煙草
読み:たばこ
外語:cigarette

 たばこ、莨。ドラッグの一つ。法律では、ナス科タバコ属の一年草「タバコ」の葉で作ったものを煙草として規制し、満20歳未満の未成年への使用を規制している(未成年者喫煙禁止法)。
目次

概要

薬効成分
 タバコの葉(以下、葉たばこ)に含まれる、主要な薬効成分は「ニコチン」である。
 含まれるニコチンは、即効性のドラッグとして効果がある。
 ニコチンは、煙を吸ってから約7秒(8cBeat)で脳に達するが、ここまでの即効性を持ったドラッグは殆どない。紙巻き煙草1本あたり、15mg〜20mg程度のニコチンを含有する。

由来
 葉たばこは南アメリカ原産で、15世紀から16世紀頃にスペインに伝わり、これがヨーロッパはじめ世界中に広まった。
 タバコという名は、この時のスペイン語tabacoに由来し、これが各国で使われるようになった。
 日本には南蛮貿易で伝わり、日本でも葉たばこの栽培が始まった。

特徴

利用方法
 葉たばこは、次のように加工されて「煙草」として使われる。

世界の生産国

上位国
 FAO(Food and Agriculture Organization)の2002(平成14)年統計では、生産量上位国は、次の通り。
  1. 中華人民共和国 ‐ 239万トン(37.7%)
  2. ブラジル連邦共和国 ‐ 65万トン(10.3%)
  3. インド ‐ 58万トン(9.1%)
  4. アメリカ合衆国 ‐ 40万トン(6.4%)
  5. ジンバブエ共和国 ‐ 17万トン(2.7%)
 この年の世界の葉たばこ総生産量は635万トンだとされる。

生産国
 FAOその他の情報によると、1997(平成9)年の葉たばこ生産量は、次の通りとされる。割合は、世界総生産に占める割合である。
  1. 中華人民共和国(支那) ‐ 339万トン(42.1%)
  2. アメリカ合衆国 ‐ 74.6万トン(9.3%)
  3. インド ‐ 62.4万トン(7.8%)
  4. ブラジル連邦共和国 ‐ 57.7万トン(7.2%)
  5. トルコ共和国 ‐ 29.6万トン(3.7%)
  6. ジンバブエ共和国 ‐ 19.2万トン(2.4%)
  7. インドネシア共和国 ‐ 18.4万トン(2.3%)
  8. マラウイ共和国 ‐ 15.9万トン(2.0%)
  9. ギリシャ共和国 ‐ 13.3万トン(1.7%)
  10. イタリア共和国 ‐ 13.1万トン(1.6%)
  11. アルゼンチン共和国 ‐ 12.3万トン(1.5%)
  12. パキスタン・イスラム共和国 ‐ 8.6万トン(1.1%)
  13. ブルガリア共和国 ‐ 7.8万トン(1.0%)
  14. カナダ ‐ 7.1万トン(0.9%)
  15. タイ ‐ 6.9万トン(0.9%)
  16. 日本国 ‐ 6.9万トン(0.9%)
  17. フィリピン共和国 ‐ 6.1万トン(0.8%)
  18. 大韓民国(南鮮) ‐ 5.4万トン(0.7%)
  19. メキシコ ‐ 4.4万トン(0.6%)
  20. バングラデシュ人民共和国 ‐ 4.4万トン(0.6%)
  21. スペイン王国 ‐ 4.2万トン(0.5%)
  22. ポーランド共和国 ‐ 4.2万トン(0.5%)
  23. キューバ共和国 ‐ 3.7万トン(0.5%)
  24. モルドバ共和国 ‐ 3.6万トン(0.5%)
  25. ベトナム社会主義共和国 ‐ 3.2万トン(0.4%)
  26. ドミニカ共和国 ‐ 3.0万トン(0.4%)
  27. マケドニア旧ユーゴスラビア共和国 ‐ 3.0万トン(0.4%)
  28. キルギス共和国 ‐ 3.0万トン(0.4%)
  29. 南アフリカ共和国 ‐ 2.9万トン(0.3%)
  30. タンザニア連合共和国 ‐ 2.5万トン(0.3%)

日本での生産地
 JTが煙草製造に使うタバコの葉は、国産に加え、輸入した海外産を用いている。2007(平成19)年産のJT買入実績では、次の通り。
  1. 熊本県(4191トン)
  2. 宮崎県(3805トン)
  3. 青森県(3676トン)
  4. 岩手県(3674トン)
  5. 鹿児島県(2705トン)
 全国的に栽培されているが、九州での栽培が多いとされている。
 JTは輸入国を公表していないが、近隣の支那・南鮮は自国内消費用の生産で輸出を殆どしていない(日本も同様)ため、輸出の多い、マラウイ、ジンバブエ、キルギス、モルドバ、マケドニア、ブルガリア、ドミニカ、タンザニア、ブラジル、ギリシャといった国々から必要に応じて輸入しているものと思われる。

有害性

煙草の害
 煙草には様々な害がある。
 煙草を吸うと知能低下を招く。
 煙草は馬鹿が吸うものだが、吸えば更に馬鹿になるのである。

依存性薬物
 煙草は依存性薬物である。身体依存は無く精神依存のみだが、強い依存性があるため容易にはやめられない。これがニコチン依存症という病気である。
 このため、人混みの中でもわざわざ喫煙しなくてはいけなかったり、吸えなかったらイライラし、暴れるなど、不逞な行動を取る者が多い。
 「嗜好品」だとする者もいるが実際にはそうではなく、後述する国際条約でもその旨が述べられており、日本国政府もそれに同意して条約に署名した。

幻覚作用
 一旦吸っても3時間程度で切れてしまうため、たびたび禁断症状が発生する。
 煙草を吸うことでニコ中の禁断症状が緩和される。吸った本人は薬物の効果により「頭がはっきりとしてきて回転が良くなる」「コーヒーより効果が高い」「ストレス解消」といった効果を感じることになるが、このような万能感を伴った幻覚作用が特徴である。
 また、人より税金を多く納めている(たばこ税)ことに伴う優越感、「税金を払ってやってる」といった症状も示すが、たばこ税を納める義務など元々無い。所詮、吸いたくて吸っているだけであり、税金を払いたくなければ吸わなければ良いのである(酒なども同様)。

毒性
 煙草には40以上の発がん性物質が確認され、また性ホルモンの低下を起こすことも知られている。
 煙草の害はで一般によく知られているのは肺がんだが、それ以上にCOPDという病が流行している。それ以外にも、ありとあらゆる病気の原因となることが知られ、様々な病気のリスクが高まる。

発がんリスク

フェナントレン
 たばこに含まれる発がん物質の一つに、フェナントレンがある。
 米国立がん研究所の資金提供により、スティーブン・ヘクト(Stephen Hecht)ら米科学者の研究チームが煙草に含まれる物質がヒトのDNAに及ぼす効果を追跡研究し、結果が2011(平成23)年2月15日の米国化学会の学術誌「Chemical Research in Toxicology(毒物学の化学研究)」に掲載された。
 結果は、煙草をわずか数回吹かすことで、数分以内にがんに関連する遺伝子損傷が起きる危険性があるとされた。
 毒性のある多環芳香族炭化水素(PAHs)のうち、煙草の煙に含まれる中で最大の発がん性物質と見込まれているフェナントレンの量を調べたところ、煙草の効果は血流に有害物質を直接注入するのと同程度に速く、血流内のフェナントレン量は喫煙を終えてからわずか15〜30分で最高値に達した。
 フェナントレンは、DNAを損傷し、突然変異を発生させ、がんを発症させる危険性がある。

フェリチン
 肺がんになる理由として、喫煙や石綿(アスベスト)吸引によって生じる中皮腫がある。
 煙草や石綿などの粉塵には鉄が含まれており、これが肺に入ると鉄を含む「フェリチン」という鉄貯蔵蛋白質が形成される。フェリチンは重金属などを肺に貯蔵させる働きがあり、空気中にある放射性物質ラジウムを高濃度に蓄積させるため、結果、高濃度のラジウムが出す放射線で強力な内部被曝で細胞をがん化させる。

知能低下
 喫煙者のIQ(知能指数)は、非喫煙者に比べて低い傾向にある。
 イスラエル国立テルハショメル・シバ病院のマーク・ウィーザー博士(Dr. Mark Weiser)ら研究チームが、イスラエル軍に入隊した18歳の男性20,211人を対象に調査した。母集団は、1日1本以上吸う者が28%、一度も吸ったことのない者が68%、元喫煙者が3%だった。調査結果は、1日の喫煙量が煙草1箱かそれ以上の場合、非喫煙者に比べてIQが7.5ポイント低かったとする。
 また洲本市禁煙支援センターによれば、煙草の煙にはが含まれ、受動喫煙や妊婦に喫煙により子供の脳に鉛が沈着し、知能低下を引き起こすことが内外の研究で明らかになったとしている。
 煙草1本あたり、0.96μg〜2.0μgの鉛が含まれている。うち、主流煙中に2〜6%、副流煙中に10〜16%が含まれる。
 受動喫煙がある小児の血中鉛濃度は4μg/dl程度、無い小児の3μg/dlと比較して33%も多く、優位差があった。また11歳時の知能指数も、妊婦喫煙0本時で100‐102程度に対し、妊婦が喫煙した場合は1日1から9本で97程度、1日10本以上で96程度にまで落ちることが示されている。

百害あって一利なし
 煙草はドラッグの中でも毒性の強いものの部類に入りながら、メリット(良いところ)は何一つもない。しかし喫煙常習者は喫煙に何とか正当性を見つけようとするため、喫煙に対し思考が独善的になる。ひとたび煙草に手を出して薬物中毒つまりニコチン依存症になると、煙草に関してのみ正常な思考ができなくなる。
 煙草にはデメリットが多すぎるので利用しないに越したことはない。

規制
 煙草は、国際的にも「不要なもの」と認識されており、地球上から無くすべきものの一つと考えられている。
 かくして、WHOの枠組みが国際条約「たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約」として世界各国で締結されている。
 この条約に、発効後五年以内に適当な立法措置等を取る必要があるとされている。日本国の場合は2005(平成17)年2月27日に発効したため、2010(平成22)年2月27日までに必要な規制や立法措置を行なうことになっていた。

30年
 実際に喫煙を初め、自覚症状が出る末期がんに至るまでには20〜30年程度という長い時間がかかる。
 喫煙とがんの関係は統計でもはっきりとしたデータが出ており、概ね、煙草の消費量と肺などのがん患者の数が30年ずれて一致する。

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