中性子星
読み:ちゅうせいしせい
外語:neutron star

 高密度星の一種。太陽と同程度の質量を持つが、しかしその半径はたかだか10km程度しかない。
目次

概要
 太陽の8倍以上の質量を持つ重い星が超新星爆発で死を遂げた後、その残骸として残った中心核部分が中性子星である。このようにしてできた中性子星は、星というよりは、むしろ巨大な原子核である。但しその密度は標準原子核密度より大きい。
 中性子星の主成分は中性子で、中性子以外に5%程度の陽子やその他のハドロンが混合していると考えられているが、詳細については研究中であり、これを著している時点ではまだ解明されていない。中性子星同士の衝突といった大規模な宇宙現象も観測されており、これが、こういった現象が宇宙における鉄よりも重い元素の合成の場であると考えられるようになっている。
 観測されている中で地球より最も近い中性子星は、RX J1856.5-3754で、地球からの距離は400光年である。
 観測されている中で地球より最も遠い中性子星は、γ線バーストGRB 101225Aの原因となった中性子星として存在が推定されているもの。地球からの距離は一説ではz=0.847で、見かけの距離は71億光年、実際の距離は96億光年である。

形成

超新星爆発
 質量が太陽質量の8倍を超える恒星は、その終焉で超新星爆発を起こす。
 物質重力で潰れ、陽子中性子電子の固まりになったものを白色矮星といい、単に外層が吹き飛ぶだけならこの天体になる。しかし白色矮星の最大は太陽質量の1.44倍(チャンドラセカール限界)で、それ以上のものは存在しない。これを超えた場合、重力収縮と輻射圧によって超新星爆発を起こし外層が吹き飛ぶ。結果、電子の縮退圧が重力収縮に負け、電子が原子核内の陽子に捕獲されて中性子となり中性子過剰核となる。
 中性子過剰核のままでは不安定で自発核分裂を起こしてしまうので、安定化のために原子核自体も結合を始め、僅かに残る電子と陽子の他は、全体的に中性子の固まりになったような一種の超巨大原子核、中性子星が作られる。
 こうして重力収縮との安定を保つのが中性子星であるが、中性子星も質量の上限があり、一定の質量を超えると重力崩壊を起こし中心核はブラックホールにならざるを得なくなる。上限はまだ正確な値は分かってはいないが、太陽質量の1.5倍〜3.0倍(トルマン・オッペンハイマー・ヴォルコフ限界)の範囲内にある。
 近年では、中性子星とブラックホールの中間段階として「クォーク星」も発見されている。中性子が潰れてクォークとなり、それが塊と化したものがクォーク星である。

白色矮星同士の衝突
 まだ仮説段階であるが、連星を構成していた白色矮星同士が衝突することで中性子星が生じるとする説がある。
 白色矮星の衝突合体の結果はチャンドラセカール限界を上回るため、最終的に中性子星になると予測することは自然である。

特徴

分類
 中性子星はパルサー、主として電波パルサーとして観測されている。近年は、X線γ線で観測されるものも多く発見されている。
 観測や性質などから、別の名で呼ばれることも多い。

一般的な質量と最大質量
 よく観測される、一般的な中性子星の質量は太陽質量の1.3倍〜1.5倍程度である。最大質量は、トルマン・オッペンハイマー・ヴォルコフ限界により3.0倍を上回ることはなく、実際には2.5倍程度を超えることはないと見込まれている。
 ドイツ・フランクフルト大学のLuciano Rezzolla氏らによる2018(平成30)年の研究発表によると、自転していない中性子星の最大質量は太陽の2.16倍としている。
 パルサーのように高速自転する中性子星では大質量星も発見されており、例えばおうし座方向にある中性子星でありパルサーであるPSR J0348+0432は、質量が太陽の2.01倍と見積もられている。

自転
 理論上、誕生したばかりの中性子星は、遠心力で星が砕けない限界、秒間1000回以上の高速回転(自転)をしている。
 しかし実際に観測される中性子星はどれも遅く、1回転するのに何秒もかかるようなものまである。中性子星の減速する理由は謎で、様々な理論が発表されている。
 現時点でもっとも有力視されている論は、高速自転する高密度星は表面にrモードと呼ばれる現象が生じ、これが重力波を放出する。この際、角運動量と回転エネルギーが失われ、中性子星の回転を遅くする。

密度など
 中性子星の半径は僅か10km〜15km程度しかなく、超高密度である。大気は厚さ1m程度で、表面温度は一般に100万度以上であるとされている。
 典型的な中性子星の場合、次のようになると見込まれる。
 中性子星の物質を2リットル集めると富士山と同質量、霞ヶ関ビル1/3杯分程度でよりも重くなり、東京ドーム10杯分で地球と同じ重さとなるとされている。

最大密度
 中性子星には限界となる最大密度が存在する。
 密度の限界は、クォークを結びつける強い相互作用(核力)の性質で決まっており、約1015g/cm3となる。
 ここから、質量には上限があることも求められる。具体的には、上述のように、太陽の3倍程度となる。

中性子で構成される理由
 中性子星が中性子からなる理由は、中性子星内部では陽子でいるより中性子でいるほうが安定するためとされる。
 自由中性子(原子核に束縛されていない中性子)の場合、半減期が約880秒程度(10分程度)であり、やがて崩壊して電子とニュートリノを放出し、陽子に変わる。これは、中性子は陽子よりも僅かに重いためである。
 n → p+ + e +  ̄(ν)e
 一方、中性子星内部では中性子になったほうが安定するため、中性子となる。
 p+ + e → n + νe
 これは、電子が縮退しており、すなわち電子のエネルギーが大きいためである。

内部構造
 中性子星では内側から順に、次のような構造になるとする説がある。
 内核の構造は未解明である。
 中性子星では、その密度のため液体を超えた超流動現象が発生するとされている。
 なお、中性子星とはいっても、全ての物質が中性子なわけではない。陽子や電子のほか、中性子星の周辺には中心に向かって収縮する重元素、つまり大気がある。これにより中性子星は電磁波を発するが、一部には定期的な電磁波を放出する中性子星があり、このような天体パルサーと呼ばれる。

連星系

中性子星の連星系
 観測される中性子星は、連星系を構成していることも少なくない。
 二つ(以上)の恒星による連星系で、そのうちより重い星が先に超新星爆発をして中性子星が作られる、中性子星+恒星という連星系が良く見られる。
 中性子星同士の連星系(連星中性子星)は、白色矮星との連星系と同様に激変星としての活動をすることがある(後述)。

連星中性子星
 ごく稀に、中性子星同士が連星を構成することがあり、これを連星中性子星という。この連星系が形成されるためには、条件が揃わなければならない。
 二つの中性子星の連星を作るためには、連星を構成する二つの大質量星がそれぞれ超新星爆発を起こす必要がある。もし誕生すれば、双方とも半径が小さい中性子星となることから、互いに接近できるという特徴があり一般相対性理論の実験場のようなものとなるが、多くの場合、連星系の双方が中性子星になる際に連星系は解体してしまうため、中性子星からなる連星は、数が少ない。
 まず重い方が先に寿命が尽き超新星爆発し、一つ目の中性子星ができる。このときの質量損失は全質量に比べれば小さいため連星は維持できる。次にもう片方の恒星が超新星爆発するが、この場合は連星系の質量の半分以上が失われることになるため力学的に不安定となり、連星は多くの場合解体してしまうと一般的には考えられている。なぜ連星系が解体してしまうかというと、連星の軌道は互いの重力=遠心力で保持されているためで、片方の質量が突如として離散してしまえば、もう片方は飛んでいってしまうからである。
 この一般的な可能性に対して、国立天文台理論研究部の守屋尭特任助教らの研究チームが2013(平成25)年に唱えた説によると、後から超新星爆発する星は先の爆発によって水素やヘリウムの外層が殆ど剥がされてしまっているため、この状態で超新星爆発を起こしても放出される物質は少ないため、力学的に不安定にならず連星系が維持される、としている。また、後から爆発する星は爆発の直前に周囲に希薄なヘリウム層を形成する可能性があるともしている。

中性子星同士の衝突
 こうしてできた連星中性子星が、やがて近接連星となり、衝突・合体することもある。この時は重力波が生じ、地球からも何例かキロノバとして観測例がある。

連星と巨星の合体
 中性子星が、連星を恒星していた赤色巨星赤色超巨星と合体し、飲み込まれた状態となる天体の存在が予言されている。これをソーン・ジトコフ天体という。
 まだ仮説であり、これを著している時点では、天体の候補はいくつかあるが実際の天体は発見されていない。

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