電子マネー

読み:でんしマネー
外語:electronic money 英語
品詞:名詞

硬貨紙幣を使わず、電子情報など電子計算機で扱える形にした貨幣。多くはカードの形を取っているが、クレジットカードとは異なるものとして扱われる。

目次

硬貨や紙幣と違い嵩張らず、また支払いもカードなどを用いて簡単・高速に行なえる点が利点である。大容量のカードを使えば貨幣として以外の機能も、一枚のカードで実現できるとあって利便性が高い。

非接触ICカード式であれば定期入れなどに入れたままタッチするだけで決済できるので、現金による支払いより大幅に高速化されるのも利点。

店舗としても、レジに現金が残らないため、強盗などが入った時にも安全であり、欧米のようにやや物騒なところでは、導入コストを掛けてでも導入する店が多い。また欧米では既に小切手が普及しており、現金以外の取引が一般化していたことも背景にある。デビットカードは小切手と異なり、不渡りになる可能性が普通はない点が店舗にとっても好都合である。

初期の磁気カードは、金銭情報はカードそのものにも記録されていた。ICカードのセキュリティが強力とされるのは、カード自体の暗号化だけでなく通常はデータベースサーバーにも記録されており、カードのIDを元に残金などを求められるようになっているからである。このためカードそのものを書き換えても残高の変更などは(通常は)出来ないため、不正な書き換えが可能だった古式の磁気カードと比較して大幅なセキュリティ向上が実現している。

現在、新たに作られる磁気カード式の電子マネーもあるが、これらも同様の方式でデータベースサーバーにも記録する方式を採用している。

未定義

「電子マネー」という語そのものは、用語としての明確な定義はない。本当の貨幣であれば双方向の兌換性(あるいは市場取引)が完全に保障されるが、これは日本では日銀以外がやってよいのか、微妙である。

曖昧な使われ方をしており、ゆえに人により定義が異なるが、大きく電子情報そのものが貨幣としての価値を持つ電子マネー(狭義の電子マネー)と、間接的に現金やそれに類するものと接続されて使用される電子マネー(広義の電子マネー)とに分けられると考えられる。

また貨幣だとするならば、その電子マネーで「受け取り側が希望すればあらゆる用途の代金受け取りに用いることができる」ことが求められるが、これは現時点では実現されていない。現在、電子マネーと言われているものは、実態としては対応する店舗でのみ利用できる「電子商品券」である。殆どのものは、同一グループ内でしか利用できないからである。

ただ、殆どの電子マネーは「払い戻し不可」で、また金券屋に持っていって換金することもできないことから、厳密な意味では「商品券」ですらない。

一般的な感覚

一般的には、次のようなものが電子マネーとして認識されている。

  • 通貨に近い感覚で利用できる
    • 小額決済可能
    • サインや暗証番号が不要
    • 決済が早い
  • 電子的な決済手段のうち、真新しいもの

この感覚は、後述する「広義の電子マネー」に近い。

狭義の電子マネー

仕様

プリペイド(前払いによる充当)ないしクレジットカード等からのポストペイ(後払いによる充当)によりICカード等に金銭情報として貨幣価値を充当し、それを利用するものをいう。

非接触ICカードが実用化されてからは、ICカードを利用したものが流行している。意味を限定するため「ICカード型電子マネー」とも呼ばれる。

なお、プリペイド式は金銭価値を電子情報に置き換えたもので狭義の電子マネーでもあるが、ポストペイ式は実際にはクレジット決済の一種である。ポストペイ式は後払いとなるが、クレジットカードは「プラスチックマネー」とも呼ばれるように、商品を購入できる点は貨幣と共通するため「マネー」の一種として扱われてきた。このことから、電子マネーでも、前払い/後払いは、マネーかマネーではないかの基準ではない。

一覧

過去のサービス

以下は、サービスを終了した。

  • 流通系
    • eLIO (ソニーファイナンスインターナショナル)
    • Pidel (taspoの電子マネー機能)

広義の電子マネー

金銭とのリンク性

それ自体は金銭的価値を持たないが、銀行口座や郵便口座、クレジットカード口座、あるいは何らかの決済用口座などから、ネットワークを経由し随時指定の額面を引き出して決済ができるもの。オンライン決済とも呼ばれる決済方法の一カテゴリーと考えられる。

それ自体は通貨ではないので、利用者はネットワークにアクセスするためのIDとパスワード(例えば口座番号と暗証番号)を覚え、利用することになる。カードとして提供される場合、カードにはID(口座番号)などが記録されていて、利用ごとにパスワード(暗証番号)を機械に入力させることになる。

例えば、いわゆるデビットカードなどが該当する。日本では利用可能な店舗が増えたとはいえ一般化はしたかどうかは甚だ微妙であるが、欧米では前述のような強盗対策の結果、かなり普及した。

仮想通貨

プリペイド、ポストペイ、いずれにしても現金あるいはクレジットで購入し、ネットサービスなどで利用する仮想的な通貨が多数存在する。

こういったものは「電子決済」と呼ばれることが多いが、仮想通貨などと呼び、広義の電子マネーの一種として捉える向きもある。

  • 商業サービス(汎用性を目指したもの)
    • WebMoney (株式会社ウェブマネー)
    • BitCash (ビットキャッシュ株式会社)
    • デジコイン (三菱UFJニコス株式会社)
    • NET CASH (NTTカードソリューション)
    • ちょコムeマネー (NTTスマートトレード)
  • 商業サービス(閉じた世界専用のもの)
    • モリタポ (有限会社未来検索ブラジル)
    • PASELI(パセリ) (コナミ、e-AMUSEMENT PASSに付帯する通貨機能)
    • ナムコイン (ナムコ)
    • JOYSOUNDポイントJOYポ (株式会社エクシング)
  • その他

電子マネーとプリペイドカードの境界

いま流通しているプリペイド型電子マネーは、サービス提供会社を経由して現金ないし銀行・郵便口座からカードに入金することで用いる。これ自体は、従来よりあるプリペイドカードと大差無いものと考えられる。

入金するなどの手段で半永久に使い続けられる、という特性を電子マネーの一つの特徴として捉えるのであれば、テレカ等のプリペイドカードは当てはまらないが、磁気記録式で追加入金できるカードなどは従来より存在するため、その扱いが微妙といえる。

しかし追加入金に対応するプリペイドカードは一般には電子マネーとは呼ばない。だが両者の境界をはっきりさせることは難しいため、消極的な理由で狭義の電子マネーに含むことも不可能ではないと考えられる。

電子マネーとクレジットカードの境界

クレジットカードは名の通り、利用者の信用に基づいて発行され、使った金額を後払いするカードである。

プリペイド型電子マネーは現金から入金するなどして用いることが可能であり、信用とは無関係に利用出来るが、電子マネーと称する中にもPiTaPaのように審査が必要なもの(ポストペイ型電子マネー)がある。

なお、「審査が必要な時点でクレジットカードの一種」と考えられる。ポストペイ型電子マネーとは、クレジットカードをICカード化でサインレスにした代わりに用途を制限させたもの、とも言える。ただ、プリペイド型電子マネー(前払い)と同様に利用できるので、これをもってPiTaPaが電子マネーであることを否定することにはならない。

電子マネー実験時代

EdyやSuicaなどで電子マネー時代が日本に到来した印象があるが、最初はそういったものではない電子マネーで細々と実験が行なわれていた。

例えば、渋谷駅近辺で各商店が参加して実験がなされたが、この実験の知名度は限りなく低く失敗に近かった。その後、電子マネーではない様々な電子決済も登場し実験されたものの、なかなか実用化には至らなかった。

デビットカード時代

銀行や郵便貯金(現在のゆうちょ銀行)のキャッシュカードで買い物ができるデビットカードが使われるようになった。

この当時にこれを「電子マネー」と呼んだかは定かではないが、今では広義の電子マネーと考える向きもある。

非接触ICカード時代

非接触ICカードと通信網が実用化されるに至り、セキュリティや利便性が大きく向上したことを受け、プリペイド型電子マネーEdyなどが登場した。

また鉄道業界でもJR東日本がSuicaを電子マネー化したことで、非接触ICカードによる電子マネーが本格的に使われるようになってきた。

サービス増加

SuicaやEdyが本格的なサービスを始めたのが2001(平成13)年。以降、雨後の筍のように、次々と電子マネーサービスが増えた。

皆がこぞって、しかもそれぞれで独自の電子マネーを立ち上げたがる理由がある。

一部の例外を除いて、基本的にチャージは前払いである。利用者は何の疑いもなく前金でチャージするが、企業にとっては、これは大きな「うまみ」なのである。

銀行その他金融機関であれば、預金には金利が付く。しかし、電子マネーのチャージには、金利は一切付かない。金利不要の金銭が、前払いで大量に入手できるわけである。挙句の果てには、このチャージ額に有効期限を設ける阿漕なサービスまである(例えばnanaco)。

この資金で機材を量産して価格を下げ、さらに普及を図る、ということが、理論上は可能。場合によっては、これを投資に使いさらに資金を増やそうとするところもあるかもしれない。ただこれも、大きなグループがあれば囲い込みで何とかなるというだけのことで、そうでない場合(例えば楽天になる前のEdyなど)は、色々と苦しいようである。

赤字のEdyの場合

かつてEdyを提供していたビットワレットの場合、延々と赤字を続けた挙句、債務超過を回避するための増資に楽天が応じたことで、ついに楽天の傘下に入る事になった。

端末の普及のための投資で巨額の負債があるほか、Edy搭載のカード自体は普及したものの実際に利用されることは少なく、期待していた手数料収入が思うように上がらないことが経営を苦しめていた。

特定企業の「色」が付いていないことがEdyの最大の魅力だったが、同時にこれが最大の弱点で、顧客の開拓に苦しんだのである。

提供会社の収益

電子マネー事業は、基本的にはクレジットカード等と同様に手数料ビジネスである。

まず参考までにクレジットカードを例にすると、クレジットカードは分割払い時の金利のほか、加盟店に売上に対して数パーセントを要求することで利益を得てサービスを成立させている。そのうちのいくらかは、利用者に対してポイントという形で還元されている。ゆえに、一括払いであってもポイント還元が可能なのである。

電子マネーは基本的には一括払いのみを提供するので、収入源は原則として加盟店からの手数料のみである。

クレジットカードの場合、加盟店の手数料は一般に3%から5%程度とされており、VISA/MasterCardは3%、AMEX/JCBは5%であることはよく知られる。電子マネーも同程度と見込まれる。なおリーク情報によれば、かつてのEdyは4%だったとのことである。気になるSuicaは情報が得られなかった。

ネット決済の今後

楽天が、大赤字のEdyを手中に収めた理由は、決済方法の多様化にあるという。

楽天はこの時点で既にクレジットカードの楽天KCを持っており、またイーバンク銀行を買収(後に楽天銀行に改名)するなどしているが、さらにEdyを手に入れた。これは、カードや銀行口座を持たなくても買い物を可能にし、利便性の向上を実現するための買収としている。

楽天市場の場合、Edy買収時点で、決済の2/3はクレジットカードまたは銀行振込だが、残る1/3は今なお宅配便による代引きだった。クレジットカードを使わない利用者は、クレジットカード番号がネットに流出するリスクなどが念頭にあるものと思われるが、プリペイド式の電子マネーならチャージ額以上のリスクは存在しないことから、決済上の不安感の低減になる。

日本において、支払いの対応可否を記載。

チャージの可否については表中に含めていない。駅ナカや百貨店内など特殊な環境では、その場の電子マネーが特別に使えることもあるが、それについても表中に含めていない。

以下は、対応と記載されていても店舗によっては未対応のこともあるので、留意し事前に確認をすること。

飲食店(ファストフード店)

ハンバーガー

その他は、「モスバーガー」など有名どころ含め、電子マネーをグループとして導入しているチェーンは無い。つまり、独自に対応する店舗以外では、いつもニコニコ現金払いのみ。

丼・定食

「松屋」は、自動券売機の更新に合わせて徐々に対応店が増えているようである。

麺類

長崎ちゃんぽん・リンガーハット

  • 交通系ICカード
  • iD (一部店舗限定)
  • 楽天Edy (一部店舗限定)
  • WAON (イオン系ショッピングモール内の店舗限定)
  • QUICPay (イオン系ショッピングモール内の店舗限定)
  • nanaco (アリオ内の店舗限定)

コンビニエンスストア

楽天Edyは今やほぼ全てのメジャーなコンビニで利用可能。交通系は、直接未対応でも提携の関係から、交通系ICカード全国相互利用以前よりSuicaが使えない場所は四国のみであった。最近は四国もICOCAが利用可能となりつつあり、全国相互利用の関係でSuica等も使えるようになりつつあるようである。

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