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小説家、歌人。1872年5月2日(明治5年3月25日)、内幸町の東京府官舎で樋口則義の次女として生まれる。本名、奈津。夏子とも書く。
15歳になると、中島歌子の「萩の舎」に入塾し、和歌を学ぶ。翌年、家督を継いでいた長兄が結核で死亡。そのとき次兄は放蕩を理由に養子に出ていたため、1888(明治21)年に17歳で女戸主となる。父は傾いた家運を盛り返そうとするが失敗し、樋口家は破産する。その後、18歳の時に父が死没する。
生活の為に針仕事と洗濯で家計をまかなおうとしたが足りず、知人に借金してまわる生活が始まる。そんなとき、萩の舎の先輩である三宅花圃が女流作家として認められたことに触発され、自分も小説家になろうと決意する。そこで朝日新聞の専属作家である半井桃水に弟子入りし、出版社を紹介されるが、原稿はまったく売れなかった。
その後、萩の舎で代稽古で「源氏物語」を講ずる一方、荒物と駄菓子を扱う店を開いた。このときに王朝文学の教養を身に付ける一方で、萩の舎が華族の集まる場であったことから、明治社会の頂点と最下層の生活を同時に知ったことが、一葉の作品に大きな影響を与える。
1893(明治26)年ごろからようやく原稿が売れ始め、「文學界」の若い文学者が訪ねてくるようになる。一葉はこの「文學界」に「琴の音」「花ごもり」を寄稿し、「たけくらべ」も連載する。
1896(明治29)年、「たけくらべ」を推敲の上、「文藝倶樂部」に一括掲載したところ、幸田露伴や森鷗外の絶賛を受け、一躍注目を集めた。
原稿の依頼が相次ぐ中、八月に結核で絶望的と診断される。執筆すらできなくなり、11月23日に死去。25歳の若さであった。
2004(平成16)年から発行されるE券五千円札の表には一葉の肖像が描かれる。生涯お金に苦労した一葉が描かれるというのは、皮肉なものである。
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