トランジスタ

読み:トランジスタ
外語:transistor 英語 , 晶体管 大陸簡体 , 電晶體 台灣正體 , transistor/o エスペラント
品詞:名詞

増幅作用を持つ半導体結晶素子。1947(昭和22)年12月、アメリカのベル研究所で発明された、

トランジスタ
トランジスタ

目次

構造

珪素(シリコン)などの半導体結晶中の電子の動作を制御して増幅や記憶などの作用をさせる電子回路で、性質の異なるp型半導体n型半導体を三つ、サンドイッチにしたものである。

構成方法によりNPN型PNP型がある(ちなみにPNの接合がダイオード、PNPNの接合がサイリスタ)。

一般的なバイポーラ・トランジスタの場合、NPN/PNPの各両端がコレクタエミッタになり、中央がベースになる。

NPN型トランジスタ
NPN型トランジスタ

PNP型トランジスタ
PNP型トランジスタ

素材

初期は原料にゲルマニウムを使用していたが、後にシリコンが主流となった。

初期の頃はゲルマニウムの方が純度を上げ易かったためだが、現在のLSI用シリコンでは99.9999999999%(twelve-nine)の純度となっている。

高周波用としてはガリウム砒素のような化合物半導体が主流である。

分類

さまざまな分類方法が想定されるが、トランジスタの製造大手であるロームの分類方法を参考とする。

構造での分類

トランジスタは、大きく「バイポーラ」と「ユニポーラ」の二種類に分けられる。ポーラ(polar)とは電極のことであり、ユニ(uni)は一つ、バイ(bi)は二つを表わす語である。

許容電力での分類

最大コレクタ損失PC(max)での分類方法。大きく二種類に分けることができる。

集積性での分類

用途に応じ、抵抗器や他のトランジスタ、あるいは電子回路などを集積した複合製品がある。以下はロームによる呼称。

  • ディスクリートタイプ
  • 複合トランジスタ
    • デジタルトランジスタ (抵抗器を内蔵したもの)
    • トランジスタアレイ (トランジスタを集合させたもの)
    • トランジスタユニット (簡単な回路を構成したもの)

形状での分類

大きく、リードタイプと面実装タイプとに別れる。主としてロームによる呼称を採用。

  • リードタイプ
    • 一般挿入タイプ
    • 高密度挿入タイプ
  • 面実装タイプ

機能

用途

トランジスタには、大きく二つの用途がある。

一つは増幅作用であり、音響装置のアンプ等に使う。この回路をトランジスタ増幅回路という。

もう一つはスイッチング作用で、回路内でのスイッチの働きをする。論理演算のうち、論理否定(NOT演算)はこの作用を使っている。

増幅作用

ベース‐エミッタ間に電流を流すと、エミッタ‐コレクタ間に何倍もの電流が流れる。

またベースからエミッタに流す電流を僅かに変化させるだけで、コレクタ‐エミッタ間に流れる電流が大きく変化する。これが増幅作用である。

トランジスタ増幅回路には、次の三種類がある。

コレクタ電流(IC)がベース電流(IB)の何倍になるかを電流増幅率(hFE)といい、hFE=IC/IBで表わされる。

スイッチング作用

ベースからエミッタに流す電流を、コレクタ‐エミッタ間の電流を変化させるのに充分な量に調整しておき、ベースの電源をON‐OFFさせると、コレクタ‐エミッタ間の電流もON‐OFFされる。

ベース電流は僅かなので、この僅かな電流のON‐OFFで大きなコレクタ電流のON‐OFFの制御が可能で、これをトランジスタのスイッチング作用という。この出力を直接取り出すのがオープンコレクタである。

回路を工夫すればベースに入力したレベルの反転がコレクタから得られ、これが論理否定(NOT演算)である。

論理否定
論理否定

動作原理

結線方法

図1
図1

NPN型トランジスタでは、コレクタとエミッタの間に電圧を掛けて使う。

コレクタ側を+にすると、エミッタの電子はベース側に流れるが、ベースの正孔数には限りがあるので、電子と結合後は動かなくなる。

またコレクタでもプラス極側に電子は流れるが、コレクタへの電子の流入がないので、コレクタ内の電子が全て結合した後には動きがなくなる。

電圧の掛け方

図2
図2

そこで、エミッタとベースの間にも電圧を掛ける。

するとベースに正孔が入ってくるため、エミッタの電子がベースへ向かって流れる。

このうちの幾つかはベースの正孔と結合し、また結合しなかった電子はコレクタへと流れてゆく。延いては、コレクタとエミッタ間に流れる電流を増幅することになる。

これが、トランジスタ増幅回路の基本的な原理である。

発明と歴史

最初は、半導体結晶の上に1本の金属針を立てた半導体検波器の表面電位分布をもう1本の金属針で探っていたところ、偶然半導体結晶が増幅作用を示すことを発見した。

これは「点接触型トランジスタ」と呼ばれるものだが実用にならず、1951(昭和26)年に改良が加えられた「合金接合型」が開発されてからは急速に実用化が進んだ。

その後、最初の物とは異なる動作原理の半導体増幅素子も開発されたため、このような増幅作用を持つ半導体素子全体を指して「トランジスタ」と呼ぶようになった。

transistorの名称はtransfer resistor(電流を運ぶ抵抗)から名付けられた。

なお、最初の接合トランジスタを主に「バイポーラトランジスタ」という。

逸話

トランジスタの発明者はショックレー、バーディーン、ブラッテンの三人で、1956(昭和31)年にノーベル物理学賞を受賞している。しかし、トランジスタ誕生には裏話がある。

一説では、トランジスタと同等のものを、日本人である内田秀男が、トランジスタ発明よりも前に発明したという。

この当時、日本に高純度のゲルマニウムがあった可能性は低く、この説の信憑性については不明だが、GHQの検閲によりこの発明が日の目を見ることはついに無く、証拠も残されていない。

そして同時期に米国で研究中だった「トランジスタ」が誕生したのは、この検閲の行なわれた半年後であったという。

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