ニュートリノ
読み:ニュートリノ
外語:neutrino
レプトン
族の
素粒子
の一つ。
電荷
を持たず、
質量
はゼロに近い。中性微子。
目次
概要
名称
種類
特徴
性質
中性子→陽子
生成
地球大気中
核融合反応
地球を貫通するニュートリノ
質量
概要
名称
ニュートリノは、日本語では「中性微子」ともいう。
ニュートリノという名前は「ニュー/トリノ」すなわち「新しい卜リノ」だと勘違いされやすいが、間違いである。
正しくは「リ」の途中で「ニュートr/iノ」と区切り、「ニュートr」はニュートラル(中性)を意味し、「iノ」(ino=イノ)はイタリア語で「小さい」を意味する接尾辞であるため、つまり「電気的に中性であり、非常に小さいもの」を意味する。これを日本語に訳せば「中性微子」ということになるのである。
種類
地球
大気
中で作られるものや、
太陽
などの
恒星
の
核融合
反応、
原子
の
β崩壊
で作られるものなどがある。
ニュートリノは、次のような3種類のフレーバー(香り)を持つ。
電子ニュートリノ
(ν
e
) (質量は5.1eV未満)
ミューニュートリノ
(ν
μ
) (質量は0.27MeV未満)
タウニュートリノ
(ν
τ
) (質量は31MeV未満)
またそれぞれに
反粒子
として
反ニュートリノ
があるため、反ニュートリノも3種類のフレーバー(香り)を持つ。
反電子ニュートリノ ( ̄(ν)
e
)
反ミューニュートリノ ( ̄(ν)
μ
)
反タウニュートリノ
( ̄(ν)
τ
)
加えて、スピンにより「右巻き」と「左巻き」がある。全てのニュートリノは左巻きで、全ての反ニュートリノは右巻きだが、おのおので逆方向に回転するものも仮定されており、それらは
ステライルニュートリノ
と呼ばれている。
特徴
性質
ニュートリノは
電荷
を持たず、非常に小さく、非常に軽く、何でもすり抜ける性質を持つ。
質量があるため
光速
ではないが、その質量は非常に小さいことから、限りなく光速に近い速度である。
弱い相互作用
と、
重力相互作用
(万有引力)のみに作用する。このため、検出が難しい。
全てのニュートリノは粒子の進行方向に対して左方向に回転する「左巻き」である。
中性子→陽子
クォーク
で構成される粒子を
ハドロン
といい、クォーク3個で構成される粒子のうち、uud(2個の
アップクォーク
と1個の
ダウンクォーク
)で構成されるものを
陽子
、udd(1個の
アップクォーク
と2個の
ダウンクォーク
)で構成されるものを
中性子
という。
ニュートリノが中性子(udd)の至近を通過する際、
弱い相互作用
により中性子は崩壊し、陽子(uud)へと変化する。これは、ニュートリノによって
原子番号
が一つ増えることを意味する。
何でもすり抜けるニュートリノだが、この弱い相互作用の反応によりかろうじて検出することができる。
生成
地球大気中
宇宙線
が地球大気の
酸素
や
窒素
と衝突すると
π中間子
を生成する。
π中間子は
μ粒子
とミューニュートリノに崩壊し、μ粒子は更に電子と電子ニュートリノとミューニュートリノに崩壊する。
このように大気中で生成されるニュートリノは大気ニュートリノと呼ばれている。大気ニュートリノは毎秒10個以上、μ粒子も毎秒1個以上は人体を貫通していると言われている。
核融合反応
太陽
などの
恒星
は
水素
の核融合反応で燃えているが、その核融合反応の際に電子ニュートリノが生成され、これは太陽ニュートリノと呼ばれている。
太陽から四方八方に放出されるが、その内の一部が地球を貫通しており、人体を毎秒数百億個から十兆個以上貫通していると言われている。但し、体の何かに衝突するのは一生に一回あるかないかの確率である。
地球を貫通するニュートリノ
ニュートリノは非常に小さい。ニュートリノを仮に米粒の大きさとすると、
原子核
を構成する陽子は地球くらいの大きさに相当する、スケールの違いがある。
そのような微小な粒子ニュートリノは、太陽から膨大な量が放たれ、うち地球には1m
2
あたり毎秒600兆個も到来している。太陽は非常に攻撃的であるとも言えるが、殆どのニュートリノは何にも当たらず地球を通り抜ける。
人間からみれば、地球は岩石などでガッチリ固まった惑星であるが、ニュートリノの大きさからみれば、原子間はスカスカなのである。
また、
原子炉
などからもニュートリノは放出されている。原子炉で最も多く発生するのは、発電に使う
熱エネルギー
ではなく、ニュートリノである。しかしニュートリノは今のところ使いみちがないので、そのまま捨てている。
質量
当初、ニュートリノは質量が0と考えられていた。
光子
のように理論的に質量が0とするものはあるが、ニュートリノについては、そのような理論はない。従ってニュートリノには質量があってもなくても問題はないが、ニュートリノは
弱い相互作用
と
重力相互作用
しかしないため質量を観測する術がなかった。このために、質量は0だろうと仮定するのが一般論であった。ニュートリノの質量が0であることを前提とした標準理論も一部にはある。
しかし、1962(昭和37)年に坂田昌一、牧二郎、中川昌美が、ニュートリノの質量の存在と
ニュートリノ振動
を予測した。その後、岐阜県飛騨市神岡町にある東京大学宇宙線研究所のニュートリノ観測施設
スーパーカミオカンデ
による実験によって、0.1eV程度の極めて小さな質量があることを見出した。
まず、1998(平成10)年に戸塚洋二ら実験グループがニュートリノ振動を確認、2001(平成13)年に太陽から来る太陽ニュートリノでも同様の現象を確認、2004(平成16)年にはKEKからスーパーカミオカンデに向かってニュートリノを発射する実験「K2K」により、質量の存在をほぼ確実なものとした。
実際にニュートリノ振動でフレーバーが変化する現象は、2010(平成22)年にCERNや日本などによる国際共同研究OPERAが人工的に発生させたニュートリノ振動で確認された。この功績を評価され、2015(平成27)年に、東京大宇宙線研究所長の梶田隆章と、カナダのアーサー・マクドナルドが
ノーベル物理学賞
を受賞した。
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