東京大規模停電 (平成28年)

読み:とうきょう・だいきぼていでん
品詞:名詞

2016(平成28)年に東京特別区北西部で発生し、最大約37万軒(のべ58万軒)と鉄道など公共交通機関に影響を及ぼした大規模な停電

目次

2016(平成28)年10月12日14:56(@288)頃、埼玉県新座市野火止7丁目4番付近の洞道に敷設されていた東京電力パワーグリッド株式会社の地下送電ケーブルから発火、火災となった。これによって2016(平成28)年10月12日15:30(@312)頃より東京都の一部地域に対する電力供給が停止したことで停電となった。

当該の送電ケーブルは焼失したが、送電系統の切り替えにより、停電開始から約1時間後の2016(平成28)年10月12日16:25(@350)に停電解消した。

このケーブルは約35年前、高度成長期に急増した電力需要を賄うため敷設されたものである。

原因

約35年前に敷設され、今回火災を起こしたケーブルは「OFケーブル」と呼ばれ、絶縁特性を高めるために内部に絶縁油を封入した電力ケーブルである。

ビルや住宅の密集する都心部に電力を送る場合、鉄塔の建設が難しく架空式の配線が困難なため、地下のトンネルに電線を敷設する地下化が進められることとなった。

OFケーブルは発電所からの大電力を送電する基幹系統の地中送電線として当時の技術力で開発された技術であったが、油を使うため、ひとたび火災が起こると燃えやすいという欠点があった。

より技術が進んだ1990年代以降は、燃えにくいポリエチレン樹脂製の「CVケーブル」に置き換わりつつある。

事故現場

事故現場は埼玉県内であるが、新座変電所から二つに分岐した27万5千ボルト(275kV)の超高圧送電線となる基幹系統の送電線2系統が双方ともダメージを受けた。

停止したのは次の二系統である。参考までに豊島変電所以降については二次系統も記載する。

  • 北武蔵野線(275kV)
    • →練馬変電所
  • 城北線(275kV)
    • →豊島変電所
      • →池袋変電所→常盤台変電所 (15万V二次系統)
      • →北新橋変電所→南新橋変電所 (15万V二次系統)

停電規模

停電規模は徐々に拡大したため、二つの時間帯での停電規模を記す。

2016(平成28)年10月12日15:30(@312)時点

  • 合計 約367,000軒
    • 練馬区 約184,200軒
    • 中野区 約67,000軒
    • 杉並区 約65,900軒
    • 新宿区 約30,400軒
    • 豊島区 約13,300軒
    • 板橋区 約6,300軒
    • 北区 100軒未満

2016(平成28)年10月12日15:38(@318)時点

  • 合計 約219,000軒
    • 豊島区 約109,500軒
    • 板橋区 約61,900軒
    • 北区 約29,800軒
    • 文京区 約17,200軒
    • 中央区 約1,000軒
    • 港区 約300軒
    • 新宿区 100軒未満
    • 千代田区 100軒未満

火災によりまず練馬変電所への送電が止まった。別系統への切り替えにより10分間程度で復旧したが、火災が広がったため豊島変電所への送電も止まり、このため停電範囲が拡大した。

考え方

こういった老朽化したケーブルは新しいものに更新されるべきではある。しかし莫大な費用が掛かることから、発送電分離がされてしまった現状と今後、あまり儲からない送電事業でコストの掛かることはできないために、古い送電線も事故が起こるまでは放置せざるを得ず、こういった停電は頻発していくものと予測される。

これは海外でも同様であることから、日本での発送電分離が取りざたされた時にも散々言われていたことである。

なお、35年だから危険というわけではない。この年数で安全か危険かということを示す根拠はなく、35年という年数のみで安全危険を決めることは全く論理的ではない。実際、こういった古いケーブルは東京電力のゲーブルに限らず国内には膨大な長さが現存しており、35年より古い建物(基幹電線も変えてはいないだろう)などは全国至る所に存在する。

今後の対策は

順次ケーブルの更新をするしかないが、その費用の捻出をいかにするかは重大な課題である。電力は重要なインフラであり、その安定的な維持のために、危険な発送電分離をやめるという決断も必要になろう。

また火災を防止し復旧時間を短縮するためには、漏電検出(例えば地絡方向継電器=DGR)が動作した場合は停電覚悟で即送電停止ということも考えなければならない。火災が起きれば復旧には時間を要するが、電線の張り替えのみで済めば復旧の時間は短く済む。

用語の所属
停電
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