コドン
読み:こどん
外語:codon

 遺伝子を構成する単位。核酸の塩基配列は、生体内で3個一組(3ヌクレオチド単位)で認識されアミノ酸に対応付けられるため、この3個一組をコドンという一つの単位で扱う。
目次

概要
 3つの塩基(3ヌクレオチド)によって1つのコドンとなる。
 1コドンは4種の塩基が3個集ったものなので、理論上は4×4×4=43=64種類の組み合わせがある。
 この64種類を、ヒトの場合は使用する20種類のアミノ酸に対応付けることになるが、どのように対応させるかは生物によって相違がある。ヒトの場合は細胞内小器官であるミトコンドリアによってなされているが、ミトコンドリアは元々はリケッチアに近い好気性細菌だったとされている。これも、古細菌のコドン対応などと比較をすると若干の相違が見られるため、初期の生物と比して若干変異した対応が採用されていることになる。

特徴

遺伝暗号
 蛋白質を構成するアミノ酸は22種類が知られる。このうち真核生物は21種類を用い、うちヒトは20種類を用いる。
 このアミノ酸の繋がる順序を命令するのがRNADNAであり、これが設計図となる。
 ここに4種類の塩基が並んでおり、これが3個で一つの遺伝暗号を構成し、これが一種類のアミノ酸を指定する。3個が1ペアとなる遺伝暗号であるので、これを俗に「トリプレット暗号」などとも呼ぶ。

組み合わせ
 RNA(mRNA)の3文字からなる組み合わせを以下に示す。なお、DNAにおいては以下U(ウラシル)がT(チミン)に対応する。
 このうち、UAA・UAG・UGAは終止コドンである。またヒトの開始コドンはAUGのメチオニン(Met)であるが、AUAやGUGを用いる生物等もある。
 2文字目 
UCAG
1文字目UUUU PheUCU SerUAU TyrUGU CysU3文字目
UUC PheUCC SerUAC TyrUGC CysC
UUA LeuUCA SerUAA オーカーUGA オパールA
UUG LeuUCG SerUAG アンバーUGG TrpG
CCUU LeuCCU ProCAU HisCGU ArgU
CUC LeuCCC ProCAC HisCGC ArgC
CUA LeuCCA ProCAA GlnCGA ArgA
CUG LeuCCG ProCAG GlnCGG ArgG
AAUU IleACU ThrAAU AsnAGU SerU
AUC IleACC ThrAAC AsnAGC SerC
AUA IleACA ThrAAA LysAGA ArgA
AUG MetACG ThrAAG LysAGG ArgG
GGUU ValGCU AlaGAU AspGGU GlyU
GUC ValGCC AlaGAC AspGGC GlyC
GUA ValGCA AlaGAA GluGGA GlyA
GUG ValGCG AlaGAG GluGGG GlyG

フレームシフト突然変異
 3個1組なので、仮にmRNAの塩基配列がAAAUUUGGGだったとすると、正常に読めればAAA、UUU、GGGと読み取れ、それぞれリジンフェニルアラニングリシンとなる。
 ところが、途中のヌクレオチドが欠損するなどがあると、その分だけ「ずれ」てしまい、「読み枠」が乱されてしまう。仮に1個挿入があってずれたと仮定すると、…AA、AUU、UGG、G…となってしまい、対応するアミノ酸は全く異なるものになる。このような突然変異を、フレームシフト突然変異という。
 フレームシフト突然変異が生じると本来作られるべき蛋白質とは全く異なる蛋白質が作られることになる。またフレームシフト突然変異は終止コドンを生じる確率が高いため、いずれにせよこの突然変異では機能する蛋白質が作られない可能性が高い。その蛋白質が生存に必須である場合、この突然変異は致死的である。

補足

遺伝暗号の由来
 64通りある遺伝暗号は、どのように決まったのかについては、まだ良くわかっていない。
 奈良女子大学理学部の池原健二教授の仮説によると、最初はGxCという3文字で四種類のアミノ酸を表わすところから始まった、とされる。
 生物は当初、比較的単純な四種類のアミノ酸を使ったと考えられている。コドンのGxCの二文字目を変えることで、この四種類を表現できる。
 やがて生物は、より複雑な構造を持つアミノ酸を利用可能となった。この時、1文字目と3文字目はGかCとなり、都合16種類が表現可能となった。ここに、次の6種類のアミノ酸を新たに割り当てた。
 やがて生物は、更に複雑な構造を持つアミノ酸10種類をも利用可能となった。この時、1文字目と3文字目にUとAが利用可能となり、都合64種類が表現可能となった。ここに、次の10種類のアミノ酸を新たに割り当てた。

コドン偏位
 アミノ酸20に対してコドンは64種なので、必然的に一つのアミノ酸に対し複数のコドンが対応することがある。
 このような場合、その各組み合わせは決して平均化はされておらず、偏りがある。
 例えばヒトの終止コドンを見ると、次のようなばらつきが見られる。

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