ニュートリノ
読み:ニュートリノ
外語:neutrino

 レプトン族の素粒子の一つ。電荷を持たず、質量はゼロに近い。中性微子。
目次

概要

名称
 ニュートリノは、日本語では「中性微子」ともいう。
 ニュートリノという名前は「ニュー/トリノ」すなわち「新しい卜リノ」だと勘違いされやすいが、間違いである。
 正しくは「リ」の途中で「ニュートr/iノ」と区切り、「ニュートr」はニュートラル(中性)を意味し、「iノ」(ino=イノ)はイタリア語で「小さい」を意味する接尾辞であるため、つまり「電気的に中性であり、非常に小さいもの」を意味する。これを日本語に訳せば「中性微子」ということになるのである。

種類
 地球大気中で作られるものや、太陽などの恒星核融合反応、原子β崩壊で作られるものなどがある。
 ニュートリノは、次のような3種類のフレーバー(香り)を持つ。
 またそれぞれに反粒子として反ニュートリノがあるため、反ニュートリノも3種類のフレーバー(香り)を持つ。
 加えて、スピンにより「右巻き」と「左巻き」がある。全てのニュートリノは左巻きで、全ての反ニュートリノは右巻きだが、おのおので逆方向に回転するものも仮定されており、それらはステライルニュートリノと呼ばれている。

特徴

性質
 ニュートリノは電荷を持たず、非常に小さく、非常に軽く、何でもすり抜ける性質を持つ。
 質量があるため光速ではないが、その質量は非常に小さいことから、限りなく光速に近い速度である。
 弱い相互作用と、重力相互作用(万有引力)のみに作用する。このため、検出が難しい。
 全てのニュートリノは粒子の進行方向に対して左方向に回転する「左巻き」である。

中性子→陽子
 クォークで構成される粒子をハドロンといい、クォーク3個で構成される粒子のうち、uud(2個のアップクォークと1個のダウンクォーク)で構成されるものを陽子、udd(1個のアップクォークと2個のダウンクォーク)で構成されるものを中性子という。
 ニュートリノが中性子(udd)の至近を通過する際、弱い相互作用により中性子は崩壊し、陽子(uud)へと変化する。これは、ニュートリノによって原子番号が一つ増えることを意味する。
 何でもすり抜けるニュートリノだが、この弱い相互作用の反応によりかろうじて検出することができる。

生成

地球大気中
 宇宙線が地球大気の酸素窒素と衝突するとπ中間子を生成する。
 π中間子はμ粒子とミューニュートリノに崩壊し、μ粒子は更に電子と電子ニュートリノとミューニュートリノに崩壊する。
 このように大気中で生成されるニュートリノは大気ニュートリノと呼ばれている。大気ニュートリノは毎秒10個以上、μ粒子も毎秒1個以上は人体を貫通していると言われている。

核融合反応
 太陽などの恒星水素の核融合反応で燃えているが、その核融合反応の際に電子ニュートリノが生成され、これは太陽ニュートリノと呼ばれている。
 太陽から四方八方に放出されるが、その内の一部が地球を貫通しており、人体を毎秒数百億個から十兆個以上貫通していると言われている。但し、体の何かに衝突するのは一生に一回あるかないかの確率である。

地球を貫通するニュートリノ
 ニュートリノは非常に小さい。ニュートリノを仮に米粒の大きさとすると、原子核を構成する陽子は地球くらいの大きさに相当する、スケールの違いがある。
 そのような微小な粒子ニュートリノは、太陽から膨大な量が放たれ、うち地球には1m2あたり毎秒600兆個も到来している。太陽は非常に攻撃的であるとも言えるが、殆どのニュートリノは何にも当たらず地球を通り抜ける。
 人間からみれば、地球は岩石などでガッチリ固まった惑星であるが、ニュートリノの大きさからみれば、原子間はスカスカなのである。
 また、原子炉などからもニュートリノは放出されている。原子炉で最も多く発生するのは、発電に使う熱エネルギーではなく、ニュートリノである。しかしニュートリノは今のところ使いみちがないので、そのまま捨てている。

質量
 当初、ニュートリノは質量が0と考えられていた。
 光子のように理論的に質量が0とするものはあるが、ニュートリノについては、そのような理論はない。従ってニュートリノには質量があってもなくても問題はないが、ニュートリノは弱い相互作用重力相互作用しかしないため質量を観測する術がなかった。このために、質量は0だろうと仮定するのが一般論であった。ニュートリノの質量が0であることを前提とした標準理論も一部にはある。
 しかし、1962(昭和37)年に坂田昌一、牧二郎、中川昌美が、ニュートリノの質量の存在とニュートリノ振動を予測した。その後、岐阜県飛騨市神岡町にある東京大学宇宙線研究所のニュートリノ観測施設スーパーカミオカンデによる実験によって、0.1eV程度の極めて小さな質量があることを見出した。
 まず、1998(平成10)年に戸塚洋二ら実験グループがニュートリノ振動を確認、2001(平成13)年に太陽から来る太陽ニュートリノでも同様の現象を確認、2004(平成16)年にはKEKからスーパーカミオカンデに向かってニュートリノを発射する実験「K2K」により、質量の存在をほぼ確実なものとした。
 実際にニュートリノ振動でフレーバーが変化する現象は、2010(平成22)年にCERNや日本などによる国際共同研究OPERAが人工的に発生させたニュートリノ振動で確認された。この功績を評価され、2015(平成27)年に、東京大宇宙線研究所長の梶田隆章と、カナダのアーサー・マクドナルドがノーベル物理学賞を受賞した。

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