健康診断
読み:けんこうしんだん
病気の早期発見治療を主な目的に、疾病の有無に関わらず、身体を
検査
をするもの。特定の疾病を検査するものは検診と呼ばれ区別される。
目次
概要
検査項目
身体計測
目
耳
肺
血液検査(一部尿検査)
肝機能
肝炎ウイルス
腎機能
膵機能
電解質
糖尿病
痛風
脂質
蛋白分画
甲状腺機能
免疫検査
末梢血液
腫瘍マーカー
白血球分類
ペプシノーゲン
検尿(尿検査)
尿定性
尿沈渣
検便(便検査)
循環器(心臓機能)
血圧
心電図
CPK
X線検査
胸部X線検査
上部消化管X線検査
腹部X線検査
大腸X線検査
胃内視鏡検査
腹部超音波
直腸診
婦人化検査
その他
概要
身体測定、X線検査、
血液検査
、
尿検査
、が主な検査項目である。
一般健康診断は数時間で終わるため、午前中に終わらせることも可能。40代以上になると短期人間ドックなどでより多くの箇所を検査するが、これもおおむね午前中に終わる。50代以上ではさらに脳ドックが追加されることもある。
値段は上がるがより本格的な精密検査である人間ドックと呼ばれる検査もあり、半日、一日、一泊など様々なメニューがある。
定義では、採血の10時間前から食事をやめ、この状態で測定した数値を血糖値とする。従って前日夜からは食事を絶つ必要がある。つまり健康診断は実際に受診する前日から、すでに始まっているともいえる。
検査項目
()内は、成人男性の基準値の例である。年齢や
身長
・
体重
等で変化することもあるので、表記は参考値とする。健康診断結果報告書には、検査した人の基準値が必ず記載される。
一般健康診断では行なわず、人間ドックや、別途検査を依頼した場合のみの検査項目も含まれる。
身体計測
計測器やメジャーで直接計測する。
身長
体重
標準体重
肥満度 (-10〜+10%)
体脂肪率
(20%未満)
BMI
腹囲
標準体重は、年齢・身長・体脂肪率などから算出される理想の体重である。
目
計測器で計測する。
視力
裸眼
矯正
眼圧 (6〜22mmHg)
眼底
SCHEIE
S
H
色覚(色神)
一般健康診断では視力のみ調べる。短期人間ドックでは、眼圧や眼底は必要に応じて実施する。
健康診断の場合、視力は、矯正視力を測る場合は裸眼視力を測らない(時間が掛かるので)。
色覚検査では、
色覚異常
(
色盲
・
色弱
)が判定される。
耳
計測器で計測する。
500Hz (30dB以下)
1000Hz (25dB以下)
2000Hz (25dB以下)
4000Hz (30dB以下)
8000Hz (30dB以下)
聴力の基準値は、年齢により変動がある。老齢ほど聞こえにくくなるため、基準値も高めに変化する(例えば40代では、上から基準値が+5dBとなる(500Hzなら35dB以下)など)。
通常は、1000Hzと4000Hzのみを25dBで検査する。
聞こえない場合は、
難聴
の基準である90dB程度まで音量を上げることが多いようである。
身体障害者福祉法では、両耳が70dB以上または、片方90dB以上もう片方が50dB以上で障害者6級と認定される。
肺
肺活量計で計測する。一般健康診断では行なわない。
予測肺活量
努力肺活量
%肺活量 (80%以上)
1秒量
1秒率 (70%以上)
肺の容積や機能などを正確に調べるためにはスパイロメーターを使うが、若干安全性に懸念があり、一般健診でスパイロメーターを使うことは希である。
血液検査(一部尿検査)
実際に血を抜いて検査する。一部、
血液検査
でないものも含むが、それは注記を入れる。
肝機能
肝臓が作る
酵素
などの量をみて、
肝臓
の状態を調べる。
総蛋白 (6.5〜8.3g/dl)
アルブミン (3.8〜5.2g/dl)
A/G比 (1.3〜2.0)
AST(GOT)
(10〜40IU/l)
ALT(GPT)
(5〜45IU/l)
γ-GTP
(12〜87IU/l)
ALP (110〜340IU/l)
LDH (107〜230IU/l)
総ビリルビン (0.2〜1.2mg/dl)
直接ビリルビン (0.0〜0.4mg/dl)
黄疸指数 (7以下)
Ch-E (229〜521IU/l)
LAP
(40〜75IU)
ZTT (2.0〜12.0U)
TTT (0〜5U)
直接ビリルビンと黄疸指数は、一般健康診断では行なわれない。
肝炎ウイルス
抗原
や
抗体
の量を計測し、肝炎ウイルスへの感染を調べる。
HBs抗原 ((-) 0.05IU/ml未満)
HBs抗体 ((-) 10.0mIU/ml未満)
HCV抗体 ((-) 1.0未満S/CO または 1.0未満COI)
HA抗体 ((-) 1.00未満S/CO)
一般健康診断では行なわれないが、HBとHCの計3種類は、短期人間ドックで実施することがある。
腎機能
血液中の成分をみて、
腎臓
の状態を調べる。腎臓の検査だが、これは尿からではなく血液から見る。
尿素窒素
(8.0〜20.0mg/dl)
クレアチニン
(0.61〜1.04mg/dl)
膵機能
血液中の成分をみて、
膵臓
の状態を調べる。
血清アミラーゼ
(33〜120IU/l)
尿アミラーゼ (600IU/l以下)
リパーゼ
(16〜60U/l)
一般健康診断では血清アミラーゼのみ調べる。
血清アミラーゼやリパーゼは膵炎発症時などに定期的に調べるが、尿アミラーゼは正確な値を出すことが難しいため、殆ど調べない。調べる場合、尿アミラーゼのみ尿検査で調べられる。これは、輸液などをした場合、尿が薄まってしまい本来の値が出ないからである。
電解質
血液中の成分をみる。
Na
(135〜147mEq/l)
K
(3.3〜5.0mEq/l)
Cl
(98〜108mEq/l)
Ca
(8.4〜10.2mg/dl)
P
(2.5〜4.5mg/dl)
Mg
(1.8〜2.5mg/dl)
一般健康診断や短期人間ドックではNa/K/Clのみ調べる。
糖尿病
血液と尿の成分をみる。尿糖は尿検査で、それ以外は
血液検査
である。
空腹時血糖 (70〜109mg/dl)
空腹時尿糖 (-)
糖負荷1h血糖 (80〜160mg/dl)
糖負荷1h尿糖 (-)
糖負荷2h血糖 (100〜139mg/dl)
糖負荷2h尿糖 (-)
HbA1c
(NGSP) (4.6〜5.9%)
HbA1 (5.5〜8.0%)
フルクトサミン (162〜243μmol/l)
一般健康診断や短期人間ドックでは空腹時血糖/尿糖と、
HbA1c
(NGSP)のみ調べる。それ以外は
糖尿病
の検査などをする際に行なう。なお、糖尿病かの診断は、血糖値とHbA1cを使う。尿検査での尿糖の値は糖尿病の判断基準ではない。
痛風
血液中の尿酸量を測る尿酸代謝検査。
尿酸
(3.6〜7.0mg/dl)
尿酸量は痛風だけでなく、
脳梗塞
などにも影響を及ぼす。
脂質
血液中の
コレステロール
や中性脂肪など脂質を測る脂質代謝検査。
総コレステロール (130〜220mg/dl)
HDLコレステロール (40〜80mg/dl)
LDLコレステロール (70〜139mg/dl)
中性脂肪 (40〜149mg/dl)
β-リポ蛋白 (150〜500mg/dl)
アポリポ蛋白AI (119〜155mg/dl)
アポリポ蛋白AII (25.9〜35.7mg/dl)
アポリポ蛋白B (73〜109mg/dl)
アポリポ蛋白CII (1.8〜4.6mg/dl)
アポリポ蛋白CIII (5.8〜10.0mg/dl)
アポリポ蛋白E (2.7〜4.3mg/dl)
過酸化脂質 (2〜6nmol/ml)
動脈硬化指数
一般健康診断や短期人間ドックでは総/HDL/LDLコレステロールと中性脂肪のみ調べる。
蛋白分画
血漿中に存在する蛋白質を調べる。血漿中蛋白の多くは、アルブミンと、α/β/γの各グロブリンであり、これを検査する。
アルブミン (60.5〜71.5%)
α
1
-Gl (1.8〜3.1%)
α
2
-Gl (6.0〜9.8%)
β-Gl (6.9〜10.7%)
γ-Gl
(10.0〜20.3%)
一般健康診断や短期人間ドックでは行なわない。
甲状腺機能
トリヨードサイロニン(T3) (0.8〜1.8ng/ml)
サイロキシン(T4) (4.8〜11.2μg/dl)
遊離トリヨードサイロニン(FT3) (2.1〜4.1pg/ml)
遊離サイロキシン(FT4) (1.0〜1.7ng/dl)
甲状腺刺激ホルモン(TSH) (0.34〜3.88μU/ml)
一般健康診断や短期人間ドックでは行なわない。
免疫検査
白血球数
(3900〜9800/μl)
血沈
(1h) (1〜7mm/h)
血沈(2h) (5〜30mm/h)
RF
(15IU/ml以下)
CRP
((-) 0.30mg/dl以下)
ASLO(定量) (159IU/ml以下)
RPR法 (-)
TPHA法 (-)
ガラス板法 (-)
一般健康診断では白血球数のみ測る。短期人間ドックでは血沈、RF、CRP、RPR法、TPHA法などが調べられる。
末梢血液
いわゆる
血液検査
である。
赤血球数
(430〜570万/μl)
血色素量
(13.5〜17.6g/dl)
ヘマトクリット値
(40.0〜52.0%)
MCV
(83〜102fl)
MCH
(28.0〜34.6pg)
MCHC
(31.6〜36.6%)
血小板数
(13.1〜36.2万/μl)
全血比重 (1.055〜1.064)
血清鉄 (55〜185μg/dl)
TIBC (250〜420μg/dl)
UIBC (150〜350μg/dl)
網状赤血球 (5〜19‰)
一般健康診断では、全血比重/TIBC/UIBC/網状赤血球の検査は行なわない。
腫瘍マーカー
AFP (10ng/ml以下)
CEA
(5.0ng/ml以下)
CA19-9
(37U/ml以下)
SCC (1.5ng/ml以下)
エラスターゼ-1 (300ng/dl以下)
TPA (70U/l以下)
PSA (4.0ng/ml以下)
γ-セミノプロテイン (4.0ng/ml以下)
CA-125 (35U/ml以下)
フェリチン
(275ng/ml以下)
BMG (2.2mg/l以下)
ACP (14.3IU/l以下)
シフラ21-1 (3.5ng/ml以下)
CA15-3 (27U/ml以下)
一般健康診断や短期人間ドックでは行なわない。
白血球分類
好中球
(43.0〜75.0%)
好酸球
(1.0〜6.0%)
好塩基球
(0〜2.0%)
リンパ球
(25.0〜45.0%)
単球
(2.0〜8.0%)
幼若球 (0%)
異型リンパ球 (0%)
一般健康診断では行なわない。短期人間ドックで、幼若球と異型リンパ球を除いて検査することがある。
ペプシノーゲン
胃検診で実施する。略して「ペプシ」だがコーラとは関係ない。
PG1 (70.1ng/ml以上)
PG2
PG1/PG2 (3.1以上)
一般健康診断や短期人間ドックでは行なわない。
検尿(尿検査)
出した
尿
を調べる
尿検査
である。
試験管
に採尿した朝一の尿を検査するのが理想的とされるが、
病院
で採尿する場合もある。学校検尿の場合、学校で採るのは無理があるので、家庭で朝一の尿を採って学校で回収するのが一般的。
尿定性
腎疾患や尿道の疾患などを調べる。
蛋白
(-)
潜血 (-)
ウロビリノーゲン (±)
pH
(5〜8)
比重
(1.002〜1.030)
ビリルビン
(-)
ケトン体 (-)
一般健康診断や短期人間ドックでは、ビリルビン/ケトン体の検査は行なわない。
なお、上記では比重1.002とあるが、実際には1.010が下限とされており、1.002と出れば通常は低比重尿と判定され腎疾患が疑われる。
尿沈渣
尿沈渣とは、尿を
顕微鏡
で観る検査である。
赤血球 (35/μl未満)
白血球 (22/μl未満)
上皮細胞 (20/μl未満)
円柱 (4/μl未満)
細菌 (330/μl未満)
トリコモナス (-)
結晶 (-)
粘糸 (-)
一般健康診断では行なわない。短期人間ドックでは実施されることがある。
検便(便検査)
出した
大便
を調べる検査である。
潜血(1回) (-)
潜血(2回) (-)
潜血(3回) (-)
虫卵(塗抹) (-)
虫卵(集卵) (-)
一般健康診断では行なわれないが、潜血の検査は人間ドックで実施することがある。
循環器(心臓機能)
血圧
は血圧計で測る。
心電図
は心電計で測る。
血圧
良く知られているが、血圧測定では二種類の血圧が測られる。
収縮期血圧(最高血圧)
拡張期血圧(最低血圧)
140/90mmHg以上が測定されると
高血圧
と診断される。最高血圧が100mmHgを下回ると
低血圧
である。
また最低血圧が高い、いわゆる「下が高い」状態は動脈硬化が疑われる。下だけ高い場合は高血圧の初期症状とされるが、通常は薬よりも、生活の改善が指導される。
心電図
不整脈
の有無を検査するもの。
脈拍数
(
心拍数
)
心電図
心電図検査
では、次のような異常が見いだされる。
洞性不整脈
洞性頻脈
洞性徐脈
異所性心房調律
脚ブロック
右脚ブロック
完全右脚ブロック
不完全右脚ブロック
左脚ブロック
完全左脚ブロック
不完全左脚ブロック
房室ブロック
第I度房室ブロック
第II度房室ブロック
I型(ウェンケバッハ型)
II型(モビッツII型)
第III度房室ブロック (高度房室ブロック)
期外収縮
心房性期外収縮(上室性期外収縮)
心室性期外収縮
心房細動
WPW症候群
PQ時間短縮(PR時間短縮)
高電位
低電位
非特異的ST、T波変化
T波平低
逆転T波
ST低下
ST上昇
左軸偏位
右軸偏位
ブルガダ型心電図
その多くは、正常時でも見られることがあり、単独では重篤な異常とは限らない。
CPK
心筋はじめ筋肉中の酵素を調べる。
CPK (45〜190U/L)
一般健康診断や短期人間ドックでは行なわない。
X線検査
一般健康診断で実施する検査は胸と腹部のレントゲン撮影で、年齢により(通常は35歳以上で)バリウム検査がある。
胸部X線検査
胸のレントゲン撮影である。
両側肺門リンパ節や肺、心臓などの炎症などを確認する。
上部消化管X線検査
いわゆる「バリウム」撮影である。炭酸と
硫酸バリウム
を飲まされた後、言われるままにグルグルとモルモットのように回されつつ放射線を浴びる残念な検査である。
食道
胃
十二指腸
腹部X線検査
「腹部単純X線写真」と呼ばれる、レントゲン撮影である。
近年は超音波検査やCTなどが普及したため、件数は減っているらしいが、検査の基本とされており今も重要視されている。
「バリウム」や「胃カメラ」などを実施する場合は実施しない。
大腸X線検査
大腸のX線検査である。
使う装置は胃のバリウム検査とおなじで、違うのはバリウムが口から入るか
肛門
から入るかである。
胃内視鏡検査
いわゆる「胃カメラ」である。
潰瘍やがんのほか、胃炎、あるいはピロリ菌感染などを調べることができる。
病院
により、全身麻酔するところと、局所麻酔で患者に映像をライブ中継(?)するところとがある。
一般健康診断では、バリウム検査(通常は35歳以上で)の代わりに実施できることがある。
腹部超音波
いわゆる「エコ−」。胆嚢、肝臓、腎臓、膵臓、脾臓などを見ることが多い。
一般健康診断では行なわない。短期人間ドックでは実施されることがある。
直腸診
直腸診とは、医師が手袋をして患者の
肛門
に指を挿入し、肛門や直腸下部をまさぐって病変がないかを探る検査である。
指が届く範囲であれば周辺の臓器、男性なら
前立腺
、女性なら
子宮
の腫瘍も分かる。
一般健康診断では行なわない。短期人間ドックでは実施されることがある。
婦人化検査
女性のみの検査。乳がん検診。
婦人科内診
子宮細胞診
乳房診
乳触診
乳エコー
マンモ(マンモグラフィー)
その他
一般健康診断では行なわない検査。
骨密度
喀痰
ピロリ菌
((-) 10U/ml未満)
骨密度は、特に高齢女性の人間ドックで検査される。
ピロリ菌は、胃カメラを飲む場合などに検査される。
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