覚醒剤
読み:かくせいざい
外語:stimulant

 神経を興奮させ、眠気や疲労感、不安などを抑える薬。睡眠薬の逆の薬ともいえる。
 大きくアンフェタミン系とメタンフェタミン系に分けられ、後者の方が効果が強い。アドレナリン(脳内麻薬)と同様の作用を持っている。
目次

概要

種類
 日本国内では、効果が強いメタンフェタミンが主流である。次のような俗称で出まわっている。
 またこれらとは別に、医薬品として使われる合法の覚醒剤もある。

特性
 と違い身体依存(薬が切れると手がふるえる等)は無く、精神依存(脳が薬を欲しがる)は酒よりやや強くある。
 毒性は酒よりも弱いが、コカインよりは強い。
 耐性の上昇が早く依存症になる量に到達しやすいことが、覚醒剤最大の恐怖とされる。
 また取り締まりが厳しいため価格も高い。

取り締まり
 日本では覚せい剤取締法によって、輸入、輸出、所持、製造、譲渡、譲受及び使用が禁止されている。
 覚せい剤の不法所持の最高刑は10年以下の懲役である。

特徴

効能と副作用
 効能は、疲れが吹き飛び、眠くならないことである(ゆえに「覚醒」剤と呼ばれる)。
 結果として服用者は常時活動状態となるため、使用後は何日も寝ない、などということもある。
 しかし、それでは脳も体も極度に疲労する(本人は薬の効果で疲れを感じない)ため、薬の効果が切れると体の疲労から強力な脱力感に見舞われ、更に幻覚幻聴が出たりすることになる。

シャブの効能
 昔ならヒロポン、今ならシャブが覚醒剤の代名詞である。
 シャブの効果を簡単に言えば、スーパーサイヤ人になれる。但し最初のうちだけで、すぐに耐性が付き、お金もなくなり体も壊して不幸になる。
 実際の経験者によると、これは「元気の前借り」だそうである。利子が物凄い前借りだという。

依存性と耐性
 覚醒剤の怖さは、耐性が生じるのが早いことにあり、依存症になる量に耐性が到達しやすいことにある。
 依存性自体は低いと考えられており、依存性のうち身体依存は、煙草コーヒー、寝る前のオナニーよりは低いとされている。問題は精神依存であり、酒や煙草などと比較して、一回目の使用における衝撃が激しい。
 たとえ覚醒剤を辞めることはできたとしても、その快感は忘れることができないため、一生我慢し続けなければならない。これがいわゆる精神依存という依存性である。
 そして常用すると、体は覚醒剤なしでは機能しなくなるようになる。このため、依存性が低いとは言っても実際に始めると、なかなか抜け出せなくなる。数ある違法薬物の中でも、「一度ハマると抜けられない」とされているのが覚醒剤である。
 そもそも、なぜ覚醒剤を使うと廃人にまでなるかというと、精神依存が進んでまともな社会生活が送れなくなるからであり、そして常習の末は、体の機能が破壊された「廃人」である。廃人の治療は非常に困難である。
 かくして、自力で回復できず社会的にも負荷の高い病人を作ることになるため、覚醒剤はどこの国でも禁止されているわけである。

常習から廃人まで
 覚醒剤が辞められなくなり依存性を持つのは、脳内麻薬の代替として機能するからである。
 黒質から分泌される神経伝達物質であるホルモン(ドーパミンは、アドレナリンノルアドレナリン)に変化し興奮や快楽をもたらすため脳内麻薬と呼ばれているが、覚醒剤(アンフェタミンメタンフェタミン)の分子構造はドーパミンに類似しているため、同様の効果をもたらす。
 結果、黒質はドーパミン(および類似物質)が過剰にならないように産生を中止し、やがて黒質変性を招き黒質は機能しなくなる。そして、脳は一度死んだら再生しない。二度と正常な黒質は生えてこないのである。
 こうなると、「クスリ」無しでは生きられなくなる。黒質が変性すればするほど、「クスリ」なしでは快楽を感じなくなる。そして「クスリ」を打ち続けると、どんどん黒質は変性しドーパミンが出なくなるという悪循環に陥り、最後には全くドーパミンが産生されなくなるという致命的状況になる。こうなると、晴れて完全な廃人である。
 さて、ドーパミンの量変化は副交感神経の神経伝達物質アセチルコリンにも影響する。ドーパミンが減少するとアセチルコリンが増加する、その逆なら逆になるという拮抗関係があるが、このバランス変化により運動障害を招く。パーキンソン病は原因を同じくする病気だが、廃人になってもパーキンソン病のように体が動かなくなる。
 またドーパミンが減少または欠乏すると、ドーパミンから作られるノルアドレナリンアドレナリンも減少または欠乏するため、覚醒レベルや、交感神経の働きが悪くなり、致命的である。
 覚醒剤が「利子が物凄い元気の前借り」とは、そういうことなのである。そして人は、その「物凄い利子」を返す力を持っていない。

禁断症状
 覚醒剤の禁断症状から、精神を病む者も多い。統合失調症(精神分裂病)などが一番よく見られる精神病である。
 しかし、それでも手を出してしまうほど、覚醒剤とは強烈な快楽が伴うものであるらしい。
 そして精神を病んだ状態で用いた結果、多くの異常行動を起こしたり、犯罪を起こしてしまう傾向にある。

痩せる、やつれる
 覚醒剤常習者は、殆どが痩せている。というよりは、やつれている。それも病的に。
 覚醒剤を使用すると食欲が失われることや、覚醒剤は高いことから食事を最低限にして覚醒剤購入費用を捻出するなどのため、痩せるのだと考えられている。
 このため「すぐにやせられる薬がある」などとして覚醒剤に誘う例がよくあるとされる。

常習者の特徴的な顔立ち
 覚醒剤常習者の殆どは、みな似たような顔立ちに変化する。
 明らかに不健康そうな土気色の顔色となり、顔には吹き出物が噴出、頬はこけ顔は歪み、そして死んだ魚のような目をしている。
 覚醒剤捜査を担当する捜査官は、顔を見ればすぐに常習者かどうか分かるというほど、見るに堪えない病的な顔に変化してしまう。
 また、合法ドラッグ(昨今では危険ドラッグとも)やハーブなどであっても、ケミカルなものを連用すると殆ど例外なく同様の顔になる。

用法

一般的な用法
 体内に取り込めば良いので、使い方は色々ある。
 覚醒剤というと漠然と注射が連想されるが、現実にはこれをやるのはかなりのヤク中で、もっと安全(?)な方法を使う人が多いのではないかと考えられてはいる(もちろん、街中で100人に聞きました的な事ができる訳もないので実際のところは良くわかってはいないが)。

ドラッグカクテル
 そのまま使うだけでは足りないヤク中は、他の薬を混ぜて使う。それをドラッグカクテルという。
 覚醒剤を使うカクテルには、次のようなものが知られる。
 トリップしたまま帰ってこられなくなることもある。

産地の変遷

1900年代末まで
 覚醒剤は、日本ではかつては国内で製造・密造されていたが、徹底取締りによって現在ではほぼ途絶した。
 先進国では、麻薬や覚醒剤の原料になるような物質は厳しく監視され規制されているため、法の目・監視の目をくぐり抜けて原料を安定的に仕入れることは難しく、結果として現在、日本が入手する方法は輸入以外にはない。
 1970年代になると南鮮(韓国)、1980年代には台湾が対日密造拠点となったが、現在それらはほぼ壊滅された。
 1990年代になると支那での密造が活発となり、押収量の9割が支那産となった。摘発の努力により減少はしたが、現在もなお壊滅には至っていない。

1900年代末以降
 1990年代末からは北朝鮮経由での密輸が増加し、日本での流通量の7割は北朝鮮からの密輸物となった。
 なぜなら、万景峰(ばんけいほう)号など、北朝鮮からの船舶の荷物はスルーパスで日本国内に持ち込めたため、密輸が容易だったためである。
 後に北朝鮮船籍の全船に立ち入り調査するようになってからは押収量が激減し、2002(平成14)年の押収量は387.9kgで4割が北朝鮮製だったが、2003(平成15)年の押収量は僅か1.9kgと、前年の0.5%に激減したとされる。大変喜ばしいことである。

今後の動向
 今後も北朝鮮からの直接の密輸は難しいと判断されたか、最近は再び支那経由での密輸が増加している。
 日本で違法に流通され、そして押収された覚醒剤の生産地は、支那、香港、北朝鮮が主だとされている。
 それでも全体量が少ないため、末端で売買されるものには混ぜ物が増やされており、品質は劣化しているらしい。

覚醒剤という商売
 商売としてのヤクの旨味は、巨大な利鞘が稼げるところにある。
 北朝鮮も最初は小規模にやっていたが、利益率が極めて良いことと、万景峰(ばんけいほう)号がフリーパスだったこともあり、低リスクで、ルートが確立するに連れ次第に大胆になった。
 もちろん、それは当時の金正日の命令に基づいていた。馬鹿は楽して儲けたがるからである。

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