Y染色体ハプログループ

読み:わいせんしょくたい・はぷろぐるーぷ
外語:Human Y-chromosome DNA haplogroup 英語
品詞:名詞

父系で遺伝されるY染色体における、ハプロタイプのグループ。

目次

Y染色体から判断される、全てのヒトの共通祖先となる男性Y染色体アダムを頂点とし、ここから分岐する系図を描くことで、ハプロタイプの集団(ハプログループ)を分類することができる。

このハプログループは外見上の特徴(いわゆる人種)とは必ずしも一致しないが、言語学上の語族と一致するという仮説が存在する。

研究においては、Y染色体の同じ一塩基多型(SNP)を持つものを一つの集団とみなす。つまり、Y染色体の特定の変異を指標としてグループ化する。このような一つの集団は突然変異によって産まれ新たなグループを作り、それがまた突然変異により新たなグループを作る、という進化を続けている。

このことから、Y染色体ハプログループを研究することによって、大昔に人類がどのように移動し、その場に定着したか、を予測することが可能となる。

系統

遺伝子系譜学国際協会(ISOGG)における分類に従うが、研究の進展に伴う改訂で名称が変更になることがあるため、必要に応じて最新を確認すること。

基底となる分類群はGHIJKのようにその下位分類を全て含むような名が与えられることが多いが、このGHIJKのように実際には(現存男性からも古代遺跡からも)発見されていない分類群も少なくない。

  • Y染色体アダム
    • A ‐ カポイド
    • BT
      • B ‐ ネグリロ
      • CT
        • DE ‐ YAPと呼ばれる特有の変異を持つもの
          • D
            • D1
              • D1a
                • D1a1 ‐ 主としてチベット、モンゴル、中央アジア
                • D1a2
                  • D1a2a ‐ 日本人(大和民族、アイヌ、琉球民族)
              • D1b ‐ 主としてフィリピン
            • D2 ‐ 主として西アフリカ、中東
          • E ‐ コンゴイド
        • CF
          • C
            • C1
              • C1a
                • C1a1 ‐ 日本の一部
                • C1a2 ‐ ヨーロッパの一部、およびクロマニヨン人
              • C1b
                • C1b1
                • C1b2 ‐ オーストラリア先住民、オセアニア先住民
            • C2 ‐ モンゴル高原、シベリア、北東アジア、北アメリカ先住民など広範で、アルタイ語族などに関連が深い
          • F
            • F(xG、H、I、J、K) ‐ 主として南アジアと東南アジア、および東アジアの一部
              • F*
              • F1
              • F2
              • F3
            • GHIJK
              • G ‐ 主としてコーカサス
              • HIJK
                • H ‐ 主としてインド
                • IJK
                  • IJ
                    • I ‐ 主としてバルカン半島、およびクロマニヨン人
                    • J ‐ 主としてアラビア半島
                  • K
                    • K* ‐ 主としてパプアニューギニア
                    • K1
                      • L ‐ 主としてインド、パキスタン
                      • T ‐ 主としてインド、中東
                    • K2
                      • MS ‐ 主としてパプアニューギニア
                        • M
                        • S
                      • NO
                        • N ‐ 主として北欧
                        • O
                          • O1
                            • O1a ‐ 主として台湾先住民で、オーストロネシア語族などに関連が深い
                            • O1b
                              • O1b1 ‐ 主として支那大陸南部から東南アジア
                              • O1b2 ‐ 主として東アジア
                          • O2 ‐ 主として支那大陸および朝鮮半島で、日本にも見られる。シナ・チベット語族と関連が深い
                      • P
                        • Q ‐ アメリカ大陸の原住民(ネイティブアメリカン)
                        • R
                          • R1a ‐ 主として東ヨーロッパ
                          • R1b ‐ 主として西ヨーロッパ

人種との関係

分子人類学者である崎谷満によると、人類は非出アフリカと出アフリカに分かれ、出アフリカ組はイラン付近から南ルート、北ルート、西ルートの3ルートで世界中に拡散した、としている。

それぞれ、南ルートで拡散した集団はオーストラロイド(オーストラリア原住民とその類縁人種)、北ルートがモンゴロイド、西ルートがコーカソイド、そして非出アフリカがネグロイドになる。

上の系統樹を大まかに分類すると、次のように分類できる。

  • 非出アフリカ(ネグロイド) ‐ A(カポイド)、B(ネグリロ)、E(コンゴイド)
  • 南ルート(オーストラロイド) ‐ C1b2、F*、K*、MS、H、L
  • 北ルート(モンゴロイド) ‐ D1、C1a1、C2、N、O、Q
  • 西ルート(コーカソイド) ‐ C1a2、I、J、G、R、T

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