ヘリウム
読み:へりうむ
外語:He: Helium
18族
の
希ガス
族に属する無色の非金属元素。
目次
情報
基本情報
一般情報
原子情報
物理特性
同位体
特徴
性質
凍らない
α線
製法
用途
安全性
危険性
有害性
環境影響
発見
発見者
名前
補足
供給不足
価格
ボンベの色
主な化合物
前後の元素
情報
基本情報
一般情報
元素記号
: He
原子番号
: 2
周期
: 1
族
:
18族
(0族、VIIIA族)、
希ガス
分類:
典型非金属元素
原子情報
原子量
: 4.002602(2)
電子配置: 1s
2
原子価: 0
酸化数: 0
物理特性
相
:
気体
融点
: -272.2℃(26
気圧
)
沸点
: -268.9℃
気体密度: 0.1785kg/m3 (0℃、0.1013MPa)
液体密度: 0.1250kg/l (-269℃)
臨界温度: -267.9℃
臨界密度: 0.069kg/l
CAS番号
: 7440-59-7
ICSC番号: 0603
同位体
質量数は、2から10までが確認されている。
安定同位体
は二つあり、液体を形成すると性質は大きく違ってくる。
3
He
4
He
同位体
核種
天然存在比
半減期
崩壊
崩壊後生成物
2
He
‐
陽子放射
2
1
H
β
+
崩壊
2
H
3
He
0.0001%
安定核種(中性子数1)
4
He
99.9999%
安定核種(中性子数2)
5
He
‐
7.6×10
−22
秒
中性子放射
4
He
6
He
‐
810m秒
β
−
崩壊
6
Li
7
He
‐
中性子放射
6
He
8
He
‐
119.0m秒
β
−
崩壊
8
Li
9
He
‐
中性子放射
8
He
10
He
‐
2中性子放射
8
He
質量数が6以上になると複雑な崩壊となり、中性子放射や核分裂が同時に起こることがある。
特徴
性質
水素
が
核融合
(恒星内部では
陽子‐陽子連鎖反応
)して作られる
元素
で、宇宙で二番目に多い元素である。
放射線の
α線
はヘリウム4(
4
He)の
原子核
そのものである。
常温常圧では無色無臭の気体である。
凍らない
安定同位体に
ヘリウム3
と
ヘリウム4
があるが、ヘリウム3で34気圧、ヘリウム4で25気圧以下の場合、
絶対零度
でも液体のままで固体にはならない。
しかしここで大いなる疑問が生じることになる。
熱力学第三法則
では絶対零度でエントロピーが0になるとしているが、液体のままでエントロピーが0になっても良いのだろうか。こういった疑問が、超低温物理学の出発点になっている。
α線
放射線
の一つ
α線
を構成する
α粒子
の正体は、ヘリウムの原子核(He
2+
)である。
α線は放射線の中で最も「大粒」であり、紙でも遮蔽できる一方、電離作用は強い。
製法
工業的には、ヘリウムは
天然ガス
生産の副産物として得られている。
天然ガス
の主成分は
メタン
であるが、天然ガスの井戸の中には1%弱程度ヘリウムを含むものがあり、これを分離して得る方法が一般的である。従って、ヘリウムの生産量や価格は、天然ガスの需給に依存している。
日本にはヘリウムを多く含むガス井がないため日本では生産されていない。現在ヘリウムは、アメリカ、アルジェリア、ポーランド、ロシアなどで生産されているが、このうちアメリカは世界の生産量の7割強程度を生産している。日本はヘリウムを全量、アメリカから輸入している。
用途
ヘリウムは、水素同様に非常に軽い上、
水素
と違って不活性であり爆発性がないため、気球や飛行船のガス、風船、ダイバー用酸素ボンベなどとして広く使われている。
また熱伝導率が高く、あらゆる元素の中で最も沸点(約4K(-269℃))と融点が低い。
液体ヘリウム
は他のあらゆる物質よりも低温であるため、
超伝導
や低温物理学実験の冷却材などとして使われている。また液体ヘリウムは半導体製造、光ファイバー製造、航空宇宙産業分野など様々なハイテク産業で使われるほか、溶けやすく人体にも無害という特徴があるため医療分野でも使われており、加えて医療分野では
NMR
や
MRI
などで超伝導電磁石の冷却などに使われている。
人体に無害という利点から、ダイバー用酸素ボンベでも使われている。
酸素ボンベ
は、酸素100%では人体に有害なので通常は空気または空気と同等の比率(酸素20%+窒素80%)を使う。しかし窒素も水に溶けるため、特に深く潜るダイバーの場合は
圧力
の高い深海で窒素が血液に溶け、水上に出たときにそれらが気化して危険である。そこで、酸素20%+ヘリウム80%(より水に溶けにくい)を使う。なお、ヘリウムを使うと
音速
が変わるので声が変になる。
安全性
危険性
引火点: なし
発火点: なし
爆発限界: なし
有害性
刺激
腐食性: (該当資料なし)
刺激性: (該当資料なし)
感作性
: (該当資料なし)
毒性
急性毒性
: (該当資料なし)
慢性毒性
: (該当資料なし)
がん原性: (該当資料なし)
変異原性
: (該当資料なし)
生殖毒性: (該当資料なし)
催畸形性
: (該当資料なし)
神経毒性: (該当資料なし)
環境影響
分解性: (該当資料なし)
蓄積性: (該当資料なし)
魚毒性: (該当資料なし)
発見
発見者
1868(明治元)年にイギリスのノーマン・ロッキャー(Norman Lockyer)と、フランスのピエール・ジュール・セザール・ジャンサン(Pierre Jules C〓sar Janssen)が、それぞれ別々に、
皆既日蝕
の太陽光スペクトルから発見した。
発見後暫くは地球上には存在しないものと考えられていたが、
19世紀
末には地球上にも存在する事が分かった。
名前
ヘリウムと命名したのは、そのうちのロッキャーである。
名前は、太陽から発見されたため、
ギリシャ神話
の太陽神
ヘリオス
(Helius)から命名された。
このヘリウム(Helium)という名前であるが、本来 "-ium" は金属元素に付けるべき語尾である。ヘリウムは不活性ガスなので、"-on" を付けてヘリオンとなるべきだったが、なぜかヘリウムと命名されてしまった。
補足
供給不足
アメリカは1920年代からヘリウムの備蓄を開始した。結果、全世界の備蓄量の約1/3がアメリカだったとされている。
しかしアメリカも財政難であり、また冷戦も終わり大量にヘリウムを備蓄する必要性も薄れてきたため、米国土地管理局(BLM)がこの国家備蓄を取り崩して民間への売却を始めた。
半分程度を取り崩したことから、そろそろ売却を終了するかどうかという政治的情勢があるが、ヘリウムの需要は世界的に上昇し続けているため、もうしばらくは売却を継続することになっている。しかし備蓄も無限ではないため、このままではアメリカの備蓄が枯渇するのは時間の問題である。どこかで新たな資源開発をする必要があるが、これが難航している。
先に述べたようにヘリウムは天然ガスの副産物であるため、天然ガス価格が下がると採算が取れないことから天然ガスと共にヘリウムも生産量が落ちるという結果となっている。
またアメリカも、自国のNASAへの供給を最優先しているため、かくして現在では世界中でヘリウムの深刻な供給不足が続いている。
価格
液体
ヘリウム4
(
4
He)は1リットルで1,500円前後という時代があったが、近年は供給不足によって値上がりしている。また冷却が必要なため、地方だと輸送にコストが掛かる。
同位体の
ヘリウム3
(
3
He)は、希少なため1リットルで何と二千万円もすると言われている。
ボンベの色
ヘリウムボンベはグレーである。他に
水素
は赤、
酸素
は黒、
二酸化炭素
は緑、
窒素
などはグレーとなっている。また、ボンベのバルブが左ネジ(
メタン
などの可燃性ガスは全て同様)。
主な化合物
ヘリウムは不活性であり、
化合物
を作らない。
前後の元素
1
水素
‐ 2
ヘリウム
‐ 3
リチウム
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