチンとして開発されたアストラゼネカの製品では、ベクターにチンパンジーに感染し風邪症状を起こすアデノウイルスが使われる。このウイルスはヒトにも感染はするが発病はしない。そこで免疫を付けるための遺伝物質の「入れ物」として使用されている。
そして遺伝子組み換え技術を用いて、このウイルスの遺伝情報の一部を武漢肺炎ウイルスのものに改変する。ヒトに接種され体内に入ったときに、この部分を人体の免疫系が攻撃し認識することで、免疫が付くことが期待されている。
なお、この遺伝子組み換えの際にアデノウイルスそのものが増えないようにも改変しているため、体内でアデノウイルスが増えて何らかの感染症を起こすことがないようにもしている。
このタイプのワクチンの有効率は70%程度である。
このタイプのワクチンは、一般的な冷蔵庫程度の温度で保存できるため、扱いやすい。
より効果が高いmRNAワクチンは、非常に効果的ではあるものの超低温での冷凍保存が必要になる。これは「入れ物」の壊れやすさの反映で、mRNAワクチンの脂質は壊れやすいがウイルスベクターは壊れにくいことによる。
ベクターワクチンの欠点は、ウイルスを用いることにある。
製品化されている殆どで、風邪を引き起こすアデノウイルスがベクターとして使われている。しかし人体にとってはこれ自体が異物である「外来から来たウイルス」そのものなので、人体の免疫によって遮断されてしまう可能性が高い。この場合は目的の遺伝物質は発現することなく破壊されてしまう。
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