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子宮内で発育中の胎児を、まだ母体外では生命を維持できない時期(妊娠満22週未満)に、人為的に母体外に排出すること。人工妊娠中絶。
胎児と一言で言っても、小さいながら立派にヒトの形をしていたりするので、その罪深さたるや想像に余りあるのが現実である。
しかし、子供を産んで育てることは文明社会では大変なことなので、堕胎が選択されることも少なからずある。
その手術方法はいくつかあるが、妊娠初期の12週未満と12週〜22週までで大きく変わる。
日本では法律上、胎児は人ではないので人権はなく、殺人罪は適用されない。
ただ刑法第29章(212条〜216条)の定めにより「堕胎の罪」が定められており、最高刑は刑法212条で妊婦が1年以下の懲役、その便宜を計った医師は刑法214条で5年以下の懲役に処されることになっており、懲役のみしかない重罪として扱われている。
しかし母体保護法(昭和23年7月13日法律第156号)が作られてからは、母体の健康を害する場合や強姦妊娠の場合に限り、「指定医師」によって堕胎が可能となり、この時には刑法は適用されないことになった。ゆえに日本では、人工妊娠中絶手術を実施できるのは母体保護法の「指定医師」のみであり、該当する医師がいる医療機関でこの手術を受けることになる。
法的に中絶が可能なのは妊娠21週目までである。妊娠22週目以降は、胎児が母体外で生命を保持することができるとみなされるため、法律の適用から外れる。
11週目までは、麻酔をした上で子宮口を器具で広げ、胎児ならびに子宮内膜をハサミで切除して掻き出す子宮内容除去術である掻爬法(そうは法)か、または吸引器で吸引する方法で、器械的に子宮内容物を除去する方法による。
切除法は目に見えない場所を手探りで切ることになるので、流産しやすくなったりし、不妊の原因になったりすることもある。近年はより安全とされる吸引器が多く使われているようである。
手術費用は健康保険が効かないため自費で10〜15万円程度が必要であるが、体調に問題がなければ日帰りが可能である。
12週以降になると胎児自体が大きくなるため、あらかじめ子宮口を開く措置をしてから子宮収縮剤を投与して陣痛を誘発させ、通常の出産と同様に産む(流産させる)方法になる。
身体への負担も大きいため、通常は数日間の入院が必要となる。
加えて、産まれる姿は小さい(12週で身長7cm程度)ながら赤ん坊そのものなので、墓地、埋葬等に関する法律(墓地埋葬法)の規定により妊娠12週以上の中絶胎児は火葬・埋葬が義務付けられている。そのため役所・役場に死産届を提出し、胎児の埋葬許可証を貰う必要がある。それら費用込みで手術費用は30万円程度+入院費、となるようである。
海外では妊娠初期で使う中絶薬が市販されている国も存在するが、日本では長く認可されていなかった。
イギリスの製薬会社ラインファーマが日本国内での治験を実施、2021(令和3)年4月22日に有効性と安全性が確認されたと日本産科婦人科学会で報告された。年内にも中絶薬として国に承認の申請をするという。
中絶薬は、「ミフェプリストン」と「ミソプロストール」という2種類を順番に服用し、妊娠の継続を止め、胎児や胎盤を排出させる。「ミフェプリストン」は妊娠継続に必要なホルモンの働きを抑える薬で、服用後は一旦帰宅し、2日後に今度は「ミソプロストール」で子宮を収縮させて人工的に流産を起こさせる。この時、生理のような痛みと出血を伴うため、治験では鎮痛剤も併用したとしている。
発表によれば、妊娠9週までの120人に投与した結果は、112人(93%)が想定の24時間以内に薬だけで中絶を完了でき、残る8人のうち3人は一部が体内に残ったため外科的な処置が必要になり、1人は様子を見たところ48時間以内に完了、残る4人は本人の希望により手術をしたという。
また71人(59%)に腹痛や嘔吐があり、うち薬の副作用と判断されたのは45人で、1人には発熱や出血による貧血などの重い症状が出たという。ただ症状は殆どが軽度が中等症であり、いずれも回復に向かったため、日本人に対する有効性と安全性が示された、と報告された。
加えて、中絶そのものが無くなることが望ましいとして、体外に排出されるまでの時間は、今後の避妊や妊娠についてのカウンセリングに活用されたとしている。
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