沃素
読み:ようそ
外語:I: Iodium

 黒紫色の金属光沢を持った非金属元素の一つ。融点以下でも昇華し、紫色の蒸気を発する。
 「沃」の字が常用漢字から漏れたため、現在は「ヨウ素」とも書く。化合物の日本語名は日本化学会の化合物命名法委員会によるものが正式だが、そこでは前述の理由により「ヨウ素」となっている。
目次

情報

基本情報

一般情報

原子情報

物理特性

同位体
 質量数は、107から145までが確認されており、その中に核異性体も存在する。安定同位体は一つのみ。
 これ以外の同位体は、俗に放射性沃素と呼ばれる。
同位体核種天然存在比半減期崩壊崩壊後生成物
107I   
108I α崩壊104Sb
β+崩壊108Te
109I 中性子放射108I
α崩壊105Sb
110I β+崩壊110Te
α崩壊106Sb
111I β+崩壊111Te
α崩壊107Sb
112I β+崩壊112Te
113I β+崩壊113Te
114I β+崩壊114Te
115I β+崩壊115Te
116I β+崩壊116Te
117I β+崩壊117Te
118I β+崩壊118Te
119I β+崩壊119Te
120I β+崩壊120Te
120mI   
121I β+崩壊121Te
122I β+崩壊122Te
123I EC崩壊123Te
124I4.1760日EC崩壊124Te
β+崩壊124Te
125I59.408日EC崩壊125Te
126I13.11日EC崩壊126Te
β+崩壊126Te
β崩壊126Xe
127I100.00%安定核種(中性子数74)
128I β崩壊128Xe
β+崩壊128Te
129I1570万年β崩壊129Xe
130I β崩壊130Xe
131I8.0207日β崩壊131Xe
132I β崩壊132Xe
132mI   
133I β崩壊133Xe
134I β崩壊134Xe
135I β崩壊135Xe
136I β崩壊136Xe
137I β崩壊137Xe
138I β崩壊138Xe
139I β崩壊139Xe
140I β崩壊140Xe
141I β崩壊141Xe
142I β崩壊142Xe
143I β崩壊143Xe
144I β崩壊144Xe
145I β崩壊145Xe
 安定核種に対し、質量数が大きすぎるまたは小さすぎる場合は複雑な崩壊となり、質量数が小さいと陽子放射、大きいと中性子放射が同時に起こることがある。

特徴

生産
 日本の沃素産出量はチリに次いで世界第二位で、沃素全世界需要量の約40%を千葉県で生産している。

必須元素
 人体では甲状腺ホルモンの構成成分で、不足するとホルモンを作れなくなる。成人男女の栄養所要量は130μg程度、許容上限摂取量は3mgである。
 海草や魚介類から容易に摂取可能で、日本のように海産物の豊富な島国で沃素が欠乏することはない。しかし内陸国では海産物が不足しがちで、慢性的な沃素不足が起こっている。
 日本の場合、食品に多く沃素が含まれる(推定、一日摂取量は500〜3000μg)ので、不足する心配は不要である。昆布や若布、海苔など海草類に多いほか、など魚介類にも多く含まれ、国産の大豆や小豆などの豆類、などにも、多くは無いが100g中に30〜80μg程度含まれている。
 逆に日本人の場合は過剰摂取が問題であり、これは甲状腺に良くない。沃素が過剰になると、甲状腺機能低下症、甲状腺腫、甲状腺中毒症などを起こす。

放射性沃素
 沃素にも豊富な種類の同位体があるが、安定核種は127I(沃素127)のみで、他は放射性同位体である。
 この放射性同位体である沃素を「放射性沃素」という。
 原子力の事故などでは、このうち131I(沃素131)が漏出することが多い。

安全性

適用法令

危険性

有害性

環境影響

発見
 1811(文化8)年、フランスの科学者ベルナール・クールトア(Bernard Courtois)によって発見された。
 化学名Iodiumは、ギリシャ語で「すみれ色」を意味するιω'δησ(io^'de^s)から付けられた。

主な化合物

前後の元素
 
 52 テルル ‐ 53 沃素 ‐ 54 キセノン

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