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浦沢直樹著作のサスペンスまんが。ビッグコミックオリジナル連載。連載期間1995(平成7)年〜2002(平成14)年第1号。全18巻。
まだ東西ドイツ併合前の1986(昭和61)年ドイツでデュッセルドルフ・アイスラー記念病院に勤務する天才脳外科医、"Dr.テンマ" (天馬賢三)。腕利きの彼は院長の娘との婚約も決まりその将来を約束されていたが、権威に傅く現状に疑問を感じはじめていた。ある晩、頭を銃で撃たれた瀕死の少年 "ヨハン" が病院に運び込まれた。テンマは後から運び込まれた市長の手術を命じられたものの、ヨハンは自分以外には手術不可能であることから命令を拒否し、順番通りにヨハンの手術を執刀。市長は死亡してしまったがヨハンは一命を取り留めた。しかしこの結果、テンマは失脚してしまい、ついベッドで眠るヨハンの前で「あんな奴、死んだ方がマシだ」と院長の愚痴をこぼしてしまう。これが悲劇の始まりであった。
ある日院長をはじめとする院内の権力者3名が一斉に毒入りキャンディで殺害され、さらにヨハンが双子の妹と共に病院から失踪するという事件が立て続けに発生。困惑疲弊し、日本へ帰ろうかとも考えていたテンマを他所に、実力本位を標榜する理事長により新しい外科部長に任命され、皮肉にもテンマはその地位を回復することとなった。それから9年後、外科医として順風満帆のテンマの元に、中年夫婦連続殺人の容疑者と思われる男の手術依頼が来た。回復したその男がつぶやく「モンスターが来る…」という言葉、さらに「仲間全部、殺された…」という告白。そして、見張りの警官が毒入りキャンディで殺され、男が失踪するという9年前の事件を彷彿とさせる事態が発生。テンマが逃げる男を追うと、そこには9年前に失踪し、今では青年に成長したヨハンがいた。実はヨハンが中年夫婦4組の殺人の依頼者で、邪魔になった犯人達も全員殺したこと、さらに9年前の院長殺人もヨハンが "自分を助けてくれたテンマのために" 行なったことを告白。目の前の男もヨハンはあっさり銃殺してしまう。テンマは自分が「人を殺すことを何とも思わない恐るべき怪物」を生き返らせてしまったことを知り、一連の殺人事件の犯人として無実の罪で警察に追われながらもヨハンを抹殺するため追跡を始めるのだった。
浦沢氏の、東西冷戦や国際情勢などを取り入れたこの種の作品には過去にも "パイナップルARMY" や "MASTERキートン" などがあるが、これらは原作つきの作品であり、ストーリーも全て本人の手による長編作品としては本作が初めてのものとなる。その緊迫したストーリー展開や描写には絶賛の声多数で、第46回小学館漫画賞、第2回手塚治虫文化賞・漫画大賞、第1回メディア芸術祭賞優秀賞といった多くの賞を受賞することとなった。また、同時期に連載された "20世紀少年" も小学館漫画賞と同年の第25回講談社漫画賞を受賞し、小学館・講談社の2大タイトルを総なめにした作家としてその名を轟かせることとなった。
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