ICカード乗車券
読み:アイスィーカード-じょうしゃけん

 ICカードを使用した乗車券。日本では鉄道やバスで広く使われている。事業者は「交通系ICカード」とも呼ぶ。
目次

概要

通信方式
 非接触ICカードは電波を使って通信するが、その通信方式の違いによって、次のように分類できる。NFCIP-2はNFCIP-1の上位互換である。
 日本ではType A/B/FeliCaの全てが使われているため、全てを読み書きするためにはNFCIP-2対応の装置が必要となる。

種類
 ICカード乗車券でも使われている非接触ICカードは、次の3種類が主流となっている。
 Type AとType Bは主に海外で使われており、低速・小容量・安価なのが特徴。対してFeliCaは日本の技術で、高速・大容量・高価なのが特徴である。
 日本のICカード乗車券は、殆どがFeliCaを採用している。日本で、主流3規格のうちFeliCaが普及した理由は幾つかある。高価であるという欠点を補い余る、通信速度とメモリー容量の大きさが、一つ目と二つ目の理由である。都心のラッシュアワーなどを想像してのとおり、日本では旅客改札の迅速性は何よりも優先される。加えてメモリー容量の大きさは、多数の旅客輸送事業者が存在する日本では事業者間での相互利用に有利であり、また電子マネーなど他の用途に応用展開しやすくなるのも魅力である。
 とは言え、地方の鉄道やバスなどでは、必ずしもこれらの要素は重要ではない。にも関わらず地方交通でもFeliCaが使われているのは三つ目の理由で、日本最大の旅客輸送事業者であるJR東日本がSuicaにおいてFeliCaを採用し、これによってFeliCaが事実上の国内標準規格となったからである。

処理速度
 機械にタッチし、カードの読み込み→判定→書き込み→書き込み確認の処理時間は、FeliCaの高速性を生かし、0.2秒(0.2cBeat)〜0.3秒(0.3cBeat)で完了する。
 なお、磁気券の処理速度は、処理は同様で0.7秒(0.8cBeat)程度となっており、磁気券より倍以上速い。これは、磁気券の場合は券を装置内で移動させたりする必要もあるためである。

規格

サイバネ規格
 交通乗車券としては、鉄道会社で構成される日本鉄道サイバネティクス協議会(略称サイバネ協会)が規定した、いわゆる「サイバネ規格」に対応している。
 サイバネ規格を採用する事業者のICカード乗車券はSuicaの仕様が基となっており、FeliCaが使われている。このため、この規格のICカードは、FeliCa対応の読み書き装置であれば理論上は全てのカードが読み書き可能である。
 また、サイバネ協会仕様のカード乗車券規格は、元は鉄道用カードだが標準化の際に「バス・路面電車事業者」用の領域が追加定義されており、バス独自の情報は、この領域に記録されている。
 初期のSuicaはこの領域がないため、初期のSuicaではバスに乗れない、ということである。

構造


 サイバネ規格に対応したICカード乗車券などは、定期券としての表面書き換えに対応するため、ロイコ層と呼ばれる層を表面に持つ。

ロイコ層
 券面の書き換えはロイコリライト方式を採用しており、サイバネ規格では全面に印字可能となっている。
 文字色は青、地色は水色または銀色で、耐久性は60回以上の書き換えと、1ヶ月定期券で5年間の保持が想定され、また100℃の温水で2秒間、90℃の温水で10秒間の耐熱性が求められている。

サイバネコード
 ICカードも、切符と同様に入場駅と出場駅を一意に特定する駅コードが料金計算上必要とある。
 そのための規格として、切符と同様に、日本鉄道サイバネティクス協議会が策定した「サイバネコード」が使われている。
 切符の場合は16ビットで駅コードを表現するが、切符の場合は長距離は原則としてなく、また私鉄については関東・中部・関西・その他の各地方で収束することを想定しているためコードが重複しているという問題点があった。
 ICカードにおけるサイバネコードは、更に2ビット追加し、JR+関東、中部、関西、その他の4種類を表わせるようにして、計18ビットで駅を一意に確定できるようにした。

バス

バスカード
 サイバネ規格に対応していない初期のSuicaを除き、バスと路面電車に対応する。
 初期のSuicaで対応できないのは、初期のSuicaはFeliCaの容量が少なく、情報を格納するための容量が足りないためである。Suicaの場合、電子マネー対応と共にサイバネ規格に対応しており、ショッピングサービスマークの右下に●●があるのが目印となっている。
 
 首都圏エリアのバスは「特典バスチケット」いわゆる「バス特」などの情報を保存するため、この領域を使用している。バス特関係の情報は暗号化された領域に書かれており、現在のポイントの額などを一般の利用者が読み取る方法はない。

バスの整理券機能
 現在のICカード乗車券は、バスに乗ることもできる。バスに乗る際にタッチすることで、整理券と同様の機能を利用できる。
 但し、整理券の番号がカードに記録されるのではない。
 Suica/PASMOhanicaで確認した限りでは、乗車時のタッチでは非暗号化領域から読み出せる領域への書き込みが一切ないことから、一般にタッチ時にカードのID(おそらくIDm)を読み取ってバスに設置されている装置が保持し、降車時に照合する仕様となっているようである。
 電車の場合は過去の改札情報が記録されるが、バスはそうはなっていないということである。
 しかしまれに、バスのシステムがダウンして再起動するという珍事が発生することがあり、この場合は乗車情報が消えてしまうため、降車時にそのままタッチすると起点からの運賃が引かれてしまうか、または乗車時タッチなしとしてエラーとなってしまう。

カード
 2013(平成25)年3月現在、次のようなカードが存在するか、予定されていることが知られている(順不同だが、概ね北から西。広範囲で使えるカードは、代表的な地域に一つのみ記載する)。
 カード裏面の番号の頭2文字と、その根拠を併記する。
 ◆が付いているカードは「交通系ICカード全国相互利用」に参加しているカード。

JR

北海道

東北
 廃止されたもの

関東・甲信越
 廃止されたもの
 なお、PASMOのPBは、株式会社パスモの旧社名、パスネット・バスICカード株式会社(Passnet Bus IC Card K.K.)から取られている。

東海・北陸
 廃止されたもの
 ※あいの風とやま鉄道はICOCAに加盟しており独自カードは発行していない。

近畿
 近畿圏でIC対応事業者のうち、※の付けられていない近江鉄道以外はすべて、PiTaPaにも参入している。

中国・四国
 PASPYとHarecaは、社局ごとに独自の附番となっている。

九州・沖縄
 廃止されたもの

例外
 次の事業者等は、いわゆる交通系ICカードではなく、一般の電子マネーを採用した。
 コミュニティバスはおおむね民間委託されており、その事業者が導入しているカードが導入される例が多い。

今後の予定
 次の事業者等は、何らかのICカードを導入予定としている(概ね導入時期順)。

相互利用

全国相互利用
 2013(平成25)年3月23日から、全国のICカードのうち10種類の交通系ICカードの相互利用が可能となる「交通系ICカード全国相互利用」が開始された。
 従来、相互利用できる組み合わせは限られており、一つのICカード乗車券を全国で使うことができず、不便であった。
 そこで、2010(平成22)年12月20日に協議開始が発表され、2011(平成23)年5月18日に合意の旨が発表された。
 2013(平成25)年3月22日(交通系ICカード全国相互利用開始)時点で、上述のように10種類の鉄道系ICカード乗車券は相互運用されている。
 10種類のうち、PiTaPaのみポストペイ(後払い)、つまりクレジットカードである。このため、交通利用についてはICOCA用に使用されていたチャージ機能が利用される。つまり、あらかじめチャージする必要がある。また、電子マネーの相互利用は対象外となった。ポストペイ(後払い)とプリペイド(前払い)の壁は、思いの外大きかったようである。
 なお、相互運用後は気にならなくなったが、次の事業者は「Suica圏」であって「PASMO圏」ではない。

独自の対応
 2013(平成25)年3月22日(交通系ICカード全国相互利用開始)時点で、全国の相互利用以外で対応する組み合わせは次の通り。
 片道受け入れとあるものは、他社カードを受け入れるが、自社カードを相手の圏内で利用できないことを意味する。

関東・甲信越

東海・北陸
 なお、パスカもecomycaもサイバネ規格ではないが、双方で共通の仕様を導入することで相互利用を実現させた。

近畿

中国・四国
 宇野バスも2013(平成25)年3月12日よりHarecaに加盟したが、PiTaPaやICOCAは受け入れていない。

九州・沖縄

電子マネー機能
 2013(平成25)年3月22日(交通系ICカード全国相互利用開始)時点で、上述の10種類の鉄道系ICカード乗車券のうち、PiTaPaを除く9種類の鉄道系ICカード乗車券の電子マネーが相互運用されている。
 全国の相互利用以外の独自の対応をしているICカードの中で、電子マネー機能の相互利用をしている事業者はない。

技術

カードの番号

種類
 SuicaはじめICカード乗車券には、様々な番号が付けられている。券面を見ても、少なくとも二つの番号が記載されているが、他にも番号が付いている。
 その他、クレジットカード等であれば、それらの番号が書かれている。
 他にも、各カード独自の管理用番号が付けられることがある。

Suicaなどの番号
 Suicaなどの番号は、5桁 4桁 4桁 4桁で、計17桁の英数字の番号が振られている。
 最初の2字は、カードを発行する会社等を表わす記号である。
 万が一カードを紛失した場合でも、この番号のメモさえあれば、条件によっては再発行可能である(JR東日本の場合は記名式の場合のみ、など)。
 なお、乗車券ではないものにも同様の番号があり、例えばEX-ICカードは「EX」である。

読み取り
 FeliCaのIDmは読み取ることが可能で、これを利用して個人の特定を実現することができる。
 Suicaなどの番号(JEやPBなどで始まる番号)は、暗号化された領域に書かれているため、通常は読み取ることができない。
 製造番号は、恐らくIC内に記録されていないので、読み取ることはできない。
 クレジットカード番号、PiTaPa会員番号なども、暗号化された領域に書かれているため読み取ることはできない。

データ内容
 データ内容は、いわゆる「サイバネ規格」で規定されている。
 ただしその仕様は非公開であり、解析によって推測された以外の情報は出回っていない。

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