読み:りん
外語:P: Phosphorus

 ヒトの必須主要元素の一つとなる元素
 「燐」の字が常用漢字から漏れたため、現在は「リン」とも書く。化合物の日本語名は日本化学会の化合物命名法委員会によるものが正式だが、そこでは前述の理由により「リン」となっている。
目次

情報

基本情報

一般情報

原子情報

物理特性

同位体
 質量数は、24から47までが確認されている。安定同位体は一つのみ。
同位体核種天然存在比半減期崩壊崩壊後生成物
24P 陽子放射23Si
25P 陽子放射24Si
26P β+崩壊26Si
27P β+崩壊27Si
28P β+崩壊28Si
29P β+崩壊29Si
30P2.498分β+崩壊30Si
EC崩壊30Si
31P100.00%安定核種(中性子数16)
32P14.262日β崩壊32S
33P25.34日β崩壊33S
34P β崩壊34S
35P β崩壊35S
36P β崩壊36S
37P β崩壊37S
38P β崩壊38S
39P β崩壊39S
40P β崩壊40S
41P β崩壊41S
42P β崩壊42S
43P β崩壊43S
44P β崩壊44S
45P β崩壊45S
46P β崩壊46S
47P   
 安定核種に対し、質量数が大きすぎるまたは小さすぎる場合は複雑な崩壊となり、質量数が小さいと陽子放射、大きいと中性子放射が同時に起こることがある。

性質

機能
 生物に必須となる元素である。DNAなどの核酸は燐酸を含む化合物であり、その生成には燐を欠くことができない。
 また、エネルギーの生成や貯蔵にも燐酸の反応が使われており(AMPADPATP)、非常に重要である。
 植物にとっても重要な元素であり、農業用肥料などにも含有されている。

摂取と排泄
 ヒトの場合は、食品から摂取され、そのうちの一部が腸で吸収される。また、摂取された量と同程度が尿として排泄される。
 なお、腎臓病などで燐の排泄能が低下すると高リン血症を発症し、関節や臓器へ石灰の沈着、動脈硬化などを引き起こすため心筋梗塞や狭心症を招く。さらに、副甲状腺ホルモンの分泌が過剰となり骨からカルシウムや燐が流出して骨病変が生じる。

同素体
 単体には白燐、紫燐、黒燐などの同素体が存在する。
 このほか、混合物などとして黄燐、赤燐、紅燐などがある。

白燐・黄燐

基本情報
 白燐は、正四面体構造。
 発火点が低く、空気中で自然発火するため、水中で保管する。
 白燐は有毒だが、他は殆どの同素体は無毒である。
 「黄燐」は、白燐を赤燐の膜で覆ったもの。燐鉱石として得た時点では、不純物が混じり黄燐の状態となっている。

白燐・黄燐の性質
 黄燐は黄白色半透明で蝋状の柔らかい固体であり、非水溶性。
 猛毒(医薬用外毒物 危険物第三類)であり、殺鼠剤(さっそざい)に使用される。
 人間の場合は0.11gで死ぬが、皮膚に付着するだけでも火傷や骨の壊疽を起こすので、決して直接触れてはならない。蒸気は喉や鼻の粘膜を腐食する。
 自然発火して燃焼すると五酸化燐P4O10となるが、発火せずとも空気中で徐々に酸化されて十酸化四燐(P4+5O2→P4O10)を生じる。この際のエネルギーは熱ではなく光として放出される。これを燐光という。

赤燐

基本情報
 紫燐を主成分とし、黄燐を混合したもの。
 赤燐の微細粉末が紅燐である。

赤燐の性質
 赤燐は暗赤色の粉末であり、非水溶性。
 無毒だが、危険物(危険物第二類)である。
 黄燐と違って反応性が弱く、空気中では発火しない。マッチの先や花火の火薬として使われている。

安全性

危険性

有害性

環境影響

発見
 1669(寛文9)年にドイツの錬金術師ヘニッヒ・ブラント(Hennig Brand)が発見したとされている。一説では、人尿より金を作ろうとして尿を沸騰させた中より発見したとされている。
 化学名Phosphorusは、黄燐が発光するため、ギリシャ語で「光を運ぶもの」を意味するφωσφο'ροσ(pho^spho'ros)から付けられた。

主な化合物
 生体内では様々な燐酸化合物が使われており、様々な機能を持っている。
 DNAは、塩基が核酸によって結合された大分子である。人体においては体重の約1%が燐酸である。
 また、農薬や化学兵器として有機燐化合物が広く使われている。

薬品類
 生体内物質等や医薬品でよく知られるもの。

有機燐系殺虫剤等
 よく使われている農薬類。
 多くは、神経伝達に関する酵素アセチルコリンエステラーゼを阻害し、体中に過剰のアセチルコリンを蓄積させ毒性をもたらす。

前後の元素
 
 14 珪素 ‐ 15 ‐ 16 硫黄

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