トリウム232
読み:トリウム-にひゃくさんじゅうに
外語:232 Th
トリウム
の同位体の一つ。
目次
情報
概要
特徴
放射能
人工用途
中性子捕獲
ブラジルの療養地
生体への影響
情報
記号:
232
Th
原子番号
: 90
質量数
: 232 (
陽子
90、
中性子
142)
天然存在比: ほぼ100%
半減期
: 140.5億年
崩壊
の種類:崩壊後生成物
α崩壊
→
228
Ra
自発核分裂(SF)
24
Ne+
26
Ne核放射
2β崩壊(2β
−
崩壊) →
232
U
主な由来
236
U (α崩壊) 半減期2340万年
概要
トリウム系列
の最初の核種。天然に産出するトリウムのほぼ100%がトリウム232で、
ウラン
、
カリウム
と共に
自然放射能
の三大要因となっている。
半減期は140.5億年と長く、このため徐々に
α崩壊
し、
α粒子
(
α線
)を放出して、
ラジウム
の
放射性同位体
であるラジウム228(
228
Ra)になり、その後も崩壊を続けて最終的に鉛208(
208
Pb)になる。これが
トリウム系列
である。
地球の
地熱
は、このラジウムやウランが地中深くでα崩壊することよって発生した熱が起源となっている。
様々な系列で崩壊するが、代表的には、最初の数回は次のような崩壊をする。
232
Th → α崩壊(半減期141億年) →
228
Ra
228
Ra → β
−
崩壊(半減期5.75年) →
228
Ac
228
Ac → β
−
崩壊(半減期6.15時間) →
228
Th
224
Ra → α崩壊(半減期3.66日) →
220
Rn
220
Rn → α崩壊(半減期55.6秒) →
216
Po
216
Po → …
特徴
放射能
放射性同位体
であるため、
放射線
を放っている。
α線を放つため、
放射性沃素
や
放射性セシウム
などより危険と見込まれている。
しかもこれが、地殻中に0.0007%も含有し資源量が豊富で、かつ地理的に偏っておらず全世界で満遍なく採取される。こうして、知らず知らずのうちに日々放射線に被曝することになるが、これを
自然放射能
という。
人工用途
中性子を吸収してβ
−
崩壊(
β崩壊
)すると、
核燃料
である
ウラン
(
233
U)に転換する特徴がある。
トリウムは豊富に産出するので、これを
原子力発電
に使うことが研究されている。
トリウムは主にトーライト(トール石)、トリアナイト、モナザイト(モナズ石)などの
鉱物
として産出する。
中性子捕獲
トリウム232は中性子捕獲によって、次のように変化する。
232
Th + n(
中性子捕獲
) →
233
Th(トリウム233)
233
Th → β
−
崩壊(半減期21.83分) →
233
Pa(プロトアクチニウム233)
233
Pa → β
−
崩壊(半減期26.967日) →
233
U(
ウラン233
)
中性子捕獲して
233
Thに変化することで、その後、
ネプツニウム系列
に乗ることになる。
ブラジルの療養地
日本ではラジウム温泉が好評で、がん患者などの湯治で客が絶えることは無いが、海外でも温泉こそないが同様で、トリウムの放射能で病気が治るとする浜辺がある。
ブラジル南東部、エスピリトサント州グアラパリ市の「アレイアプレタ(黒砂)ビーチ」は
自然放射線
量が世界最高水準とされる浜辺である。この周辺住民は年間約10ミリシーベルトを浴びているとされる。
この浜辺の黒砂は、付近の鉄鉱石鉱山から流出した
放射性元素
トリウムを含む鉱物モナザイトで、これが海に流れ込み、地形と潮流の影響でこの浜辺に集まるとされる。それ以外の浜は
淡黄色
の白砂であり、
放射線量
は普通である。黒砂の砂浜は年間放射線量が400ミリシーベルトに及ぶとの調査もあり、かなりすごい砂浜である。
古くから効能が知られ、先住民の時代から療養に使われていた。黒砂の放射線が血行に影響するとの仮説もあり、砂浜にただ座って被曝するだけでも効果的だが、さらに効率を高めるため、砂風呂のように砂に埋まる人も多い。
この砂浜で約30年間、海水浴客らの救命監視員を続けるジョアン・シリロ氏(52歳)によれば、「事故で半身不随になった人が歩いて帰ったんだ」とのことである。
そんな浜辺も、福島第一原子力発電所の事故で、放射線=危険という必ずしも事実ではない風評被害の影響を受けて、客が大幅に減り、美しい浜辺に閑古鳥が鳴いていると報じられている。
生体への影響
科学技術庁告示第五号 平成十二年科学技術庁告示第五号(放射線を放出する同位元素の数量等)
における、トリウム232の実効線量係数(ミリシーベルト/ベクレル)は、次のとおりである。
吸入摂取した場合 (酸化物及び水酸化物以外の
化合物
) 2.9×10
−2
吸入摂取した場合 (酸化物及び水酸化物) 1.2×10
−2
経口摂取した場合 (酸化物及び水酸化物以外の化合物) 2.2×10
−4
経口摂取した場合 (酸化物及び水酸化物) 9.2×10
−5
つまり酸化物及び水酸化物を10,000
ベクレル
を経口摂取した時の実効線量は0.92
ミリシーベルト
(920
マイクロシーベルト
)、吸入した時の実効線量は120ミリシーベルトである。
吸いこんだ時がかなり危険であることが分かる。
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