ピレスロイド系殺虫剤

読み:ピレスロイドけいさっちゅうざい
外語:pyrethroid 英語
品詞:名詞

除虫菊に含まれる成分の総称で、殺虫剤の成分。更に、各種の誘導体もピレスロイドと呼ばれている。

目次

除虫菊の有効成分である天然のピレスロイドは、酸である菊酸と、アルコールであるピレスロロンのエステルである。

このうち菊酸に殺虫作用があり、虫には有効だが、ヒトを含む温血動物には無害であることが発見された。

この除虫菊が日本に輸入されるようになると、大日本除虫菊(金鳥)を創業する上山英一郎により蚊取線香が発明された。

現在では蚊取線香の材料も除虫菊ではなく合成ピレスロイドが使われており効果も強くなっている。そして、日本でも蚊の防除は必要だったが世界ではマラリアや黄熱病などを媒介する蚊の防除は日本以上に重要な課題であったため、これが世界中に普及することとなった。

かくして、今や世界中の人間の95%が蚊取線香を知っているとも言われている。

薬効

ピレスロイド系殺虫剤は、有機塩素系殺虫剤と同様に昆虫の神経軸索のナトリウムイオンチャンネルに作用し、神経伝達物質を異常放出させることで正常な神経伝達を阻害するものである。虫はそのまま痙攣と麻痺で死亡する。

マラリアや黄熱病などを媒介する蚊を駆除するため、蚊取り線香の発明以降は世界中で使われるようになっているが、このため昨今ではピレスロイド耐性の蚊などが発生している。

ノックダウン

神経毒であり、飛んでいる蚊や蝿などの虫も飛べなくなり落ちて動けなくなる。

このような効果を「ノックダウン効果」といい、ピレスロイド系殺虫剤の特徴の一つとなっている。

種類

様々なものがあるため、ここでは主要なもののみを記載する。

  • 天然ピレスロイド
    • ピレトリン
    • シネリン
    • ジャスモリン
  • 合成ピレスロイド
    • アレスリン (蚊取線香、電気蚊取など、耐熱性)
    • イミプロトリン (ゴキジェットプロなどエアゾール剤、速効性)
    • エトフェンプロックス
    • エンペントリン (衣類用防虫剤、常温での揮発性が高い)
    • シフェノトリン
    • シフルトリン (粉剤)
    • シラフルオフェン (シロアリ、残効性)
    • トランスフルトリン
    • ピレトリン (蚊取線香)
    • フェンバレレート
    • フェノトリン (コックローチなど、残効性)
    • フタルスリン
    • フラメトリン (蚊取線香、電気蚊取など)
    • プラレトリン (エアゾール剤、電気蚊取など)
    • プロフルトリン (衣類用防虫剤、常温での揮発性が高い)
    • ペルメトリン (ヒゼンダニ、疥癬など、残効性)
    • メトフルトリン (電気蚊取)
    • レスメトリン

注意点

中には水に溶けやすく、しかも魚毒性が高いものがある。水槽で魚を飼っている場合、室内で使用して問題ないかどうかを事前に確認する必要がある。

また、カブトムシ、クワガタ、スズムシといった昆虫類を飼っている場合、これらの昆虫も死んでしまうので使用してはならない。

人間への毒性の考え方

ピレスロイドは、大量に暴露すれば人間でももちろん有害であろう。しかし、昆虫に効果がある程度の濃度ではヒトには殆ど毒性がないため、ピレスロイドは安全性の高い殺虫剤として広く使われている。

例えば、2016(平成28)年6月現在の「アースノーマット」の成分は「メトフルトリン」である。メトフルトリンのラットの毒性は次の通り。

  • ラット 経口(雄) 概略致死量 > 2000mg/kg
  • ラット 経口(雌) 概略致死量 2000mg/kg
  • ラット 経皮(雄雌) 概略致死量 > 2000mg/kg
  • ラット 吸入(雄) 概略致死量 1960mg/kg
  • ラット 吸入(雌) 概略致死量 1080mg/kg

ラット 吸入(雌)の概略致死量 1080mg/kgがそのまま人間に適用できると仮定すると、体重1kgあたり約1gが致死量であり、体重60kgなら約60gが致死量となる。

アースノーマットの60日用の場合は1本あたりメトフルトリンが180mg含まれるとされているので、体重60kgの概略致死量にするにはこのボトルを300本以上ということになる。経口致死量は倍とのことなので、飲んで致死量にするなら600本以上を一気飲みしないといけないことになる。

つまり、日常的な使用量では致死量には到底到達しない。この程度の軽微なリスクで、病気を媒介する蚊、ハエ、ゴキブリ、ダニなどの虫を防除できる。

使用するかどうかは、効果と副作用を天秤にかけ、効果のほうが得るものが多いと判断される場合になされるべきであり、わずかでも副作用があるなら使用するべきでなく甘んじて被害を受け入れるべき、などとして防虫剤を排斥するのは、非科学的なことである。

用語の所属
殺虫剤
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