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朝鮮語に使われる表音記号文字。
ハングルは、「文字」であって、「言語」ではない。
言語をハングル語などというのは、日本語をひらがな語・カタカナ語・漢字語などというのと同じくらいの大きな誤りである。
ハングルは表音文字であり、一つの漢字の朝鮮語発音を一文字で表現できるように作られている。つまり、漢字の発音記号である。
同様に表音文字である日本語のひらがな・カタカナが大和言葉の発音記号であるのと類似するが、漢字の発音記号として作られたハングルは、その1文字で漢字1文字に対応できる。
ハングルには14個(制定当時は17個)の子音字母(C)と、10個(制定当時は11個)の母音字母(V)があり、この24個を総じて「字母」と呼ぶ。また字母を組み合わせ、Cが30個、Vが21個作られる。
ハングル1字は「C+V」または「C+V+C」の組み合わせで形成される。初声+中声または初声+中声+終声(パッチム)であり、初声のCは19個、終声(パッチム)のCは27個である。
Vは21個なので、この全ての組み合わせは(19×21)+(19×21×27)で、合計11,172個となる。
理論上はこのように1万通り以上あるが、実際に朝鮮語音として存在するのは7千程度で、更に現代語で使われているのは2,500〜2,600個程度、多く見積もっても3,000〜4,000個程度と言われている。
元々の由来は漢字の発音記号である。
つまり、漢文(支那語)を表わすために作られた文字であったため、自国語(ウリマル)を上手く表わすことができないという欠点がある。
現在は朝鮮語用の文字として使われているが、朝鮮語に向いていない(詳細後述)。
ハングルの歴史と、朝鮮人の識字率の変遷。消える大日本帝国の功績。
創案されたのは1443(嘉吉3)年、李氏朝鮮第4代世宗の時代で、1446(文安3)年に「訓民正音」の名で公布された、つまり官製の文字である。
もっとも、日本語のかな文字がある日突然出来たわけではないように、ハングルも突如として出てきたわけではない。
朝鮮ではハングル以前は漢文を使用しており、全く違う言語体系用の文字(支那語と朝鮮語は全く異なる言語である)を作成したからには、既存の何かを参考にしたと考えるのが自然である。
但し、由来については全て仮説の段階であり、ハングルが何を元として作られたのかは今でも謎の一つである。
字母の形と、字母が音素を表現することはインドやモンゴルから取り入れられたと考えられている。
また、1字で1音節を表現することと字母の組み合わせは漢字そのものから案を得たと見られる。ハングルは、漢字的に表現すれば、冠、偏、旁、脚で作られているからである。
ハングルは、モンゴルのパスパ文字を参考に作られたと考えられており、最も有力な説である。南鮮でも定説となっているようである。
当時の朝鮮半島の国、高麗は13世紀にモンゴル(元)の属国になった歴史があり、王の血統も宮廷もモンゴル式となった。従ってこの時、文字もモンゴルの教えによったのではないか、と考えられている。
そもそも歴代高麗王はモンゴル皇族の姻族で人質として元のの大都(北京)で暮らしていたことから、パスパ文字は使い慣れていた。明王朝の時代になり事大先を明朝に替えた際、パスパ文字のままでは都合が悪いため、少し字形を変更して訓民正音と名付けなおしたものと考えられている。
当時の朝鮮、李氏朝鮮は高麗王族ではないが、政府の関係者はかつてのままだったことから、パスパ文字に似た文字の方が都合が良かったと考えられる。
異説では、対馬の占部阿比留(ウラベ-アヒル)家に伝えられた神代文字(古代日本の文字)である「阿比留文字」(アヒル文字)を参考に作られた、とする説がある。
阿比留文字は、明らかにパスパ文字の影響にある文字であり、由来はハングルと同様である。
ハングルは、王から命令された学者が短期間に、かつ人工的に作った文字である。このため、近くにあった対馬の阿比留文字を参考にした可能性もあるのではないかとの仮説がある。
この文字が作られた当時は、正字として漢文が使用されていた。
漢文が読み書きできるのは上流階級の者のみであり、下層民は読み書きが出来ない。従って、朝鮮では民衆の識字率は極めて低かった。
そこで李氏朝鮮の王(世宗大王)や学者達によって訓民正音が作られた。学者の言葉によると、賢人なら一朝で、そうでなくとも10日で修得できる、とされた。
上流階級は、下層民が読み書き可能になると、都合が悪かった。
そこで、女性でも文字の修得が可能だった訓民正音を「女文字」などと呼ぶなどして嘲り、普及に反対した。
朝鮮が日本に併合されてから「大いなる文字」という意味の「ハングル」(한글)という名が考案されたが、この時点でもなおハングルの地位は改善なく、民衆の識字率は低いままだった。
ハングルを朝鮮に普及させたのは、民族文化を誇る朝鮮人ではなく、実は日本人である慶應義塾塾長、福澤諭吉だった。
彼は、朝鮮を文明国にするためには世界で起こっていることを知り、文明開化の意味を知る必要があると考えた。そこで自腹でハングル活字を作り、漢字ハングル混じりの新聞を発行して普及に勤めた。
清国官憲や朝鮮人の一部から激しい反発があったものの、福澤の弟子、井上が朝鮮で初の新開「漢城旬報」の発行に成功した。この新聞は漢文の読めない多くの民衆でも読めるとあって人気を博した。
後期には漢文の比率が高まり、やがて廃刊に追い込まれるが、後に漢字・ハングル混合文の新聞や雑誌などが登場することになる。漢城旬報がハングルの普及に一役買ったことは疑う余地がない。
こうして散々貶されていたハングルだったが、後に民族の誇りとして扱われるようにまで地位が向上、遂に漢字を駆逐してしまった。
現在では簡単な漢字の読み方などの教育が復活しているが、それでも漢字に対する需要意識の少ない南鮮では、自分の名前すら漢字で書けない南鮮人は普通に存在する。
朝鮮語は大半の語彙が漢語であり、日本語以上に漢字音に依存している特徴を持った言語である。
ハングルが漢字の表音文字として作られた経緯も、まさにこの言語的特徴に基づいたものだった。
しかしハングルだけでは日本語のカナ文字と同様に表音文字であるため、同音異義語の問題がどうしても避けられない。日本語以上に漢字音に依存している言語でありながら、漢字を廃止してしまうことは賢明な判断だったのか、という点は必要な議論の要である。
漢字は、一文字に複数の読みがある。日本語では馴染みだが、朝鮮語でも同様である。
また南鮮の朝鮮語の特徴として、語頭の音が欠落する場合がある(例えば林は、森林は「リム」(림)だが、林業では「イム」(임)となり、語頭のr音が欠落する)。
ハングルでは当然、この読み通りに記述することになるが、こうなると元が同じ漢字であったことも分からなくなる。
ハングルは漢字の音と表記が1対1で対応するのが利点であったが、ハングルだけの場合「視覚に訴える」「文字の形に意味がある」と言った漢字の機能は死んでしまう。これは、音が1対1で対応するだけでは如何ともしがたいところで、1対1で対応していても現実的には殆ど意味が無いとも言える。
更に、朝鮮語は「リエゾンする」という言語的特徴があり、これが次に述べる正書法と発音の乖離に繋がり、朝鮮語をハングルで記述する場合の難易度を高めている。
訓民正音(ハングル)は漢字の発音記号である。漢字一字をハングル一字で書くのが正式で、この基準で綴るのが「ハングル正書法」である。日本統治時代に制定され、今も使われている。
しかしこの正書法は、漢字の併用を前提にしていたため、元の漢字を知らずに正書法を使うことは極めて難しく、アンケートによると南鮮の大学生の3割が正書法が最も難しいと回答した。
例えば、「山」は、朝鮮語で「サン」(san、산)と発音する。派生して「山が」と助詞「が」を付けた表現の場合、朝鮮語の助詞「が」は「イ」(i、이)が対応するため、結果「山が」は「san+i」となる。
問題はここからで、朝鮮語は「リエゾンする」。
san+iのn+iは融合するため、発音は「サニ」(sani)になる(「サンイ」ではない)。
サニをそのままハングルで書くと、「sa+ni」(사니)という二文字で書くのが最も自然だが、実際の文法上は「san+i」であるため、ハングルでは発音を無視してこれをsan+i(산이)という二文字で書かねばならない。こういった基本的なルールを定めたものが「ハングル正書法」となる。
もし漢字ハングル混じりなら、山+i(山이)と書けば良く、特に悩むべき問題はない(発音のリエゾンの問題はある)が、漢字を廃止し正書法のみ残ってしまったため、その弊害が出ている。
現在の朝鮮語は組み合わせ文字のハングルのみを使い漢字を使用しない。しかもリエゾンする。
組み合わせ文字は、アルファベットや平仮名片仮名と違い、小学生低学年には難しすぎる概念である。いきなり漢字ばかりを習うようなもので、どうしても一定以上の割合で落ちこぼれが生じる。
このため、識字障害、文盲、機能性文盲が多発し、問題化した。
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