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かつて太平洋の中央に存在したとされる幻の大陸。マリアナ諸島からイースター島までをも含む8000kmに及ぶ大陸であったとされ、高度な文明が栄えていたが約12000年前に神の怒りに触れ一夜にして沈没してしまったと言われる。
この大陸は、アメリカの作家で元(自称)イギリスの陸軍大佐ジェームズ・チャーチワードの自著「失われた大陸ムー」(1931(昭和6)年)により初めて発表された。チャーチワードによると1868(明治元)年、イギリス陸軍のインド(またはチベット)駐屯軍に従軍していた際に現地のヒンドゥー教寺院の高僧に見せられた門外不出の粘土板 "ナーカル碑文" にムー大陸とその滅亡の歴史が記されていたという。また、ウィリアム・ニーブンというアメリカの技師がメキシコで発見したという古代の石板にもこの碑文とよく似た絵文字が記されていたとしている。更に,聖書の "創世記" の物語はムー大陸の滅亡の記録の書き直しであるとも主張している。
しかし、太平洋への沈没はその後のプレートテクトニクス説により否定されている他、彼の経歴そのものに疑問点が多々あり、また証拠として上げられている碑文についても、本人所有のものは存在が確認されているものの、インドまたはチベットのものは具体的証拠が皆無ででっち上げの可能性が非常に高い。さらにその碑文の解読法にも問題が多く、ほとんどの主張は思い込みで解釈され客観性に欠けている。傍証として上げられている資料としてマヤの「トロアノ写本」やチベットの「ラサ記録」があるが、これらはその後に前者は内容が誤訳されていること、後者は実在しない偽典であったことが分かっており、それらの間違った内容と完全に符合してしまう彼の主張には全く信憑性が無い。加えて彼は、イースター島などの現在に至るも解読の完了していない資料からまで引用しており、現在ではムーの実在以前にその発言そのものが信用されていない。
しかし、日本では同種の幻の大陸として知られるアトランティスやレムリアと比べてもムーの人気が高く、テレビ番組や雑誌などでも知名度があり、"太平洋の幻の島" = "ムー" というイメージが強い。沖縄の与那国島で発見された海底遺跡がムーの一部なのではないかという説も含め多くの俗説が流言しているが、そもそも伝説そのものが存在しない可能性の高いムー大陸に、実在の考古学を関連づけるのは非常に危険である。なお、日本で初めてムー大陸が紹介されたのは1932(昭和7)年「サンデー毎日」誌上で三好武二による "「失はれたM」太平洋上秘密の扉を開く" という記事である。
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