白色矮星
読み:はくしょくわいせい
外語:white dwarf star

 高密度星の一種。太陽質量の3倍以下の質量を持った主系列星の成れの果て。
目次

概要

由来
 質量がそれほど大きくない恒星が一生を終えた後の姿の一つである。中性子星などと共に恒星の亡骸とも呼ばれる。
 太陽質量の0.6倍〜3倍程度の星が進化して赤色巨星になり、やがて膨張した外層が星の外へと流れ出し、中心部分のみが残ることがある。これが白色矮星である。いずれ、太陽もこのようにして白色矮星になると考えられている。
 また連星を構成している場合、もう一方の星(ブラックホールなど)に外層を剥ぎ取られ、中心核だけが残り白色矮星になる場合もある。

最も近い白色矮星
 観測されている中で地球より最も近い白色矮星は、シリウスの伴星B(シリウスB)で、地球からの距離は8.60光年である。

特徴

性質
 直径は地球と同程度からやや大きい程度だが、質量が時に太陽と同程度くらいにもなる高密度の天体である。
 白色矮星の最大質量は太陽の1.44倍(チャンドラセカール限界)で、それ以上のものは存在しない。これを超えると重力収縮により崩壊し中性子星となるか、重力崩壊を起こして超新星爆発してIa型超新星になるかの何れかの末路を辿るとされる。
 絶対等級は+10〜+20等と暗く、HR図上では主系列星から離れた下方に位置する。

構成する物質
 白色矮星は、核融合によって生じたヘリウム炭素酸素などで構成される。
 具体的には恒星の頃の核融合反応「陽子‐陽子連鎖反応」や「CNOサイクル」および「ヘリウム燃焼過程(アルファ反応トリプルアルファ反応)」で作られた炭素と酸素で構成されるが、元の構成の質量によっては恒星時代に、そして白色矮星になってからも爆発寸前の末期状態では次の核融合反応である「炭素燃焼過程」でネオン、ネオン燃焼過程でマグネシウム等が作られることがある。
 2004(平成16)年にハーバード・スミソニアン天体物理学センターの研究グループが、炭素型白色矮星であるケンタウルス座V886星(BPM 37093)の内部は巨大なダイアモンドである、とする仮説を発表している。しかし、白色矮星という高圧下ではダイアモンド以外の相の方が安定するという仮説もあるため、白色矮星を構成する炭素がどのうような結晶構造を取り安定化しているのかはこれを著している時点では不明である。

発光

自発発光
 白色矮星は通常の恒星のように核融合などによるエネルギーは生成していない。星の内部の熱エネルギーのみで発光しており、やがて冷えて暗くなり黒色矮星となる。星は電子の縮退圧によって重力とバランスしている。
 白色矮星が連星を構成している場合、伴星とともに新星変光星などの活動的な天体となることもある。

新星
 白色矮星が連星系を形成し、白色矮星の重力によって相手の星から水素ガスなどを剥ぎ取る状況である場合、その水素ガスは白色矮星へと降り積もり、落下時の位置エネルギーや重力によって加熱される。これが一定の限界を超えたときに核融合を起こす。
 通常の恒星の場合、核融合が活発化した場合は恒星自体が膨張してその速度を下げるという調整が働くことで比較的安定した反応を維持するが、白色矮星表面ではそのような調整は働かず、核融合は簡単に暴走する。
 こうして爆発を起こす現象を新星という。

超新星
 白色矮星が連星系を形成し、かつ近接連星が大質量恒星であった場合、ガスを剥ぎ取る速度が激しくなり、短期間に大量のガスが白色矮星表面に降り積もることがある。
 この場合、一気に激しい核融合が発生し、その爆発により白色矮星を吹き飛ばしてしまう。これをIa型超新星という。

連星系

白色矮星との連星系
 通常の恒星と近接連星を構成する場合、この天体は上述のように新星Ia型超新星といった激変星として観測されることがある。
 恒星から剥ぎ取られ白色矮星に流れる物質(主に水素)が爆発のエネルギー源となるが、ごく稀にその剥ぎ取った水素が白色矮星で核融合を起こしヘリウムを作ることで再び赤色巨星に戻ることがある。いて座V4334星がそれであり、櫻井幸夫が超低速新星(共生新星)として発見したことからこの天体は桜井天体(Sakurai's Object)と呼ばれている。
 白色矮星の近接連星は、非常に高速に互いの周りを回る。この時、この連星は重力波を放出することでエネルギーを少しずつ失いながら徐々に接近し、やがて衝突・合体する。

白色矮星連星
 白色矮星同士の連星も、多くはないが存在し、銀河系内にも僅かだが存在が知られている。また極めて稀な例だが、白色矮星同士が宇宙空間を移動し、由来の異なる白色矮星同士が偶然出逢い衝突合体した例も発見されている。
 二つの白色矮星が衝突した結果については幾つかの仮説があり、次のような天体ができる可能性が指摘されている。
 白色矮星の衝突合体の結果、質量がチャンドラセカール限界を上回れば、中性子星になると予測される。
 もし質量がそれに満たない場合、恒星の亡骸であるはずの白色矮星も、二つが合体すると充分な熱を発生させることが可能となり、もって核融合が再開され再び輝きだすとする仮説がある。この核融合のエネルギーにより星は半径1000倍以上にまで大きく膨張するという。

白色矮星と恒星の合体

合体
 シリウスのように、白色矮星と恒星の連星は良く知られる。
 この両者が衝突することもある。この結果についても幾つかの仮説があり、次のような可能性が指摘されている。

Ia型超新星
 2006(平成18)年9月、地球から約2億3800万光年の距離にある銀河「NGC 1260」内で発生したIa型超新星「SN 2006gy」が、後の観測と研究から、白色矮星と恒星の衝突によるものだったとする研究結果が発表されている。
 これは通常よりも10倍以上明るい超高輝度超新星だったが、前田啓一氏(京都大学)、川端弘治氏(広島大学)らの研究チームにより、白色矮星と比較的大きな伴星が周回しながら徐々に接近、やがて伴星の外層中を周回するようになると伴星のガスを周囲に放出、やがて伴星の核と合体し、超新星爆発したとする。
 爆発の際に生じた衝撃波は周囲に放出されていたガスに衝突、結果爆発のエネルギーの大部分が電磁波に変換されたことで、通常よりも明るい超新星として観測された、としている。

単一の赤色巨星
 地球から約7800光年にある「や座V星」も、太陽質量の約0.8倍の白色矮星(主星)と、太陽質量のの約3.3倍の恒星(伴星)からなる連星である。この連星は非常に接近しており、互いの周囲を12.34時間という速度で一周している。2019(令和元)年時点での平均等級は11等級であるため肉眼では見えないが、この連星はやがて衝突・合体し、この時に推定で-0.5〜5.1等級程度にまで増光、最大輝度は1ヶ月間程度持続されると予想されている。
 合体後は、中性子星は飲み込まれた恒星の核の一部となり、核融合反応を起こすなどは通常の恒星の核と同様に働き、単一の赤色巨星になると考えられている。

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